一方、プラチナ価格の推移は、長期的には歴史的な安値をキープ

 上述のとおり、2018年のデータから、主要セグメントで需要減少が確認され、プラチナ相場の今後を考える上では、これらを大きなマイナス要素として認識する必要が生じているとみられます。

 しかし一方で、価格をサポートする要素と言える材料もあります。以下は、長期的なプラチナ価格の推移を示したものです。

図:プラチナの価格推移(NY先物価格 月足 終値) 

単位:ドル/トロイオンス 出所:CMEのデータをもとに筆者作成

 プラチナ価格は、1990年代序盤から2000年代序盤は、1トロイオンスあたり500ドル近辺で推移していました。しかし、2005年頃に底値を切り上げる動きが目立ち、リーマン・ショックで下落したものの、2009年以降、現在まで1トロイオンスあたり800ドル近辺を底値とする展開が続いています。新興国の台頭などによる大規模な価格水準の変化(パラダイムシフト)が起きたことが分かります。

以前のレポート「不確実性が高まっている今、長期的視点で見守りたいコモディティ銘柄5つ」で述べましたが、リーマン・ショック後の安値は、複数のコモディティ銘柄において長期的な値動きにおける底値となっています。

 プラチナもその銘柄の一つで、今のところ、リーマン・ショック後の安値が長期的な値動きにおける底値として作用しているとみられます。

 2019年3月11日(月)時点で、プラチナ価格は1トロイオンスあたり810ドル近辺で推移しており、長期的に作用してきたサポート上にあります。今後もこのサポートラインを割ることなく、価格が推移していくかどうかに注目が集まります。

 本レポートの前半では、先週公表された需給データから、「欧州の自動車排ガス浄化装置向け需要の本格的な減少が始まった可能性がある」「中国の宝飾向け需要が減少し続けている」というプラチナ相場にとって下落要因となり得る点について触れました。

 後半では、長期的なプラチナ価格の推移という点から、現在の価格がリーマン・ショック直後の安値という、同ショック以降、底値として作用してきた値位置にあり、比較的サポートされやすい状況にあることについて触れました。

 現在のプラチナ市場は、下落要因とサポート要因が同居していると言えます。今後の注目点は、欧州の自動車排ガス浄化装置向け需要がさらに減少するのか? 仮にその材料によってプラチナ価格が下落したとき、リーマン・ショック後の安値というサポートが作用するか? だと思います。

 次回の需給データは2019年5月13日に公表されます。各データにおいて、2018年のデータに修正がなかったか、2019年の予想がどのように変化したかに注目したいと思います。