東京は8月に入ってから22日連続の雨となりました。8月としては1977年以来40年ぶりとのことです。1977年も22日連続の雨を記録し、どうやら今年はタイ記録となりそうです(8月22日現在)。

 長雨だった1977年の夏は覚えています。あまりプールや海に行かなかった記憶がありますが、当時、最長記録だとは知りませんでした。年間の連続雨では1954年6月19日~7月20日の32日間が最長だそうです。

 今年の8月の天候不順は、日照時間で見ても記録を更新するかもしれません。8月で日照時間が最も短かったのは、やはり1977年の85時間と48分だったそうですが、今年は8月17日までの日照時間は32時間48分と、その後も雨は一時的であったにせよ、くもり空が多かったことから記録を更新するかもしれません。

 さて今回は、この長雨や天候不順が、どう為替に影響してくるのかどうか考えてみたいと思います。

好調な日本の4-6月期GDP

 8月14日、日本の4-6月期GDP(国内総生産)が発表されました。民間調査機関12社の予測平均は実質年率で+2.6%でしたが、その予測を大きく上回る+4.0%。前四半期1-3月期の実質年率+1.5%を大きく上回る好結果となりました。

 プラス成長は2016年1-3月期以来6四半期連続であり、この6四半期連続のプラス成長は11年振り。また、+4.0%は2015年1-3月期(+4.8%)以来9四半期振りの高さとのことです。要するに好景気が1年半続いており、しかも1年半続くのは11年振り。直近の成長の大きさは2年3カ月振りということになります。

 この好調さは内需主導の成長のようです。輸出は4四半期振り(1年振り)にマイナスとなりました(-0.5%)。この結果、実質GDPの増減の寄与度をみると、内需が1.3%押し上げ、外需は0.3%押し下げたようです。 

為替ミニ知識(1)

 4-6月期GDPを牽引した内需の大きな要因は、個人消費と設備投資とのこと。特に個人消費が好調だったようです。

 下表はGDP増減の内訳です。消費は前期比+0.9%と前期1-3月期の+0.4%を大きく上回っています。4-6月期GDPの前期比は+1.0%ですが、GDPの6割を占める個人消費がGDPを大きく押し上げたようです。

 ここで注意しなければいけないのは、「年率」と「前期比」の使い分けです。きちんと注意しなければ、混乱します。

 また、「実質」と「名目」の使い分けもあります。

 名目は統計で積み上げられた生の数値であり、生活実感に近い数字です。

 実質はその数値に物価の影響を取り除いた数値です。

 下表では年率GDPだけ実質と名目の数字を表記しています。前期比も名目の数字は公表されていますが、ここでは表が複雑になるため実質前期比のみ表示しています。報道では実質の数値で報道されるのが一般的です。また、言葉の使い方では、前期比は実質を付けず、「実質年率」と「前期比」という言葉を使うのが一般的のようです。

為替ミニ知識(2)

 さて、好調な個人消費の背景は、新聞報道によると、(1)自動車や家電の買い替え需要が出たこと、(2)天候に恵まれて、外食などのサービス消費が伸びたことと分析されています。この好調な個人消費が今後も続くのかどうかが、この先の景気動向を見極めるポイントとなります。

 民間15社のエコノミストの予測によると、7-9月期の成長は前期の反動で鈍るが、底堅いとの見方が多いようです。一方で、買い替え需要は特殊要因であり、堅調な消費は一時的な現象との見方もあります。

 そして、そこに加えて(2)の要因である「天候に恵まれて」が懸念材料となりそうです。7月は猛暑が続いたため、清涼飲料やエアコン販売の好調が続くかもしれませんが、8月は一転、この長雨によって、清涼飲料の販売は伸びず、外食やレジャーの人出は振るわず、百貨店、スーパーなどの買い物にも影響が出る可能性もあります。コンビニは近いところで済まそうとの思惑から、逆に伸びるかもしれません。

 今後、7月や8月の百貨店やスーパー、レジャー施設の業績が発表されますが、これらのニュースには注目しておく必要があります。7月も、猛暑にもかかわらず消費が振るわなければ、さらに8月もだめだという連想が働き、株は下がり、金利も下がる要因となります。金利は低水準であるため、大きな変動は期待できませんが、ドル円にとっては円売り材料となりそうです。

 一方で、物価の動きにも注目しておく必要があります。

 長雨と日照時間の不足で、野菜類が高騰しています。確かに、スーパーなどに買い物に行くと白菜などは倍以上の値段となっていることに驚きます。ビール、するめいか、野菜などの価格が上がる話題が続いているため、物価は上昇してくるかもしれません。

 CPI(消費者物価指数)は、生鮮食品を除いた物価指数が一般的に注目されていますが、それらを含めた総合物価指数にも注目しておく必要がありそうです。

 マーケットも総合指数の大幅な上昇が出てくれば反応してくるかもしれません。その場合、長期金利が微妙に上昇に反応し、日銀の出口戦略への思惑が高まる可能性もあります。これは、ドル円にとっては円高要因となります。

世界の天気にも注目!

 8月下旬の天気は今週半ばあたりから再び夏らしくなるとの予報ですが、天気予報を見ながら、同時にマーケットへの影響を考える習慣をつけておくのは、中期の相場シナリオを考える上で役に立ちます。慣れてくれば、さらに地域を広げて、欧米の天気、穀物生産国の天気なども見ておくとよいでしょう。

 米国の1-3月期のGDPは、ここ数年低成長となっていますが、冬場の厳しい環境が影響しているようです。冬場の米国の天気は特に注目しておく必要があります。

 8月21日、米国で99年振りに皆既日食がありました。太陽光発電が多いカリフォルニア州では、皆既日食によって600万戸相当の電力不足の可能性があるという報道がされていましたが、どうなったでしょうか。

 不足分は、水力発電や他州からの購入によって需要に応えるそうです。もし、供給不足となれば、消費や設備稼働率に影響が出るのではないか、また、今回の皆既日食は米国を横断するため米景気に影響しないのか、いやいやサングラスなど需要が増えたり、皆既日食を見るため、大勢の人が外に出ることから消費にプラスになるのではないかなど、私はいろいろと考えを巡らせました。

 皆さんも世界の天気予報や災害、天候不順のニュースが出たときには、いろいろとシナリオを考えてみてください。その通りになるかどうかは別として、シナリオ想定の訓練にはなるはずです。