繰り返し利用でき、法定相続人以外にも使える暦年贈与

 暦年贈与を行う場合、財産を少額に分け、何年も続けることができれば、結果として節税効果が大きくなります。非課税となる基礎控除は、年間1人当たり110万円と少額です。しかし、この非課税枠は毎年繰り返し利用でき、孫など法定相続人以外の人にも使うことができます。

 それゆえ、贈与を受ける人とその回数を増やして、毎年少しずつ暦年贈与を続けていけば、相続財産を減らし、相続税負担を軽減することができます。

 相続税の税率よりも贈与税の税率が低いのであれば、暦年贈与を行うことで、全体の税負担が軽減されます。仮に贈与財産が110万円を超えて贈与税を支払う場合であったとしても、贈与税の税率が相続税の税率を下回っている限り、贈与税を支払ってでも生前に財産を減らしておくほうがよいということです。また、相続人ではない孫への贈与を行いますと、相続を一世代飛び越えることになり、相続税の課税を1回パスすることになるため、大きな節税効果を享受することができます(図表2)。

[図表2]孫への飛び越し贈与

出所:岸田康雄『相続生前対策パーフェクトガイド』中央経済社

 たとえば、8,000万円の資産を持っている人が、3人の子供と1人の孫に、1人当たり年間110万円の暦年贈与を10年間続けたとしましょう。

 110万円×4人×10年=4,400万円

 8,000万円−4,400万円=3,600万円

 当初持っていた財産の8,000万円から、贈与した4,400万円を差し引くと、残りは3,600万円です。ここまで相続財産を減らせば、基礎控除(配偶者と子供3人で5,400万円)を下回るため、相続税はゼロとなります。