4月8日~12日 原油マーケットレビュー

 前週のNY原油相場は堅調。石油輸出国機構(OPEC)主導での協調減産により供給減少が懸念されるなか、リビアで軍事衝突が発生し、さらなる供給減少が懸念された。また、米国のガソリン在庫が減少し、ガソリン相場が上昇したことにも支援された。WTI期近5月限は一時64.79ドルまで上昇し、期近ベースとしては約5ヶ月ぶりの高値を付ける場面も見られた。

 リビア内戦危機が相場を押し上げた。民兵組織「リビア国民軍(LNA)」が国連の支持を受ける統一政府が支配する首都トリポリに迫った。LNAはトリポリへの空爆を実施、統一政府側も反攻を宣言し、衝突は拡大した。国連などが停戦を呼びかけるも戦闘は激化している模様で、本格的な内戦への警戒が強まっている。同国の産油量はわずかながらも回復基調にあったが、再び供給が落ち込み、そして停滞することが懸念された。この地政学的リスクの高まりを受け、前々週の高値を塗り替えた。

 主要産油国の生産減少も強材料視された。米エネルギー情報局(EIA)、OPEC、国際エネルギー機関(IEA)はこの週に相次いで月報を発表、そのなかで3月のOPEC産油量が減少したことが明らかとなった。サウジアラビアの減産の積極姿勢もあるが、政情不安、経済停滞、米国の制裁や停電の影響からベネズエラの産油量が大幅に落ち込んだことがその要因。すでに減少することは織り込んではいたが、改めて数値として明らかとなると、市場はこれを強材料視した。

 米国のガソリン在庫が大幅に減少したこともプラス要因。EIA発表の週間石油統計で、ガソリン在庫は予想を大幅に上回る取り崩しが確認された。ガソリン生産量は増えたが、輸出量が増え、需要が大きく増加したことが在庫減少につながった。需要が前年同期をやや上回るなか、在庫水準は前年同期を下回っており、ガソリン需給の引き締まりが警戒された格好。これを受けてRBOB相場が上昇、今後のガソリンシーズンに向けてリファイナリーの稼働が上がるとの期待もあり、原油相場も連れて上昇した。

 これら強材料もあったが、一方で弱気な見方も出始めている。ロイターが伝えたところによると、イランやベネズエラの供給減少がさらに強まり、原油価格が一段の上昇となるようであれば、OPECは協調減産の期限である6月末を境に増産に転じる可能性があるという。また、ロシアのエネルギー相は、6月のOPECとの会合において、在庫減少による市場均衡を背景に増産を望むとの見解を示している。同国のプーチン大統領も、原油価格の上昇に対して、現行水準で満足していると述べており、減産延長に否定的な見方が出始めている。