5.メルペイその他

 メルペイその他については、現時点では不透明な部分が多く、ほぼ売上高が立たないと想定しています。一方、認知度を上げるためのマーケティング費用が先行投資とし発生する可能性が高く、2019年6月期、2020年6月期共に100億円前後の赤字が発生すると予想しています。

 2月13日にサービスをスタートしたメルペイについては、1年目の決済額が3,000億円程度、手数料収入が40億円程度になるとみていますが、スタートしたばかりであり、平均手数料率をはじめ不透明な要素が多いため、予想には織り込んでいません。

 メルペイは、「iD」決済で90万カ所、コード決済で45万カ所の合計約135万カ所の店舗で利用可能となる見込みで、既にラインペイの規模に匹敵しています。現時点で大手コンビニやイオンで利用可能となっており、最初の難所であった取扱店舗数の壁はクリアできたと言えます。メルペイは競合他社のように加盟店側の手数料無料キャンペーンを行っておらず、加盟店は決済手数料を支払う必要があります。それにもかかわらず導入規模が広がった理由は、中古品を実際に売買しているユーザーの独自データが小売店側にとって魅力的であったからでしょう。

 日本でリアル店舗を展開している小売業は、人口減少と店舗数の飽和感に直面しており、競合と客を取り合う状況になっています。客数を少しでも増やしたい、競合に少しでも奪われるわけにはいかないという状況が、メルペイの取扱店舗数拡大の追い風になったと考えられます。売買データに基づいて、メルペイ上で来店を促すようなクーポンを効果的に打つことができれば、店舗側にとっては魅力的なサービスになるでしょう。

 今後のメルペイの売上高を考える上で最も重要となるのがメルペイを利用した決済高です。メルペイの収入は、決済を通じて支払われる店舗側の手数料にあるからです。この点、メルペイの決済高で1年目に期待したい金額は3,000億円程度です。

 メルカリ上でアイテムを売却したユーザーが得られる「売上金」は年間約5,000億円発生しています。売上金はメルカリ上でのアイテム購入に使えるほか、現金として受け取るユーザーもいます。そうしたユーザーが、今後は売上金を現金化せずに、メルペイでの買い物に使用する可能性は高いでしょう。さらに、ラインペイが始まった頃よりもキャッシュレス決済が認知されていること、さらに今年10月に予定されている消費増税でキャッシュレス決済の税率が優遇される可能性を考慮すると、メルペイ決済は順調に浸透していきそうです。

 

6.広告事業

 同社が広告事業を立ち上げる可能性が残されています。メルカリ及びメルペイは広告事業と相性が良いと考えられます。メルカリユーザーの平均月間利用時間は5.3時間とSNS並みであり(出所:Nielsen Digital Co., Ltd.、2018年1月)、広告を依頼したい企業が多いと推測されます。

 SNSが主軸のラインの場合、2018年12月期の広告事業の売上収益は1,082億円、日本の月間アクティブユーザー数は7,900万人でした。メルカリ(日本)の直近2019年6月期2Qの月間アクティブユーザー数が1,236万人であることを考慮すると、170億円程度の売上高を生み出すポテンシャルが残されています。