J-REITには投資信託の影響が

 実は、この現象にはある程度の根拠があります。
 国内でJ-REITの取引シェアが高いといわれる投資信託。J-REITは利回りが高いこともあり、毎月分配型が多く設定されています。「毎月分配される額」と「それはいつ支払われるか」が気になるところです。
 まずは、「毎月分配される額」ですが、ファンドの検索サイトで「J-REIT」を検索したら、89銘柄出てきました。金額は約2.4兆円。ざっと利回りを4%とすると約1,000億円が年間配当額になります。1カ月だと約80億円。

 次に「それはいつ支払われるか」ですが、出てきた89銘柄を金額が大きい順に並べて、上位20ファンドに注目しました。これだけで2兆円を超えており、金額ベースで85%を占めます。その20ファンドの決算日がこちらです。

 なんと、全体の8割は12日から20日の「中旬」に集中しています。筆者の推測ですが、おそらく分配金を支払うために、ファンドマネージャーは、決算日の直前にある程度の「売り」を出すのだと思います。これが15日前後にJ-REITの「売り」が出るひとつの要因だと考えられます。

 ちなみに、参考ですが、J-REITではなく、日本で設定されているグローバルリートのうち、残高が500億円以上の14銘柄の分布は以下の通りです。

 もうひとつ、考えられる根拠があります。日本では「お化粧買い」と呼ばれるマーケット用語があります。これは「機関投資家が運用しているファンドなどの評価をよく見せるために、月末や決算期末に運用対象となっている株式などに買い注文を入れること」を意味します。月末は高くなりそうですよね。

 さらに付け加えると、サラリーマンの給料日って、25日が多いと思います。年金は15日ですね。ということは、月の後半に資金が入ってくるわけで、ファンドに個人の資金が流入するのは下旬が多くなりそうです。

…そうですね。「ファンドの決算日」はともかく、「お化粧買い」はJ-REITでなくて、普通株でも同じ条件です。最後に、日経平均で上記と同じような計算をした結果を参考データとして記載します。

日経平均株価指数 2003年3月末から2019年5月末まで、上旬と下旬の値動きの合計、年別

注:Bloombergデータより楽天証券作成

2003年3月から2019年5月まで、全194カ月分のデータ

「上昇」と「下落」を比較すると、「回数」はほぼ同じですが、「通算」は圧倒的に下旬がプラスとなりました。

 ただし、J-REITと違うところは、足元、2017年以降はそれまでよりもその傾向が弱くなっています。また、それ以前でも、2011年や2013年は上旬の方がかなり成績良好です。今年も今のところ、上旬の勝ちですね。J-REITほどの「下旬」パワーはないようです。