運用期間が「長期化」する効果

 では、運用期間を長期化することにメリットが全くないのかというと、そのようなことでもない。投資は、資本を提供する行為だから、株式の場合なら、株式会社が利益を生むためには、十分な時間を与える必要がある。

 ただし、時間が経つほど、将来の不確実性は大きくなる。「長期投資で、リスクが縮む」というのは、完全な誤りだ。

 投資期間が長期化すると、リスクも大きくなるが、期待できるリターンも大きくなるので、投資期間の長短は、リスクとリターンの有利不利に対しておおむね中立だと理解するのが、金融論的には正しい答えだ。

 一定以上の期間(例えば「3年」)の場合に投資のリスクを取ることが魅力的なのだとすると、運用期間がそれ以上の長期(たとえば、「20年」とか「30年」とか)になっても、魅力(リスクに対するリターンの評価)はおおむね同じだ。

「長期投資だ」ということに、特別の魔法(意思決定的な有利さ)があるわけではない。

運用計画の想定期間は、誰でも同じでいい

 運用期間にある程度以上の長さがあれば、当面のポートフォリオを作るために想定する期間はおおむねみな同じで構わないということになる。

 小回りが利く個人のポートフォリオの場合、想定期間1〜3年で運用計画を作っていいだろうし、公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人。資産は2018年末時点で約159兆円)であっても、5年の期間があればポートフォリオをかなりの程度動かすことができる。状況の変化を考えると、運用計画に想定すべき「期間」は、長くても5年だろう。

 これを超える遠い将来について想像をたくましくして、今の時点で、想像上の遠い将来に合わせたポートフォリオを作ることは合理的ではない。

 仮に、運用期間が「1年」あれば、売買コストが十分吸収できると判断するとしよう。この場合、当面のポートフォリオは向こう1年の状況を想定して考えるといい。将来のポートフォリオは、将来の前提条件の変化を反映させて、将来作ればいい。既存のポートフォリオを調節する場合でも同じだ。

 GPIFのような巨大投資家は5年程度の期間を想定して当面のポートフォリオを作る必要があるかも知れないが、数百万円から数億円くらいのお金を運用する個人投資家の場合、金額に大小の差はあっても、1年単位くらいで運用計画を立てて問題はないだろう。

 誰にとっても、運用計画を考える場合の想定運用期間は同じでいいということは、運用方法そのものをシンプルに一般化できる可能性を現実化するように思える(筆者は、大いにやる気になっている)。