“ホルムズ海峡”は世界の原油輸出量のおよそ35%が通過するエネルギー流通の要衝

 昨日(2019年6月13日)午後、ホルムズ海峡付近で、日本関連の貨物船が何者かによる攻撃を受けました。夕方から、テレビやインターネットでは、船体が損傷し、炎が上がっている生々しい映像が繰り返し流れています。

 バーレーンに展開する米海軍第5艦隊が救難信号を受信し、救援活動を実施。攻撃を受けた2隻の船の乗組員は、近辺を航行中の別の船に救助されるなどして全員無事とのことでした。また、日本へのエネルギー供給については、世耕経産大臣はまったく問題は生じていない、としています。

 事件が起きたのはペルシャ湾とインド洋の間、世界屈指の「チョークポイント(choke point)」として名高い、「ホルムズ海峡」付近です。先月もサウジアラビア関連の船が魚雷で攻撃を受けるなど、付近を航行する船への妨害行為が起きています。

 以下の図のとおり、ホルムズ海峡は、世界の石油輸出量のおよそ35%がこの海峡を通過しています(筆者の推定/2017年時点)。

図1:ホルムズ海峡を通過して輸出される石油のシェア

出所:UNCTAD(国連貿易開発会議)データをもとに筆者推計

 チョークポイントとは、詰まる、狭くなるなどを意味する「チョーク(choke)」の言葉のとおり、地理的に川や海の幅が部分的に狭くなっている地点を指します。

 狭いうえ、陸や島の間を縫うような地形であることから、水深が比較的浅く、また、迂回にかかる日数や運行コストを削減できる利便性があることから、船やタンカーの往来が激しいという特徴があります。

 南北アメリカ大陸の先端を迂回せずに大西洋と太平洋を行き来できるパナマ運河、アフリカ大陸の南端を経由せずにインド洋と地中海を行き来できるスエズ運河などが代表例です。

 運河以外にも、ホルムズ海峡のように陸と陸、あるいは島と島の間で部分的に狭くなっている地点である海峡もチョークポイントといえます。

 マレー半島(マレーシア)とスマトラ島(インドネシア)の間に位置するマラッカ海峡や、インド洋側からのスエズ運河へ入る際の入り口にあたりアラビア半島の南西部に位置するバブ・エル・マンデブ海峡付近(ソマリア沖)などがその例です。

 これらのチョークポイントは,資源や食糧などの輸出入において大きなリスクになることがあります。

 ペルシャ湾周辺国でもホルムズ海峡を経由しない輸出経路を持つ国はいくつかあります。サウジは紅海側に、UAEはインド洋に面するオマーン湾側にそれぞれ輸出港があります。イラクも、北部の油田地帯で生産された石油の一部は、トルコを経由して地中海から輸出されています。必ずしも全輸出がホルムズ海峡を通るわけではありません。

 ただ、これらの事情を考慮したとしても、世界全体の3分の1強はホルムズ海峡を経由して輸出が行われていると推測されます。日本が輸入する原油の8割強がこの海峡を通過しているとの試算もあります。

 中東情勢の悪化懸念、世界的な需給ひっ迫懸念などにより、昨日昼(日本時間)に51ドル前後だったWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油価格は昨晩53ドルまで上昇しました。14日午前時点では52ドル近辺で推移しています。