1.他の企業にはない「中立性」で差別化できている

 アドビのマーケティングソリューションの特徴は「中立性」にあります。顧客分析などのサービスは例えばアルファベット(グーグル:GOOGL)なども実施していますが、グーグルの場合は自身が広告を掲載して収益を得る立場にあります。フェイスブック(FB)などのSNS企業にも同様のことが言えます。一方、アドビの場合、基本的に自身が広告収入を得る立場にはありません。その分、第三者の立場から幅広いデータを集めやすく、依頼する企業側からは分析に偏りが出にくい点で信頼を得やすい立場にあります。

 実際、このマーケティングソリューションの分野で、アドビは他のソフトウェア・クラウドサービス企業との提携を深めています。重複している領域が少ない分、大手IT企業とウィンウィンの関係を築きやすいとみられます。足元では、マイクロソフト傘下のリンクトインと提携した他、マイクロソフトの「Dynamics365」と連動しやすいようにデータの調整も進めています。これは、マーケティングソリューションサービスを強化しようとしている競合のセールスフォース・ドットコム(CRM)にとって脅威となるでしょう。また、アドビはアマゾン・ドット・コムとも新しいパートナーシップを結んだと発表しています。

2.マルチチャネル型のマーケティング需要が拡大する見通し

 アドビは2021年のエクスペリエンスクラウド分野の市場規模を712億ドル(日本で約8兆円)と予測しています。同社の同事業の売上高(サブスクリプションベース)は19億ドル(日本円で約2,100億円)(2018年11月期)であり、拡大のチャンスは豊富にあると言えます。特に、消費者が普段さまざまなデバイスを利用していることを背景に、今後はデバイス横断型のマーケティングサポートがさらに強いニーズになると考えられます。この分野では、アドビの他、SAS、SAP(SAP)オラクル(ORCL)IBM(IBM)、セールスフォース、マルケトなどがリーダー企業として競争を繰り広げています。このうちマルケトは、アドビが2018年に買収しました。