退職金・企業年金の見込み水準を把握する方法はあるのか

 まず、退職金制度は実施義務がないので「あなたの会社がやっているか、やっていないか」は会社で確認するしかありません。統計的には80%の会社に退職金制度があり、中堅企業から大企業になれば実施率90%以上になります。

 採用にあたっては退職金制度あり、とどこかに書かれていると思いますし、制度がある場合は、必ず規定が必要になり、社内で開示されることになっています。多くの場合、イントラネットにファイルが保存されているはずです。まずはこれを確認してみてください。

 退職金については退職金規程が、企業年金が設置されている場合は企業年金規約が設けられ、ファイリングされているはずです。しかしこの規定、計算式や自分の数字がわかりにくいのがほとんどです。

 ざっくりでもいいので、水準をチェックする代案はいくつかあります。

(1)モデル退職金額を調べる

 社内資料や労働組合の配付資料などに「モデル退職金額」が書かれていたら、これをひとつの目安とします。あくまでモデルなので、80~90%くらいのつもりで考えておいたほうがいいですが、検討の大きなヒントになります。

(2)「見える化」されている金額を確認する

 「ポイント制退職金」「キャッシュバランスプラン(確定給付企業年金の制度設計のひとつ)」「企業型の確定拠出年金」が採用されている場合、これらは「今の持ち分額が見える化」されている制度です。確定拠出年金は、自分のIDでログインすれば、昨日付の時価残高が確認できますし、それ以外の制度は年に一度程度、持ち分のポイント等が通知されます。ただし「今現在」なので、「今から定年まで」に獲得する金額は反映されていませんのでその分を割り増しして見込むことになります。

(3)人事部の友人かOBに聞いてみる

 社内に人事部の友人がいる場合、あるいはOBに話しやすい先輩がいた場合、直接質問してしまうという手もあります。人事部としては個人の金額は言えませんが、会社としてのモデル水準がどれくらいか目安を教えてくれることでしょう。OBの先輩は具体的な金額は教えてくれないでしょうが、百万円単位くらいでイメージを伝えてくれるはずです。

(4)直球で質問をしてみる

 退職金制度は労働条件のひとつなので、質問していけないことはありません。質問をしたら「あいつは辞めるつもりか」と勘ぐられそうで聞けないという人もいますが、そういうことはほとんどありません。特に確定給付企業年金の事務局がある場合は、相談窓口を設けていることが多く、また相談内容を会社に開示しないのが一般的です。堂々と、ズバリ質問してみてもいいでしょう。

 ちなみに退職金・企業年金の水準についてですが、企業ごとに千差万別というのが正直なところです。先ほどのフィデリティ退職・投資教育研究所の調査では、平均値を1,500万円としています。

 大企業や公務員の場合、2,000万円に達することも珍しくありませんが、中小、中堅企業の場合500~1,000万円ということもしばしばです。平均を気にするより、自分の会社のモデルを確認することを優先してください。