海外での原発建設から日本企業は事実上撤退、中国・ロシアが積極推進

 日立製作所(6501)が19日開催した株主総会では、英国で進めてきた原発建設事業の凍結について、株主からさまざまな質問が出ました。東原社長は、「当面は国内にある原発の再稼動や廃炉事業を進める」と回答しました。

 英国での原発事業は、リスクが高い割りに英国政府から十分なバックアップが得られる見込みがたたないことから、「経済合理性の実現が難しいため凍結の判断に至った」と説明されました。海外での原発事業から、事実上、撤退した状態が続きます。東芝が米国の原発建設事業で巨額の損失を出して一時債務超過に陥ったことが反面教師となり、日本企業は原発事業リスクを縮小する方向に舵を切っています。

 三菱重工も海外での原発事業は、縮小しつつあります。日本政府と共同で、トルコでの原発計画を進めてきましたが、安全対策にかかるコストが大幅に膨らむのに対応した請負金額の引き上げができないため、計画を断念する方針をトルコ政府に伝えています。

 原発建設には、長い年月がかかります。建設を請け負い、建設に着手してから完工する前に、安全対策コストがどんどん拡大して巨額の赤字を計上するリスクが大きくなっています。そのリスクを民間企業だけで負いきれなくなくなりつつあります。

 こうした環境で海外での原発建設を積極化できるのは、中国とロシアの原発企業だけとなっています。実際、日本企業が実質撤退した後、海外での原発建設は、中ロ企業の独壇場となっています。

 中国の政策助言機関である中国人民政治協商会議が19日に開催した会議では、「今後10年間に(中国企業が)海外30カ所に原子力発電所を建設することが可能」と、強気の意見が出ています。