さらなる金相場の反発には、投機筋の買いポジションの増加が必要

 投機筋の動向をさらに詳しく追っていきます。投機筋は、価格が今後上昇すると考えるのであれば買いを、逆に下落すると考えるのであれば売りのポジションを保有して利益を上げようとして、投機筋の動向はしばしば金価格のトレンドを増幅させることがあります。

※ポジションとは、決済せずに保有している残高、建玉(たてぎょく)のことです。持ち高(もちだか)と呼ぶこともあります。

 NY金先物市場における投機筋の買い・売りポジション、および金価格の推移を示した図5を見ると、2017年7月や12月ごろ、金価格が比較的反発色を強めたタイミングがありました。その際、投機筋の買いポジションが増加していました。投機筋の動きが価格反発の流れを強めたと考えられます。

図5:NY金先物市場における投機筋の買い・売りポジションおよび金価格の推移

出所:CFTCおよびCMEのデータより筆者作成

 そして2018年は4月ごろから、投機筋の売りポジションの増加が、価格下落に拍車をかけたと考えられます。ただ、年末にかけて、冒頭で述べた米国の金融政策において「金利引き上げの温度感の低下」が顕著になったことを受けて、売りポジションの減少と買いポジションの増加の流れが目立つようになりました。

 米国の政府機関の閉鎖の影響により、2019年2月4日現在で、投機筋のデータの最新版は2018年12月24日時点となっていますが、恐らく直前の投機筋の動向と価格動向を見る限り、2019年1月も投機筋の売りポジション減少・買いポジション増加の傾向は継続しているとみられます。

 投機筋のデータについては、2018年12月24日分が2019年2月1日に配信され、それ以降、通常は金曜日のみですが、通常のスケジュールになるまで、順次遅れていた分を火曜日と金曜日に配信することが予定されています。

 ここから投機筋の買いポジションの増加が鮮明になれば、目先、金価格はもう一段高となる可能性がありそうです。

 

金価格の歴史的な高値超えには、投機筋の売りポジションのさらなる減少が必要

 米国の金融政策が転換しつつあることは、金相場にとって大きな意味を持ち、足元、かつて米国が積極的に金融緩和を行ってきた際に達成した高値1,900ドル台に接近するチャンスが到来しつつあると筆者は考えています。

 現在の金相場は、バーナンキ・ショック以降、頭を押さえ続けてきた「米国の金融引き締め」が弱くなりつつあり、その分、上値を伸ばしやすくなっていると考えています。

図6:NY金先物市場における投機筋の買い・売りポジションおよび金価格の推移

出所:CFTCおよびCMEのデータより筆者作成

 ただし、かつての高値を目指すためには、投機筋の売り圧力が今よりもさらに低下することが必要だと考えられます。

 図6を見ると、米国が金融緩和を行い金価格が大きく上昇していた2009年ごろから2013年ごろまで、投機筋の売りポジションは4万枚前後でした。2018年12月24日時点で、投機筋の売りポジションは9万7,637枚ですので、ここから5万枚以上減少すれば、すなわち、投機筋の売り圧力が半分以下になれば、投機筋の動向において、かつての価格上昇時とほぼ同じ環境になります。

 もちろん、金相場の動向は、米国の金融政策や投機筋の動向だけが要因ではありません。しかし、少なくとも、取引参加者として多数派である投機筋の売りポジションが、かつて歴史的高値をつけた時の水準まで低下すれば、金相場は今よりも高値を目指しやすくなると筆者は考えています。

 さまざまな材料に注意を払い、金相場の動向を注視していきたいと思います。