前期は、天災や天候不順・人件費上昇がマイナス

 前期(2019年2月期)は、天災や天候不順が業績にマイナスでした。2018年6~9月は、大阪北部地震・西日本豪雨のほか、数々の大型台風が来襲し、業績の足を引っ張りました。関西空港が水害で閉鎖になった影響もあり、インバウンド消費(訪日外国人観光客の買い物)にも悪影響が及びました。さらに、追い討ちをかけたのが暖冬です。10~11月が暖かった影響で、国内で衣料品販売が不振でした。

 ただし、天災や天候不順がこれだけ集中したのは、前期の特殊要因と言えます。今期も天災はあるかもしれませんが、前期ほどのマイナス影響はないと考えられます。

 より深刻なのは、構造的な悪化要因です。国内小売業全般に、人手不足による人件費上昇が足を引っ張っています。小売各社は、セルフレジの導入やオペレーション簡素化のためのシステム投資を増やしています。その投資コストも業績を圧迫しています。

 今期は、人手不足に加え、消費増税が新たな逆風となります。それをこなして、最高益を続けていけるのか、今後の進捗を見ていく必要があります。

 

なぜ、小売業は成長産業なのか?

 小売業は、かつて内需産業でした。今は、アジアを中心とした海外で成長する外需産業となってきています。最高益を更新しつつある小売大手には、以下のような特色があります。

【1】製造小売業として成長

 利益率の低いナショナルブランド品の販売を減らし、自社で開発したプライベート・ブランド品を増やすことで競争力を高め、売上・利益を拡大させてきました。自社ブランド品について、商品開発から生産・在庫管理までやることが多く「製造小売業」とも言われます。最高益を更新中の専門店(ニトリHD、セブン&アイHD)はこの取り組みが進んでいます。百貨店・家電量販店はこの取り組みが遅れています。

【2】海外で成長

 内需株であった小売業が、近年はアジアや欧米で売上を拡大し始めています。日本で強いビジネスモデルが、そのまま海外で通用するケースもあります。セブン&アイHD、イオン、良品計画などは海外での売上拡大が軌道に乗ってきました。8月決算でカジュアル衣料品「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング(9983)は、アジアで高い競争力を有し、中国での売上拡大が加速しています。

【3】ネット販売で成長

 ネット販売が本格成長期を迎えています。3月決算の小売業で、MonotaRO(3064)ZOZO(3092)などがネット小売成長企業の代表です。
大手スーパーや百貨店でも最近ネット販売を強化する努力を始めていますが、今のところコストに見合う利益を確保できていません。

 一方、しまむら(8227)のように、ネット販売への対応が遅れ、ネットに売り上げをとられて苦戦する企業も出てきています。

【4】インバウンド(訪日外国人観光客の買い物)需要を取り込んで成長

 訪日外国人観光客の数が、年々、伸びています。大丸・松坂屋が経営統合したJフロント・リテイリングや高島屋が、その恩恵を受けてきました。ところが、前期の後半は、インバウンド消費にブレーキがかかりました。天災による観光客の減少に加え、1月に始まった中国のEC規制強化が足を引っ張りました。