月またぎとなった先週の国内株市場ですが、先週末3月1日(金)の日経平均終値は2万1,602円でした。前週末(2月22日)終値の2万1,425円からは177円高、週足ベースでは3週連続の上昇です。

 2019年相場は早くも3月を迎えたわけですが、これまでの日経平均の動きを簡単に振り返ってみると、大発会こそ大幅下落で始まったものの、以降はほぼ一本調子で戻り基調を描く展開が続いています。月足ベースでは1月が612円高、2月が759円高と、昨年末終値の2万14円から合計で1,300円を超える上げ幅を見せていて、地道に歩みを進めてきた印象です。

 果たして、3月相場も株価の戻りを試す展開が続くのでしょうか? いつもの通り、足元の状況から見ていきます。

(図1)日経平均(日足)の動き(2019年3月1日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週の日経平均の値動きですが、週初の2月25日(月)は「窓」空けによって2万1,500円台に乗せてきました。ただし、その勢いは続かず、週の半ばはこの2万1,500円を挟んでのもみ合いが続き、ローソク足の並びを見ても陰線が優勢となっています。

 結局、週初に空けた窓を埋めてしまったわけですが、週末であり月初でもある3月1日(金)の取引で盛り返しました。先週の高値(2万1,641円)もこの日につけています。前回指摘した、昨年10月2日高値(2万4,448円)と12月26日安値(1万8,948円)の下げ幅の「半値戻し」である21,698円には届かなかったものの、着実に株価水準を切り上げています。

 そして、週末の先物取引市場の終値が、大証で2万1,740円、CMEで2万1,765円となっており、半値戻しの水準を超えているため、今週も基本的には上方向への意識が続きそうです。25日移動平均線が75日移動平均線を上抜ける「ゴールデン・クロス」の実現にも期待したいところです。さらに、今週末はメジャーSQも控えているため、値動きが大きくなる可能性もあるため、2万2,000円台をトライする動きもあるかもしれません。

 結局、「上値が重たい」とか言われながらも、何だかんだで株価水準を切り上げてきたことや、相場が崩れないことが足元の相場に対して安心感を与えている面はありますが、その一方で買い上がる勢いがイマイチな点は否めません。

また、「窓」空けの多さも気になるところです。日経平均の一連の戻り基調においても、2万1,000円や75日移動平均線、2万1,500円など、節目を超えるところは窓空けによって達成していることが増えています。つまり、国内の取引時間中に日経平均が節目を超える場面は少なく、前晩の米国市場など、海外市場に左右されやすい顔も持ち合わせていると言えます。

 事実、国内の取引時間中の値動きに乏しい状況は「ATR(Average True Range:アベレージ・トゥルー・レンジ)にも表れています(図2)。

(図2)日経平均(日足)とATR(2019年3月1日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 ATRは、直訳すれば「真の値幅の平均」となりますが、値動きの大きさの推移を示したテクニカル指標です。具体的には、「(1)当日の高値-前日の終値」、「(2)前日終値-当日安値」、「(3)当日の高値-当日の安値」の(1)〜(3)のうち、値幅が最も大きいものを採用します。

 例えば、窓空けで上昇した場合には(1)が採用されることが多くなりますが、ATRは窓空けの影響を含めた値動きも考慮されていることが「真の値幅」と言われる所以です。

 そこで、あらためて図2を見てみると、そのATRが低下傾向となっていて、先週末時点のATRは215円です。一般的に、相場に強いトレンドが発生している時の株価は大きく動きますので、株価が上昇する一方で、ATRが低下するというのは、「トレンドの勢いが弱まっている」と考えることができます。

 チャートを過去に遡って、「株価が急落した後に、一定期間の戻り基調が続いた」パターンを探ってみると、2018年3月〜5月と、2015年9月〜12月の時期が最近の状況と似ていますが、それぞれの時期の動きを見てみると、いずれも戻り基調がストップした前後のATRが200円を下回る低水準だったことが分かります(図3、図4)。

(図3)日経平均(日足)とATR その2(2018年1月〜7月)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

(図4)日経平均(日足)とATR その3(2015年7月〜2016年3月)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 そのため、「行けるところまで株価を戻す」動きは続きそうなものの、ふとした瞬間に下落に転じ、「宴」が突然お開きとなる展開には注意しておく必要があるのかもしれません。