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2018年以降、万能細胞の一種である「iPS細胞」などを使った『再生医療』の取り組みが進み始め、従来治療が困難であった病気の根本的な治療へつながるとして期待が高まっています。ただし、『再生医療』が普及するには高品質で安価な細胞を量産する技術や生産体制などが不可欠になります。量産は企業の得意とするところであり、製薬企業に加えて異業種からの民間参入が相次いでいます。今後の動向が注目されます。
【ポイント1】『再生医療』の市場規模は2030年には5.2兆円になる見通し
『再生医療』に製薬企業や異業種からの参入が相次ぐ
『再生医療』とは、失われた細胞・組織・器官を再生し、機能を回復させる医療の総称です。経済産業省によると、世界での『再生医療』の周辺産業の市場規模は2030年には5.2兆円になる見通しです。『再生医療』の普及には、高品質で安価な細胞などを量産する技術と体制などが不可欠となります。
『再生医療』の今後の拡大を期待して、製薬企業に加えて、電気機器、精密、化学企業など異業種からの民間参入が相次いでいます。異業種からの参入の背景には、医療は承認などが必要な規制業種のため参入障壁が高く、安定的な収益が見込めることや、これまで培ってきた技術を応用できることなどがあります。
【ポイント2】日立製作所は自動培養装置の1号機を納入
ニプロは薬価基準への収載を発表
日立製作所は3月11日、厚生労働省が定める『再生医療』の品質管理基準に対応した「iPS細胞」の商用生産が可能な装置を国内で初めて製品化し、その1号機を大日本住友製薬に納入したと発表しました。また、同社は『再生医療』に必要な装置とサービスをグループで連携してトータルで提供する体制を整えます。
ニコンは細胞培養世界最大手と業務提携して細胞等の受託製造事業に、富士フィルムは細胞培養受託に、ソニーはブルーレイ技術を活用した細胞の選別機器に参入しています。また、ニプロは製造販売承認を取得していた脊髄損傷を対象とする再生医療等製品である「ステミラック」が薬価基準に収載されたと2月26日に発表しました。
【今後の展開】民間企業との連携により供給体制の構築が進むことが期待される
山中伸弥教授らが初めて作成した「iPS細胞」など日本は研究で世界をリードする一方で、産業化は遅れ気味でした。『再生医療』の普及には安全性やコストなど対処すべき課題が多くありますが、細胞の量産化は既存事業で培ってきた日本企業の高い技術力を活用できる分野です。『再生医療』に参入した民間企業と研究機関の連携により、安価で安定した供給体制の構築が進むことが期待されます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。