5月27日~31日 原油マーケットレビュー

 前週のNY原油相場は続落。米国発の貿易摩擦拡大により、世界経済成長が鈍化するとの懸念が広がり、投資心理の冷え込みから売り優勢の展開となった。米国の需給の緩みも相場の重石となった。WTI期近7月限は一時53.05ドルまで下落し、期近ベースとしては約3ヶ月半ぶりの安値を付けた。

 米中関係に収束の兆しは見られず、むしろ悪化の一途を辿っている。トランプ米大統領はディールを行う用意はないとし、これに対して中国も対抗措置を警告。中国紙によると、中国政府は米国への報復措置としてレアアース(希土類)を利用する用意があるという。その後、同大統領は中国との交渉がうまくいっていると言及したが、中国側は米国の行動はむき出しの経済テロと強く非難、相反する見解から足並みが揃っていないことが明らかとなった。週後半には、不法移民流入への対応が不十分であるとして、米国はメキシコに対して関税を課すことを表明した。メキシコ側からの報復措置の可能性が残る。米中貿易戦争は長期に及び、さらに米国とメキシコの関係悪化、それが経済成長鈍化を招いて景気後退につながるとの不安感が高まり、投資家のリスク回避姿勢が強まった。安全資産への資金シフトが起こり、リスク資産である株式市場や原油市場からは投機マネーが流出した。また、英EU離脱問題やイタリアの財政不安もあるため、ドルは安全通貨としてだけではなく対ユーロで買われ、これも原油相場の重石となった。

 需給面でも弱気に。米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間石油統計で、原油在庫は前の週から減少したことが明らかとなった。減少したものの、事前予想を下回ったため、市場は売りで反応した。また、ドライブシーズン入りに伴い需要増加が期待されるガソリンだが、需要は低調、在庫は予想外の増加となり、これも売り気を高める一因となった。定修一巡からリファイナリーの稼働は上昇、低位推移の輸入、一方で輸出は増加したにもかかわらず、米国の原油在庫はほとんど減っていない状況にあり、供給ダブつき感は否めない。需給改善への道のりは遠く険しい。

 これらを背景に市場のセンチメントは弱気に傾倒、売り先行から値を下げる展開となったが、テクニカル面や内部要因からの売りが下げ足を増長させたとみられる。メモリアルデーに伴う3連休明け、買い先行から上昇して始まったが、節目の60ドルを上抜けなかったことで、同水準が強固なレジスタンスとして意識された。追随買いが手控えられるなか、米中問題等を背景に売られると、市場のムードは急速にベアな状態へとシフトした。手仕舞い売りが促され、直近安値を下回るごとにロスカット絡みの売りを巻き込む展開に。売りが売りを呼び、53ドル水準まで値を崩すに至った。