三大割安株に注目

 日本企業は、平成の30年間の構造改革を経て、財務・収益力を格段に改善しています。利益を伸ばし、配当も増やしてきたにもかかわらず、時代の波に乗り遅れているイメージから株価は上がらず、結果的にPERや配当利回りなどの株価指標で見て、きわめて割安に見える銘柄が増えています。

 私は、中でも「三大割安株」に注目しています。三大割安株とは、私が勝手にネーミングしたものです。金融株、自動車株、資源関連株に、株価指標で見てきわめて割安な銘柄が多いので、この3つを三大割安株と呼んでいます。その代表的銘柄と、2月21日時点の株価バリュエーションは以下の通りです。

三大割安株の株価バリュエーションを東証一部平均と比較:2月21日時点

出所:楽天証券が作成

 三大割安株の共通点は、高水準の利益を上げているのに、将来に対する不安材料があって、株価が割安に放置されていることです。不安とは、以下の通りです。

【金融株の不安】
フィンテックの進化で伝統的な金融機関が不要になる不安
低金利長期化で利ざやが縮小する不安

【自動車株の不安】
EV(電気自動車)の普及で、ガソリン車が不要になる不安
貿易戦争でターゲットになる不安

【資源関連株の不安】
化石燃料を追放しエネルギー循環社会を作る動きが進む不安
資源が供給過剰になり価格が下がる不安

 確かに、上記に挙げた不安は、長期的に考えていかなければならない重要な問題です。ただし、それにしても、私は不安を先取りして株価は安くなり過ぎているように思います。

 たとえば、三菱UFJ FG株が、異常な低評価に据え置かれるのは、低金利が長期化する不安だけでなく、銀行業そのものの存在価値が問われつつあることが、影響している可能性があります。仮想通貨やキャッシュレス決済が普及するにつれて、旧来型の銀行は不要になるという見方が広がっています。さらに、ネットバンキングが広がるにつれ、国内で多数の営業店舗を構える銀行の価値が下がっていくと見られています。

 ただし、その見方も現実に対して、やや先走りし過ぎていると思います。一昨年まで人気だったビットコインなどの仮想通貨は、価格が下がるにつれ人気が離散しました。新しい決済手段として期待されたわけではなく、単に投機対象として注目されていただけだったことが明らかです。

 仮想通貨は、セキュリティ対策やマネーロンダリング対策で、課題を抱えています。ハッカー攻撃を受けて取引所などから巨額の仮想通貨が盗難される問題が起こっています。便利ではあるが、既存の通貨と同様の安全性が確立されるまでに、まだ紆余曲折がありそうです。一方、既存の銀行システムは、柔軟性がなく不便と言われていますが、閉じられたシステムなので、外部からの攻撃に対する安全性は相対的に高いといえます。

 自動車業界では、将来EVがガソリン車を駆逐するといわれています。ただし、それにはまだかなりの年数がかかります。今、世界中を走っているのはガソリン車で、年々世界販売台数が増えていく流れは変わっていません。そのガソリン車で強い競争力を有するトヨタ、ホンダに対する不安は、やや先走りし過ぎていると思います。

 資源関連株についても、同じです。資源ビジネスが人類にとって重要なことは当面変わりません。資源ビジネスで強みを持つだけでなく、非資源ビジネスでも収益を伸ばしている大手総合商社の投資価値は高いと考えています。
 

 

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