バリュー投資とグロース投資、どっちが魅力的?
最近、東証マザーズ上場のバイオ関連株の急騰急落が話題になっています。1月21日に12,730円をつけていたサンバイオ(4592)は、新薬の治験失敗が伝わると、連日のストップ安となり、2月27日には2,800円前後まで下がりました。
一方、国内初の遺伝子治療薬が承認される見通しとなったアンジェス(4563)は、2月20日に635円をつけていたが、連日の急騰で、26日には一時1,320円をつけました。
両社とも、赤字企業です。将来、大きく成長する可能性を持つ企業ですが、これからも期待や失望で急騰急落を繰り返すと考えられるので、投資リスクは高く、初心者向けの投資対象とは言えません。
株式投資の代表的スタイルは、2つあります。1つはグロース(成長株)投資、もう1つはバリュー(割安株)投資です。読者の皆様は、どちらのスタイルに近い方ですか?
私には、25年の日本株ファンドマネージャー経験があります。投資信託、年金などで、20代は1,000億円、40代には2,000億円以上の日本株ファンドを運用していました。
私は、主に割安株への投資で、ベンチマーク(競争相手)であるTOPIX(東証株価指数)を上回るパフォーマンスを上げてきました。割安株をコアとして長期保有しながら、成長株で短期売買を繰り返しつつ、サヤをかせぐことを目指していました。
株式投資の初心者は、まず割安株投資から開始した方が良いと思っています。最初の候補は、配当利回りの高い大型株です。小型成長株も面白いのですが、小型成長株には値動きの荒いものが多く、注意を要します。
小型成長株の株価変動(イメージ図)
上のグラフでは、成長株の株価変動イメージを、3つの時期に分けて描きました。
(1)黎明期:成長期待があるがまだ利益がほとんど出ない時期
(2)成長期:利益が大きく成長する時期
(3)成熟期:最高益更新が続くものの、増益率が大幅に鈍化する時期
このグラフは、成長株の成功事例をイメージして描いています。黎明期から成熟期まで長く持っていれば、高いリターンが得られます。ただし、それでも、投資タイミングが悪いと、短期的に大きな損失をこうむることがあります。それが、グラフで赤い矢印をつけたところです。
ここで描いたのは、あくまでも小型成長株の成功事例です。このように黎明期から成長期に移行していくことがわかっているならば、バタバタ売り買いしなくても、じっくり長期投資すれば成果が得られます。
ただし、現実には、このようにうまくいく銘柄ばかりではありません。黎明期が続いているうちに成長ストーリーが崩れ、成長期に入ることなく消えていく銘柄も多数あります。実際、過去のITバブルやバイオバブル相場では、投資家の熱い期待を受けつつ、成長せずに消えた銘柄が多数あります。
株価が割安な銘柄を選べば、投資リスクはある程度抑えられる
割安株は、言葉をかえれば、「不人気株」です。人気がないから配当利回りが高く、PER(株価収益率)などの株価指標でみて割安でも、積極的な買いは入りにくくなっています。
一方、多くの成長株は「人気株」です。成長ストーリーにひかれて多くの投資家が熱狂的に買うので、株価指標で見ると割高な銘柄が多くなります。
初心者はまず割安株からと私が考えるのは、将来のパフォーマンスに、一般的に以下の関係があるからです。
(1)割安な不人気株
→ 予想外に高い成長性を実現すれば
→ 株価は大きく上昇
(2)割安な不人気株
→ 成長性が低ければ
→ 株価は低迷
(3)割高な人気成長株
→ 期待通り成長性が高ければ
→ 株価はそこそこ上昇
(4)割高な人気成長株
→ 成長ストーリーが崩壊すると
→ 株価は大きく下落
ここで、一番避けたいのは(4)です。初心者が、このパターンに陥ると、損切りができずに、ずるずると損失を拡大させることになりやすいので、注意が必要です。
私は、割高な成長株は「短期勝負」と割り切って売り買いしていました。みんなが熱狂する株を一緒に買いに行く時は、「株価が下がったらすばやく損切り」を念頭に置いていたのです。
対して、割安株に投資する時は、じっくりと長期に持ち、価値が見直されるのを待つ戦略でした。堅実経営の割安株は、投資家の期待が低いので、業績がたいしたことなくても急落することは、あまりありません。人気の成長株とは違って、バタバタと短期で売り買いする必要はあまりないと言えます。
三大割安株に注目
日本企業は、平成の30年間の構造改革を経て、財務・収益力を格段に改善しています。利益を伸ばし、配当も増やしてきたにもかかわらず、時代の波に乗り遅れているイメージから株価は上がらず、結果的にPERや配当利回りなどの株価指標で見て、きわめて割安に見える銘柄が増えています。
私は、中でも「三大割安株」に注目しています。三大割安株とは、私が勝手にネーミングしたものです。金融株、自動車株、資源関連株に、株価指標で見てきわめて割安な銘柄が多いので、この3つを三大割安株と呼んでいます。その代表的銘柄と、2月21日時点の株価バリュエーションは以下の通りです。
三大割安株の株価バリュエーションを東証一部平均と比較:2月21日時点
三大割安株の共通点は、高水準の利益を上げているのに、将来に対する不安材料があって、株価が割安に放置されていることです。不安とは、以下の通りです。
【金融株の不安】
フィンテックの進化で伝統的な金融機関が不要になる不安
低金利長期化で利ざやが縮小する不安
【自動車株の不安】
EV(電気自動車)の普及で、ガソリン車が不要になる不安
貿易戦争でターゲットになる不安
【資源関連株の不安】
化石燃料を追放しエネルギー循環社会を作る動きが進む不安
資源が供給過剰になり価格が下がる不安
確かに、上記に挙げた不安は、長期的に考えていかなければならない重要な問題です。ただし、それにしても、私は不安を先取りして株価は安くなり過ぎているように思います。
たとえば、三菱UFJ FG株が、異常な低評価に据え置かれるのは、低金利が長期化する不安だけでなく、銀行業そのものの存在価値が問われつつあることが、影響している可能性があります。仮想通貨やキャッシュレス決済が普及するにつれて、旧来型の銀行は不要になるという見方が広がっています。さらに、ネットバンキングが広がるにつれ、国内で多数の営業店舗を構える銀行の価値が下がっていくと見られています。
ただし、その見方も現実に対して、やや先走りし過ぎていると思います。一昨年まで人気だったビットコインなどの仮想通貨は、価格が下がるにつれ人気が離散しました。新しい決済手段として期待されたわけではなく、単に投機対象として注目されていただけだったことが明らかです。
仮想通貨は、セキュリティ対策やマネーロンダリング対策で、課題を抱えています。ハッカー攻撃を受けて取引所などから巨額の仮想通貨が盗難される問題が起こっています。便利ではあるが、既存の通貨と同様の安全性が確立されるまでに、まだ紆余曲折がありそうです。一方、既存の銀行システムは、柔軟性がなく不便と言われていますが、閉じられたシステムなので、外部からの攻撃に対する安全性は相対的に高いといえます。
自動車業界では、将来EVがガソリン車を駆逐するといわれています。ただし、それにはまだかなりの年数がかかります。今、世界中を走っているのはガソリン車で、年々世界販売台数が増えていく流れは変わっていません。そのガソリン車で強い競争力を有するトヨタ、ホンダに対する不安は、やや先走りし過ぎていると思います。
資源関連株についても、同じです。資源ビジネスが人類にとって重要なことは当面変わりません。資源ビジネスで強みを持つだけでなく、非資源ビジネスでも収益を伸ばしている大手総合商社の投資価値は高いと考えています。
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