グループ内統合によるメリットを最大限生かす

 昨年2018年10月、同社は新たな一歩を踏み出した。グループ企業である三井住友信託銀行の運用部門を統合したのだ。これによって運用資産残高は65兆円となり、アジア最大級の運用会社となった。

 もっとも単に事業規模が拡大しただけではない。同社は個人投資家向け投資信託の運用をメインに手掛けてきたが、三井住友信託銀行の運用部門は公的年金や企業年金など機関投資家向けの運用を得意としていた。つまり、この統合によってより幅広い顧客の資産運用ニーズに応えられるようになったのだ。

 今も個人投資家向けファンドの企画やプロモーションを担当する大野さんはこう話す。

「今回受賞した『世界経済インデックスファンド』シリーズは3つのファンドからお選びいただくという今の形がベストだと考えています。ですから、今後も一般のお客さまには株式50%債券50%の標準型、多少のリスクを取ってでもある程度のリターンを狙いたいという方には『株式シフト型』、安定性に重きを置きたいという方には『債券シフト型』をおすすめしていきます。しかし、次なる商品展開を視野に入れると今回の統合は大きな意味を持ちます。なぜなら個人投資家向け商品の企画開発に年金運用ビジネスなどで培ったノウハウを生かすことができるからです。今後はお客さまのニーズを見据えつつ、まったく新しい商品の開発に取り組んでいきたいと思います」

 一方、前出・松尾さんは金融リテラシー推進室長という立場でもあるだけに日本人の投資に対する意識を高めていきたいと話す。

「今回の統合によって当社はアジア最大規模の運用会社になりましたが、それでも世界全体で見たらトップ20にすら入りません。欧米には当社の10倍規模の運用会社もあります。個人のお客さまから見ると、日本では今も預金への信頼が根強く、投資信託で資産を増やすという考えの浸透がいまだ十分ではないとも言えます。最近は、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)やつみたてNISA、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)の登場などもあり、少しずつ投資への関心が高まっているのは事実です。しかし、今も投資信託などを通じた資産運用の経験がないお客さまが多い、という現実を踏まえると、われわれ自身、まだまだお客さまのご期待に応える投資信託をご提供できていない、また、その魅力などをお伝えできていない、ということでもあり、私たち運用会社もそんな状況を変えるために果たすべき役割はまだまだあると考えています」

 これから5年後、10年後、投資と資産形成に対する日本人の意識はどうなっているのだろうか。同社の情熱とノウハウは、新しい日本の景色を見せてくれるに違いない。

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