結局、「上値が重たい」とか言われながらも、何だかんだで株価水準を切り上げてきたことや、相場が崩れないことが足元の相場に対して安心感を与えている面はありますが、その一方で買い上がる勢いがイマイチな点は否めません。

また、「窓」空けの多さも気になるところです。日経平均の一連の戻り基調においても、2万1,000円や75日移動平均線、2万1,500円など、節目を超えるところは窓空けによって達成していることが増えています。つまり、国内の取引時間中に日経平均が節目を超える場面は少なく、前晩の米国市場など、海外市場に左右されやすい顔も持ち合わせていると言えます。

 事実、国内の取引時間中の値動きに乏しい状況は「ATR(Average True Range:アベレージ・トゥルー・レンジ)にも表れています(図2)。

(図2)日経平均(日足)とATR(2019年3月1日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 ATRは、直訳すれば「真の値幅の平均」となりますが、値動きの大きさの推移を示したテクニカル指標です。具体的には、「(1)当日の高値-前日の終値」、「(2)前日終値-当日安値」、「(3)当日の高値-当日の安値」の(1)〜(3)のうち、値幅が最も大きいものを採用します。

 例えば、窓空けで上昇した場合には(1)が採用されることが多くなりますが、ATRは窓空けの影響を含めた値動きも考慮されていることが「真の値幅」と言われる所以です。

 そこで、あらためて図2を見てみると、そのATRが低下傾向となっていて、先週末時点のATRは215円です。一般的に、相場に強いトレンドが発生している時の株価は大きく動きますので、株価が上昇する一方で、ATRが低下するというのは、「トレンドの勢いが弱まっている」と考えることができます。

 チャートを過去に遡って、「株価が急落した後に、一定期間の戻り基調が続いた」パターンを探ってみると、2018年3月〜5月と、2015年9月〜12月の時期が最近の状況と似ていますが、それぞれの時期の動きを見てみると、いずれも戻り基調がストップした前後のATRが200円を下回る低水準だったことが分かります(図3、図4)。

(図3)日経平均(日足)とATR その2(2018年1月〜7月)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

(図4)日経平均(日足)とATR その3(2015年7月〜2016年3月)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 そのため、「行けるところまで株価を戻す」動きは続きそうなものの、ふとした瞬間に下落に転じ、「宴」が突然お開きとなる展開には注意しておく必要があるのかもしれません。