この数年間、自動車排ガス浄化装置向けではなく、実は中国の宝飾需要が減少していた

 図4はプラチナ価格が直近で高値をつけた2011年、VW問題が発覚した2015年、そして2017年の国別のプラチナ消費量の推移です。

図4:2011年、2015年、2017年における国別のプラチナ消費量 

単位:千トロイオンス
出所:World Platinum Investment Councilのデータより筆者作成

 2011年以降、その他(インド含む)の国々と日本の消費の減少が、2015年以降は中国の消費減少が目立っています。

 VW問題の舞台となった欧州や北米の消費はほとんど変化がありません。

図5:欧州のプラチナ消費量の推移

単位:千トロイオンス
出所:World Platinum Investment Councilのデータより筆者作成

 図5の欧州のプラチナ消費量の推移を見ると、2015年から2017年にかけて、排ガス触媒装置向けの消費は横ばいだったことがわかります。その他の消費についても横ばいです。

図6:中国のプラチナ消費量の推移 

単位:千トロイオンス
出所:World Platinum Investment Councilのデータより筆者作成

 図6の中国のプラチナ消費量の推移を見ると、宝飾品向け消費が減少しています。2015年の中国の宝飾品向け消費は全体の21.3%です(2015年時点)。

図7:日本のプラチナの消費量の推移 

単位:千トロイオンス
出所:World Platinum Investment Councilのデータより筆者作成

 また、図7の日本のプラチナ消費量の推移を見ると、2011年から2017年にかけてガラス部門での消費が減少。2015年から2017年にかけて、排ガス浄化装置向け消費が減少しました(用途の詳細はコモディティ☆クイズ 今回のテーマは「プラチナ」! )で解説)。

図8:その他(インド含む)のプラチナの消費量の推移 

単位:千トロイオンス
出所:World Platinum Investment Councilのデータより筆者作成

 図8のその他(インド含む)のプラチナ消費量の推移を見ると、その他(インド含む)では、日本同様、ガラス向けの消費が減少しています。宝飾品は2011年から2015年にかけて増加しましたが、2017年は2015年とほぼ同等でした。排ガス浄化装置向けは2011年以降、ほぼ横ばいでした。

 自動車の件とは別に、「プラチナの消費」のみで考えた場合、近年のプラチナ価格の下落・低迷については、中国の宝飾品向け消費が減少したことが主因で、日本やその他(インド含む)のガラス向け消費の減少が追い打ちをかけたと言えそうです。

 鉱山生産(ロシアや南アフリカなど)とリサイクル(自動車排ガス触媒からの抽出など)の生産面は図9のとおり、ほぼ横ばいで推移しています。

図9:プラチナの供給

単位:千トロイオンス
出所:World Platinum Investment Councilのデータより筆者作成