楽天証券のお客さま約2万8,000人の投票で投資信託(ファンド)を選ぶ中立性と実用性の高い「第4回・楽天証券ファンドアワード」。このアワードの最優秀ファンドをクローズアップする「プロジェクトF~ファンドの挑戦者たち」シリーズをお届けします。

第4回楽天証券ファンドアワード最優秀賞

バランス(固定配分)部門最優秀賞:世界経済インデックスファンド(株式シフト型)

 バランス(固定配分)部門の最優秀賞に輝いたファンドは「世界経済インデックスファンド(株式シフト型)」(三井住友トラスト・アセットマネジメント)です。

 この授与を記念し、同社代表取締役会長の平木秀樹氏と、楽天証券代表取締役社長・楠雄治の特別対談のもようをお伝えします。

 そして、人気ファンドを生み出すため、苦闘を繰り広げてきた同社社員の熱い想いにも迫ります。

三井住友トラスト・アセットマネジメント代表取締役会長・平木秀樹氏✖楽天証券代表取締役社長・楠が対談 

三井住友トラスト・アセットマネジメントの平木秀樹会長(右)にトロフィーを授与

 バランス(固定配分)部門の最優秀ファンドに「世界経済インデックスファンド(株式シフト型)」が選出されました。

平木会長 ありがとうございます。これは正に、世界経済の成長の果実をストレートに受けられるファンドです。お客さまの支持によって選ばれたことは大変光栄です。御社では投資信託積み立てで資産形成されるお客さまは増えていらっしゃいますか。

 市況に左右されず、少額でも着実に積み立てされるお客さまが増えています。また、グループの楽天ポイントを使って投資信託から投資をスタートされる方も多くなっています。

平木会長 なるほど。ポイントで資産運用ですね。

 はい。クレジットカード払いで投資信託買い付けをして、その買付額によってポイントバックもしています。御社は早くからネットチャネルを活用されていますね。

平木会長 はい。全体としては、米国の取り組みを意識して多用な施策を展開していま

「人生100年時代にふさわしい商品をさらにラインアップしていきたい」と話す平木会長
 

す。日本では販売額から見るとまだまだ対面販売が大勢ですが、米国ではネット販売はもちろん、アプリから資産形成、ロボアドバイザーなど、さまざまな手段が活用されている状況から、日本でも起こりうることを見据えて対応策を考えていますね。

 日本より米国の個人投資家が多く、投資家層の裾野が広いことも、環境の充実につながっているかもしれませんね。

平木会長 人生100年時代という言葉が一般的になっていますが、例えば80代の方が生活のため資産を崩しながらも、一方で投資を続けていく、そんな時代が一般的になることを見据えて、当社では「使いながら増やす」ことができるファンドもラインアップしています。

 リターンはそれほどなくても、安心して息の長い資産運用ができるようになれば、日本人の投資感覚もよりよい方向に変わっていくことになりそうですね。

≫≫ 世界経済インデックスファンド(株式シフト型)

プロジェクトF・ファンドの挑戦者

 続いて、バランス(固定配分)部門の最優秀賞受賞ファンド「世界経済インデックスファンド(株式シフト型)」の誕生に関わった、執行役員投信営業第2部長の大野宏央さんと、営業企画部長兼金融リテラシー推進室長の松尾聡さんに独占インタビューしました。

発明級!GDPシェアを反映したバランス・ファンド誕生

発明級のバランス・ファンドはどうやって生み出されたのか

「投資信託は一般の商品と違い、しっかりと投資信託の魅力、内容をご理解いただいて、販売が伸びていく、ということになります。このファンドも、GDP(国内総生産)で資産構成を変化させる新しい考え方であったため、発売当初は苦戦を強いられましたが、本日、こういう賞をいただくと、残高のみならず投資信託の魅力を正にご理解いただけている証しとも言え、とても励みになります」

 株式や債券、REIT(リート:不動産投資信託)など値動きの異なる資産を組み合わせて運用するバランスファンド。その「固定配分部門」の最優秀ファンド賞を受賞した「世界経済インデックスファンド(株式シフト型)」のプロモーションを担当する、執行役員投信営業第2部長の大野宏央さんはこう話す。

 同シリーズの設定は2009年1月。最初にまず株式と債券を50%ずつ配分したタイプを発売し、その4年後、顧客からの要望に応え、満を持して、株式75%債券25%の「株式シフト型」と、株式25%債券75%の「債券シフト型」を追加したが、2009年に発売した当初は、思うように販売額が伸びなかったという。

 投資信託に慣れた人なら、同社のインデックスファンドというと「SMTインデックスシリーズ」を思い浮かべる人が多いかもしれない。日本初の個人投資家向けインデックスファンドシリーズとして2008年1月に立ち上げて以降、世界中の資産に投資するさまざまなファンドをリリース。2014年には純資産残高1,000億円を突破。さらにラインアップを増やし、現在の同シリーズは34本、純資産残高2,400億円という規模にまで成長を遂げるこの人気シリーズがありながら「世界経済インデックスファンド」を立ち上げた背景を大野さんはこう話す。

「その頃はまだ『SMTインデックスシリーズ』にバランスファンドは用意されていませんでした。そんな中で新たにバランスファンドを立ち上げることになったのですが、単純に4つの資産を均等に組み合わせるなど既存と同じタイプの商品では訴求力に欠けるだろうという思いがありました。そこで社内で議論を重ねた結果、世界の地域別GDPシェアを基に資産を配分するというコンセプトにたどり着きました。これは当時のバランスファンドでは画期的なものでしたから、主に積み立てでのご投資を想定した『SMTインデックスシリーズ』としてでなく、広くご投資いただける投資信託として、全く新しい商品としてリリースすることにしたのです」

執行役員投信営業第2部長の大野宏央さん

各地域のGDPシェアの変化に応じて投資比率を調整

「世界の地域別GDPシェアをもとに資産を配分するバランスファンド」とはどのようなものなのか。営業企画部長兼金融リテラシー推進室長の松尾聡さんはこう説明する。

「このファンドは株式と債券に投資するものですが、どちらも日本、先進国、新興国の3つの地域に振り分けています。分かりやすく言えば日本株式、先進国株式、新興国株式、日本債券、先進国債券、新興国債券の6資産に分散投資するということです。で、肝心なのはその投資比率で、世界経済に占める各地域のGDPシェアの変化に応じて、地域別構成比の見直しを行います。つまり、日本のGDPシェアが増えたら日本株と日本債券、新興国のGDPシェアが増えたら新興国株と新興国債券の比率が高まる仕組みになっているわけです」

 この商品が「世界経済インデックスファンド」と名付けられたのも、その商品特性に由来する。

「世界経済は一時的に落ち込むことはあっても、中長期的に見れば成長を続けてきたし、今後も成長し続けると考えられています。資産運用とは世界経済の成長の果実を手にするものと言え、このファンドはこれをストレートに享受しようというものです。日本株ファンドや海外債券ファンドなどいろいろ購入しなくても、これ1本で世界の経済発展の恩恵を受けられるわけです。しかも、日本、先進国、新興国それぞれの成長度合いに応じて投資比率が調整されますから、世界経済の実情に即したリターンが得られます」

 経済成長の伸びしろが大きい新興国に投資して大きなリターンを狙いたいが、新興国特有の政治リスクなどを考えると踏ん切りがつかない──。こういう人にもぴったりのファンドだと松尾さんはいう。

「政治情勢が不安定になったりして新興国のGDP比率が下がったら、当然、新興国へと投資比率が下がります。ですから、ある程度リスクを回避しながら高いリターンを狙えるというよさがあります」

 こうした既存のバランスファンドにはない特徴があったため、そのよさを伝えられれば多くの人に受け入れられるという自信があった。が、前述したようにリリース直後の顧客の反応はあまりかんばしいものではなかった。

営業企画部長兼金融リテラシー推進室長の松尾聡さん

世の中のニーズにマッチ!人気ファンドの仲間の入りを果たす

「1つにはタイミングの問題もあったと思います」

 前出・大野さんはこう振り返る。

「ちょうどリーマン・ショックの直後で、人々が投資に対して慎重になっている時期でした。バランスファンドは個別株に比べたら手に取りやすい商品ではありますが、それでも厳しかった」

 認知度が低いなら大量に広告を打つところだが、投資信託の場合、実はそれが難しい。一般に投資信託は販売会社様を通じて販売を行うため、広告そのものが販売に直決しないこともあり、販売会社の商品への理解と顧客の理解の両方があって、投資につながることから、単純に広告では伝えきれない側面がある。

 投資環境の悪化が続いていた3~4年の後、変化が生じる。

 顧客から好意的な声が聞かれるようになり、ジワジワと販売額が伸びてきたのだ。また、顧客からの要望で「株式シフト型」と「債券シフト型」を加えた頃から、販売額のペースは一気に上がる。瞬く間に人気ファンドの仲間入りを果たした。

 現在、いちばん最初にリリースされた株式50%債券50%タイプの純資産残高は580億円。これは同社のインデックスファンドの中では「SMTインデックスシリーズ」の一番の売れ筋である「SMT グローバル株式インデックス・オープン」(純資産総額660億円)に次ぐ規模だ。

 しかし、当初苦戦していたにもかかわらず、なぜ人気ファンドへと成長を遂げたのか。大野さんは「世の中のニーズにマッチしたのだと思います」と話す。

「ここ数年、若い世代を中心に投資に対する関心が急速に高まりつつあります。とりわけ長期投資、積立投資といった言葉が盛んに取り沙汰されるようになりました。つまり、若い頃からコツコツと積み立てを続けて資産を形成するという動きが広まってきたのです。そうした人たちは長期投資にふさわしい商品を求めていたわけで、このファンドがニーズにピッタリはまったのだと思います」

 通常、バランスファンドはファンドマネージャーが日本株に70%、外国株に30%などと配分を決めるが、このファンドは前述したように各地域のGDPシェアに基づいて投資比率を決められる。つまり、人が決めるのでなく、世界経済の趨勢(すうせい)に合わせて決定されるので、この点が分かりやすくていいという声も多かったという。

 また、最初の数年間は1万1,000円から1万4,000円の間で推移していた基準価額も2013年頃から上昇気流に乗り、2015年には2万円を突破。これも顧客の購入意欲を後押しした。

 こうして人々の商品に対する認知度が高まる中、同社は販売チャネルの拡大にも着手する。結果、多くのネット証券が扱うようになり、一気に人気に火がついた。

グループ内統合によるメリットを最大限生かす

 昨年2018年10月、同社は新たな一歩を踏み出した。グループ企業である三井住友信託銀行の運用部門を統合したのだ。これによって運用資産残高は65兆円となり、アジア最大級の運用会社となった。

 もっとも単に事業規模が拡大しただけではない。同社は個人投資家向け投資信託の運用をメインに手掛けてきたが、三井住友信託銀行の運用部門は公的年金や企業年金など機関投資家向けの運用を得意としていた。つまり、この統合によってより幅広い顧客の資産運用ニーズに応えられるようになったのだ。

 今も個人投資家向けファンドの企画やプロモーションを担当する大野さんはこう話す。

「今回受賞した『世界経済インデックスファンド』シリーズは3つのファンドからお選びいただくという今の形がベストだと考えています。ですから、今後も一般のお客さまには株式50%債券50%の標準型、多少のリスクを取ってでもある程度のリターンを狙いたいという方には『株式シフト型』、安定性に重きを置きたいという方には『債券シフト型』をおすすめしていきます。しかし、次なる商品展開を視野に入れると今回の統合は大きな意味を持ちます。なぜなら個人投資家向け商品の企画開発に年金運用ビジネスなどで培ったノウハウを生かすことができるからです。今後はお客さまのニーズを見据えつつ、まったく新しい商品の開発に取り組んでいきたいと思います」

 一方、前出・松尾さんは金融リテラシー推進室長という立場でもあるだけに日本人の投資に対する意識を高めていきたいと話す。

「今回の統合によって当社はアジア最大規模の運用会社になりましたが、それでも世界全体で見たらトップ20にすら入りません。欧米には当社の10倍規模の運用会社もあります。個人のお客さまから見ると、日本では今も預金への信頼が根強く、投資信託で資産を増やすという考えの浸透がいまだ十分ではないとも言えます。最近は、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)やつみたてNISA、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)の登場などもあり、少しずつ投資への関心が高まっているのは事実です。しかし、今も投資信託などを通じた資産運用の経験がないお客さまが多い、という現実を踏まえると、われわれ自身、まだまだお客さまのご期待に応える投資信託をご提供できていない、また、その魅力などをお伝えできていない、ということでもあり、私たち運用会社もそんな状況を変えるために果たすべき役割はまだまだあると考えています」

 これから5年後、10年後、投資と資産形成に対する日本人の意識はどうなっているのだろうか。同社の情熱とノウハウは、新しい日本の景色を見せてくれるに違いない。

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