1月21日~25日 原油マーケットレビュー
前週のNY原油相場は方向感乏しい展開。週前半に54ドル半ばまで上昇する場面もあったが、心理的な節目である55ドルを上抜くには至らず。週後半には米国とベネズエラが緊張状態にあることから下値は支えられたが、米中貿易問題を軸に先行きの世界経済をめぐる不透明感が強く、上値の重い商状となった。52ドルを中心に揉み合っている直近レンジから放れた方に付く相場展開が見込まれる。
米中の通商交渉の行方に楽観ムードが広がり始めていたが、週初、トランプ政権は中国の提案する通商予備会議の週内開催を拒否したと伝わった。また、中国のGDP(国内総生産)に低成長が示され、かつIMF(国際通貨基金)も、今年と来年の世界経済成長率見通しを従来見通しから下方修正と、先行きの世界経済に対する不安感が強い状況にある。このほか英国のEU(欧州連合)離脱問題、米政府機関の長期閉鎖など複数の不安要因があることから、市場参加者の多くは慎重姿勢を崩していない。世界景気の減速懸念から株式市場も戻り一服、徐々に上値が重くなりつつあり、投資家心理に直近の明るさはない。リスク選好度の低下というよりも、むしろリスクオフのムードが広がり始めている。景気減速に伴うエネルギー需要の伸び鈍化、リスク回避の動きと、原油相場にとっては大きな重石となった。
週後半、米国とベネズエラの緊張から底堅い動きとはなったものの、需給ファンダメンタルズ面においても弱気な材料は依然として多い。EIA(米エネルギー情報局)が発表した週間石油統計で、原油在庫は前週比800万バレル増と大幅な増加となった。年末は税金対策のため在庫取り崩しが進んでいたが、その反動から急増したとみられる。また、ガソリン在庫も市場予想を大幅に上回る積み増しが続いた。ガソリン在庫は前年を上回る水準にあり、供給不安は乏しい。一方でガソリン需要の著しい伸びは見られていないため、対原油需要の大きな伸びは期待し難い。そもそもリファイナリーの能力に限りがあるため、原油需要の大幅な増加の可能性は低い。このような状況下、原油生産は高水準を維持、さらに潜在的な増加の可能性もあるため、米国内の原油需給は引き続きベアな状態にある。
仏外相が、米国の対イラン制裁の適用を回避する形でイラン産原油を購入できるシステムを構築する見込みであると伝わった。これが実現すると、対イラン制裁による供給タイトへの懸念は和らぐため、市場はこれを弱材料視した。ただし、これに関しては検討していると伝わったに過ぎず、一時的なマーケット要因にとどまった。米国とベネズエラの関係から買われたのも同様である。トランプ大統領がベネズエラの国会議長を暫定大統領として承認する方針を示し、これに対しマドゥロ大統領が反発、米国との断交を宣言した。関係悪化が懸念されるなか、米政府はベネズエラ産原油の輸出に対して制裁を科す可能性を示唆。これも示唆したに過ぎず、確定ではないため、下支え要因とはなったがこれを手掛かりに買い進む動きは見られていない。いずれも今後の動向を確認したいところ。