円を「逆さメガネ」で見て世界を楽しむ

 このように、日本人が円で株式や外貨資産へ投資すると、良いときと悪いときの落差が激しいサイクルに交互に見舞われてきました。しかし、円相場の変動は、理屈が明快な上、景気に対して遅れて動くものです。つまり、景気の変調をじっくり観察してから対応できるので、後出しじゃんけんのような、「濡れ手に粟」の投資ができたはずです。

 さて、図1をもう一度ご覧ください。いま、日本経済に陰りの兆しが出ています。私は、2018年後半を通して、株式もドル/円も相場の終盤を示す黄信号が点滅しているため、リスク投資のポジションを減らすべき局面だと、メディアなどで伝えてきました。

図1:日本の景気とドル/円のサイクル 

出所:日本銀行、Bloomberg Finance L.P.のデータから田中泰輔リサーチ作成

当コラムのこれからの狙い

 当コラムではしばらく「円の秘密」をシリーズとして考察していきます。アマノジャクな円の性質を前提とすれば、日本人に適した投資パズルの解法も、直感的、常識的ではないものになります。相場の動きに悩まない、流行の「長期+分散+積み立て」投資から、知的格闘を楽しむ一歩先のリスクの取り方もご紹介します。

 アマノジャクな円という「逆さメガネ」からは、主要な通貨の性質もスッキリ見通せるようになるでしょう。このコラムを通し、円相場を見る逆さメガネに慣れることで、世界の絶景、投資の異景をぜひ一緒に楽しんでいただきたいと願っています。

 次回は、円相場が景気に対してアマノジャクに振る舞う理由を解説します。円相場が日本の景気に見事に連動するというのに、日本の景気自体の分析が円相場の予測にとってさほど重要ではない、というミステリアスな事実もお伝えしたいと思います。