皇居から「半径5キロ圏内」が狙い目

 具体的に「複数のオフィス街を結ぶ路線」とは、東京の2大環状線「山手線」と「大江戸線」です。「大江戸線」は、「勝どき」「汐留(新橋)」「大門(浜松町)」「六本木」「新宿」など、日本でも有数のオフィス街を結んでいます。このように複数のオフィス街を結ぶ路線だと、「会社の最寄駅」という最初の判断基準をクリアしているため、検索に引っかかりやすくなります。そうすることで、自身の物件の閲覧数も増えていくのです。もちろん、「山手線」のニーズは説明の必要もないでしょう。「山手線」の東側をカバーする「京浜東北線」も検討できる路線の1つです。

 そして、「複数の路線が利用できる物件」も、入居者に検索されやすいポイントになります。例えば、日本橋大伝馬町にあるワンルームマンション。この物件の最寄駅は、日比谷線の「小伝馬町」ですが、徒歩10分以内で利用できる路線は、「銀座線」「半蔵門線」「都営浅草線」「都営新宿線」「総武線快速」「山手線」「京浜東北線」「中央線」など、9路線が利用できます。もし、この物件を所有していれば、9路線ものユーザーから閲覧される可能性があるのです。

 このように複数の路線が利用しやすい立地は、「千代田」「港」「中央」の都心3区と「渋谷」「新宿」「豊島」「文京」「台東」「荒川」「墨田」「江東」の各区で、皇居から半径5キロ圏内に入っていることが特徴になります。都心に通勤しやすい路線は、「山手線」「京浜東北線」に加え、東京メトロ各線と都営地下鉄「浅草線」「新宿線」「三田線」「大江戸線」です。鉄道インフラは、通勤や通学を基本に設計されているため、都心に通勤しやすい路線が開通し、都心周辺区の利便性が向上したのです。

 一般的に世界的なメガシティは、中心から半径5キロ圏内に「産学官」の中枢を集積させる街づくりを行っていることが多く、官庁のほとんどは千代田区に、上場企業の本社は「千代田区:219社」「港区:217社」「中央区:181社」「新宿区:82社」「渋谷区:78社」といったように、これらのエリアに収まっているのです。

 日本を代表する大学である東京大学は「文京区」にあり、日本の伝統ある大学の多くも「文京区」「千代田区」「新宿区」と、このエリアの中にあります。つまり、このエリアに通勤・通学しやすい物件を所有することで、入居者は確保しやすくなるでしょう。

[図表2]皇居を中心とした半径5キロ圏内に産学官の中枢は集中している