アマゾンがフードデリバリーサービスから撤退

 アマゾン・ドット・コム(AMZN)は米国で展開していたフードデリバリーサービス「アマゾン・レストランツ」を6月24日に終了することを明らかにしました。同サービスは、ユーザーそれぞれの自宅の近所にあるレストランから料理を宅配するサービスで、アマゾンのサービス自体はやや苦戦していましたが、こうしたサービスは米国では非常によく使われているものです。

 同社の発表によると、サービス終了に伴う社員への影響は限定的とのことで、業績への大きな影響もないようですが、アマゾンは同サービスを積極的に推進していただけに、今回の撤退は正直驚きです。

 ただ、私も昨年まで米国に3年ほど住んでいた際、「アマゾン・レストランツ」を含め多くのフードデリバリーサービスを利用していましたので、「eコマースの王者であるアマゾン」が撤退したこと自体は驚きですが、一方で、確かに同サービスに参加しているレストランの数などは他社サービスと比べて明らかに劣っていましたので、実際の使い勝手から考えると、アマゾンの撤退も正直納得がいくところでもあります。

グラブハブの株価が急上昇!

 アマゾンが撤退したことで、フードデリバリーサービスを手がけるグラブハブ(GRUB)の株価は11日の現地市場で8%を超える急騰となりました。しかし、以下のグラフにある通り、そもそも「アマゾン・レストランツ」のシェアは微々たるものでした。

オンデマンド・フードプラットフォームの市場シェア(売上高ベース)、米国2019年2月時点

出所:Edison Trendsのデータを元に楽天証券作成

 

 現在米国のフードデリバリー市場はドアダッシュ(非上場)、グラブハブ(GRUB)、ウーバー・テクノロジーズ(UBER)が手がけるUber Eatsの三つ巴状態となっています。確かにアマゾンがこの市場を食い荒らすのではないかという懸念はなくなったものの、昨年までは頭一つ抜けていたグラブハブもシェアを落とし気味ですので、まだまだこの業界の王者はわからない状況です。現在の市場シェアは少ないものの、決済サービスを手がけるスクエア(SQ)傘下のキャビアなども、今後は市場シェアを拡大してくるかもしれません。

 ただ、米調査会社Statistaのレポートによると、米国のフードデリバリー市場は2018年から2023年にかけて、平均で毎年9.5%伸びる見込みとされています。つまり、この業界は「パイを奪い合う」状況にはまだなく、どちらかというとマーケット全体が成長する中で、参加者全てが恩恵を受ける状況であるとも言えそうです。