クアルコム

 クアルコムは携帯電話に組み込まれるモデム・チップを作っている企業です。同社のパテントは携帯電話の根幹となる基礎技術であり、それを開発した同社は支配的な立場にあります。

 同社の売上高のうち76%は半導体、23%はライセンシング・フィーです。

 しかし、そのパテントを巡り主要顧客の一つであるアップルと係争が生じ、「最大顧客を敵に回してしまった」ことで同社は大きな不確実性を抱え込んでいました。

 そのアップルと先日、和解が成立しました。これにより今後アップルは5Gのハンドセット向けのモデム・チップでクアルコムの製品を独占的に使用すると発表しました。

 ありていに言えば、5Gより一つ前の世代の技術であるLTE(通信規格の一種)ではクアルコムだけではなく、インテルという第2のサプライヤーがモデム・チップをアップルに対して提供することができましたが、5Gに関する限り技術的な難易度が高過ぎてインテルはアップルが満足するような製品を完成できなかったというのが真相だと思います。

 図5は同社の1株当たり業績です。 

図5:クアルコムの1株当たり業績(9月末締め、年次報告書)

DPS:1株当たり配当
EPS:1株当たり利益
CFPS:1株当たり営業キャッシュフロー
SPS:1株当たり売上高

 なお2018年のEPSは税制改革法案成立で発生したいわゆる「トル・チャージ(the Toll Charge)」52億ドルの一時損を含んでいます。これは営業そのものには関係のない特殊事情なので、むしろCFPS(営業キャッシュフロー)の推移を見るべきだと思います。

 また同社の業績はかつて売上高の20%を占めていたアップルとの裁判沙汰で、業績の頭が押さえられていたという要因があります。5G向けモデム・チップでは同社が独占的にアップルと商売することができるようになるので、今後業績は上向くことが予想されます。