2019年3月6日(水)、英国のプラチナ需給の調査機関である、WPIC(ワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシル)が、今後のプラチナ相場を考える上で重要なデータを公表しました。これは同機関が年に4回公表する世界のプラチナの需給データの一つで、一般の人が閲覧可能な数少ない世界のプラチナ需給に関する統計データです。

  今回はこの統計データを参照しながら、今後のプラチナ相場を考える上で重要な、自動車排ガス触媒向け、及び宝飾向け消費の動向と、長期的なプラチナ価格の推移に注目したいと思います。

 

図:プラチナ、金、パラジウムの価格推移(NY先物価格、月足、終値)

単位:ドル/トロイオンス 出所:CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のデータをもとに筆者作成

 

フォルクスワーゲン問題がついに顕在化?自動車排ガス浄化装置向け消費が減少

 今後のプラチナ相場を考える上で、2019年3月6日に公表された統計データは、他の需給データよりも重視する必要があると筆者は考えています。

 今回の需給データの特徴は、2018年の各数値にあった、“f(forecast 予想)”の文字が外れ、予想値から確定値となった点です。今後は、2018年の確定値に多少の修正はあったとしても、大幅に変わることはないとみられます。そして、確定値となった2018年の数値が示すのは、2015年秋に発覚したVW(フォルクスワーゲン)問題が顕在化した可能性でした。

 VW問題発生時は、プラチナの主たる消費分野である自動車排ガス浄化装置向けの消費が減少することが強く懸念されてきました。しかし2015~2017年までの消費推移は、減少せずに横ばい、むしろ微増となり、VW問題がそれほど大きなマイナス要因にならないのではないか? という楽観的なムードを漂わせていました。

 しかし、2018年の確定値で、VW問題の影響をうかがわせる大きめの減少を示したのです。 2018年の自動車排ガス浄化装置の消費は、この5年間の最低となりました(310万トロイオンス)。2019年の予想は2018年をさらに下回るとされています。

図:プラチナの自動車排ガス浄化装置向け消費の推移(世界合計) 

単位:千トロイオンス 出所:WPICのデータより筆者作成

 

 また、以下のグラフは、自動車排ガス浄化装置向けの消費を国・地域別にみたものです。

 

図:プラチナの自動車排ガス浄化装置向け消費の推移(国・地域別) 

単位:千トロイオンス 出所:WPICのデータより筆者作成

 

  グラフを見ると、欧州の「プラチナの自動車排ガス浄化装置向け消費」の減少が目立っています。VW問題発覚以降、2017年までは微増でしたが、2018年は130.5万トロイオンスに減少し、2013年以降の最低となりました。

 VW問題によって、減少しそうで減少しなかった欧州の自動車排ガス浄化装置向け消費の減少が、いよいよ現実のものになった可能性は否定できません。仮に、この2018年の欧州の減少がVW問題の影響によるものだとして、数年遅れて顕在化した理由の一つに、問題発覚前から数年先まで予定されていたディーゼル車の生産が昨年から終了し始めたことがあげられると筆者は考えています。