4.アニメ市場の動き

 日本のアニメ市場も好調です。国内市場は2014年をピークに一服していますが、海外のアニメ配信業者(北米は、ネットフリックス、フールー、ファニメーション、クランチロールなど、中国はアイチーイーなど)向けの配信権販売が2015年から急増しています(グラフ8、9)。業界大手の東映アニメーションはこの流れに乗って成長しています。

 日本のアニメ市場の内訳を見ると、海外についで規模が大きい商品化の分野はピークからは減少しているものの、年間5,000億円以上の規模があります(表1)。この分野でも、東映アニメーションの「ドラゴンボール」関連ゲームの版権販売など、ゲーム化権の販売が順調です(「ドラゴンボール」の権利使用は東映アニメーションが窓口になっている)。

 ドラゴンボールでは、12月14日公開の「ドラゴンボール超 ブロリー」(製作は東映アニメーション)の出足が順調です。興行収入は、公開後11日でシリーズ最速の20億円を超えました。前作の「ドラゴンボールZ復活の「F」」(2015年公開)の興行収入は37億円だったため、今回作はこれを超える可能性があります。

 また、まだ小規模ですが、アニメ市場の中でライブエンタテインメントが急速に伸びています(表1)。声優さん単独あるいはユニットを組んでのライブで、熱心なファンに人気があります。この分野はバンダイナムコホールディングス傘下のサンライズ、バンダイナムコアーツ(旧ランティス)が注力しています。

 東映アニメーションにも中長期の投資妙味があると思われます。

グラフ8 日本のアニメ市場:ユーザーが支払った金額を推定した広義の市場

単位:億円、暦年
出所:日本動画協会より楽天証券作成

グラフ9 日本のアニメ市場(広義)の国内、海外内訳

単位:億円
出所:日本動画協会より楽天証券作成

表1 日本のアニメ市場(広義)の内訳

単位:億円、暦年
出所:日本動画協会より楽天証券作成

 

5.出版市場の動き

 日本の出版市場は低迷が続いています。出版科学研究所によれば、2018年の紙の出版販売額は前年比6.4%減の1兆2,800億円台になりそうです。ピークだった1996年の2兆6,563億円の半分以下の規模です。

 ところが、本を読む人が減っている、出版社にとって困難な時代に業績を伸ばしている出版社があります。アルファポリスです。2018年3月期は売上高42億1,300万円(前年比32.3%増)、営業利益7億5,700万円(同4.4倍)、2019年3月期上期は、売上高22億4,900万円(同21.9%増)、営業利益6億900万円(同3.0倍)の好業績を上げました。赤字のゲーム事業を非連結化したことも業績を押し上げました。

 アルファポリスのビジネスモデルは、自社直営の小説・漫画投稿サイト「アルファポリス」で人気のあった投稿作品を出版するものです。投稿された小説、漫画は出版されるまで無料で読むことができます。そして、読者が多い作品を出版するビジネスモデルです。

 同種のウェブサイトで最大手は「小説家になろう」ですが、出版は外部の出版社からになります。アルファポリスもかつては「小説家になろう」の人気作品の出版を手掛けていましたが、出版競争が激しくなったため、2年前から自社サイトへの投稿作品からのみ出版することにしました。

 今2Qの人気作品は、ライトノベル、漫画では「とあるおっさんのVRMM活動記」など、文庫では「居酒屋ぼったくり」などです。このうち「居酒屋ぼったくり」はドラマ化され、BS12で2018年4月から12話が放送されました。

 また、まだ出版はしていませんが、絵本投稿サイト「絵本ひろば」を開設しており、エントリー数が増えています。アルファポリスではこれが重要なサイトになると予想しています。

 このようなビジネスでは、マルチメディア展開も重要になります。有力作品については、ライトノベル→漫画→アニメへの展開も行うもくろみです(過去には、「ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」をアニメ化し一定の成果が出た)。現在2作品のアニメ化が進んでいます。

 アルファポリスにも中長期の投資妙味があると思われます。

 

本レポートに掲載した銘柄:任天堂(7974)ソニー(6758)バンダイナムコホールディングス(7832)アカツキ(3932)ヒビノ(2469)エイベックス(7860)アミューズ(4301)東映アニメーション(4816)アルファポリス(9467)