毎週金曜日夕方掲載

本レポートに掲載した銘柄

任天堂(7974)ソニー(6758)バンダイナムコホールディングス(7832)アカツキ(3932)ヒビノ(2469)エイベックス(7860)アミューズ(4301)東映アニメーション(4816)アルファポリス(9467)

 

1.拡大する国内のゲーム・エンタテインメント市場

 皆様、新年明けましておめでとうございます。

 本年も、楽天証券投資WEEKLYをよろしくお願い申し上げます。

 今回は2019年のホットトピックスとしてゲーム・エンタテインメントセクターを取り上げます。今週はゲーム・エンタテインメントの各分野の概況を見て、来週は個別銘柄の動きを探りたいと思います。

 まず、ゲームからです。家庭用ゲームの世界市場は順調に拡大しています。グラフ1、2は、国内のニンテンドースイッチ(任天堂)の動きを見たものです(ファミ通.comによる)。ニンテンドースイッチ・ハードは、11月16日発売の「ポケットモンスター Let’s Go! ピカチュウ・Let’s Go!イーブイ」発売時から勢いがつき、12月7日発売の「大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL」で更に伸びています。1年前を上回るペースになっています。

 また、国内のニンテンドースイッチ・ソフトは、「ポケモン ピカチュウ・イーブイ」「大乱闘スマッシュブラザーズ」の寄与で、今年10月から12月中旬までの実績を見ると前年比倍増のペースで売れています。

 海外市場のデータは11月中旬までしかありませんが、日本が11月に入ってから勢いが出てきたのに対して、アメリカ、欧州は10月からハード、ソフトともに勢いがついています(VGChartzによる)。全世界のニンテンドースイッチ・ソフト販売本数は、11月の「ポケモン ピカチュウ・イーブイ」発売でその勢いに更に弾みがつきました(グラフ3)。特にアメリカで好調です。

 ソニーのPS4も、今2Q(2018年7-9月期)までの動向と同じで、ハードは前年よりも減少していますが、ソフトは前年を上回る動きが続いています。

 このように見ると、家庭用ゲーム市場の足元の動きは好調と言えます。

 2019年を展望すると、ニンテンドースイッチは、年明けの2019年1月11日に「NEWスーパーマリオブラザーズUデラックス」が発売されるため、2019年1-3月期もハード、ソフトともに順調な伸びが期待できます。来期2020年3月期も期待作が多数あるため、業績続伸が期待できそうです。

 ソニーのゲーム&ネットワークサービス部門も、2019年2月22日発売予定だったソニー製ソフト「デイズゴーン」(PS4用)を2019年4月26日に延期したため、2020年3月期に予定されるPS4用「ゴースト オブ ツシマ」と合わせて、来期もPS4用のソニー製大作ソフト2作が発売されることになりました。このため、伸びは鈍化すると思われますが、来期も高水準な利益が予想されます。

 ただし、PS4ハードは減少が続くと予想されます。そのため、実際の発売はまだ先になると思われますが、PS5の話題が少しずつ活発になると思われます。

 足元の株価は任天堂、ソニーとも厳しい状況ですが、ファンダメンタルズの良好さを考えると、いずれ立ち直ると思われます。

グラフ1 ニンテンドースイッチ・ハードウェアの販売台数

注:日本のみ
単位:台
出所:ファミ通.comより楽天証券作成

グラフ2 ニンテンドースイッチのハード累計販売台数と任天堂製主要ソフト販売本数:日本

単位:台、本
出所:ファミ通.comより楽天証券作成

グラフ3 ニンテンドースイッチ、ハード、ソフト販売数量:全世界

単位:台、本、週次
出所:VGChartzより楽天証券作成

グラフ4 ニンテンドースイッチ・ハード1台当たりソフト販売本数:全世界

単位:本/台
注:週次ソフト販売本数÷週次ハード販売台数
出所:VGChartzより楽天証券作成

2.スマホゲームの動き

 国内のスマホゲームは、市場が成熟化し大きな伸びが期待できなくなっています。スマホゲーム大手のミクシィ(主力ソフトは、「モンスターストライク」)、ガンホー・オンライン・エンターテイメント(同「パズル&ドラゴンズ」)は両社とも減収減益が止まりません。

 ただし、この中で堅調に伸びているスマホゲームがあります。バンダイナムコホールディングスアカツキの協業による「ドラゴンボールZドッカンバトル」(配信はバンダイナムコホールディングス、開発、運営はアカツキ)です。国内版は2015年1~2月に、海外版は2015年7月に配信開始されました。全世界で2億5,000万ダウンロードの実績を持つスマホゲームであり、ドラゴンボールの熱心なファンがプレイしているゲームです。また、日本のスマホゲームとしては珍しく、課金売上高の海外比率が高いゲームです。ドラゴンボールが世界的なキャラクターであることから、海外にもゲームプレイヤーを多く抱えるゲームなのです。

 2019年は2月に配信開始4周年イベントがあります(毎年2月に国内配信の周年イベントが、7月に海外配信の周年イベントがあります)。来年2月のイベントは、アニメ「ドラゴンボール超 ブロリー」が2018年12月14日から劇場公開されたため(製作は東映アニメーション)、従来よりも盛り上がる可能性があります。

 また、バンダイナムコホールディングス、アカツキともに、多角化を志向している会社です。バンダイナムコホールディングスは、スマホゲーム、家庭用ゲーム、業務用ゲーム、アミューズメント施設、アニメ制作、アニメ音楽に展開しています。最近流行りの2.5次元にも積極的な会社で、アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の登場人物の声優さん達のユニット「Aqours(アクア)」が11月に行った東京ドーム2Daysのライブは大成功しました。

 アカツキは、横浜中央郵便局別館の再開発に参加しているほか、スペインのeスポーツリーグ運営会社に出資し、eスポーツに参入しました。

 バンダイナムコホールディングス、アカツキともに中長期で有望銘柄と思われます。

 

3.音楽市場の動き-ライブブームが続く-

 音楽市場では世界的にライブブームが続いており、日本も例外ではありません。首都圏で会場不足問題が続いており、2019年も9月から日本武道館が改修のために1年以上の休館に入る予定ですが、会場不足の問題を、公演数の増加(平日公演、地方公演の増加)、動員数の増加、チケット代の上昇とグッズ販売の増加によってクリアし、ライブ売上高は増加傾向にあります(グラフ5、6、7)。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックが終わった後は、会場不足問題がある程度緩和されるため、ライブブームは長期化すると予想されます。

 ライブブームの恩恵を受けている上場企業は、ソニー、エイベックスのような所属アーティストのライブ興業権を持っているレコード会社、アミューズのような音楽に強い芸能プロダクションです。

 ソニーは、「乃木坂46」「欅坂46」「西野カナ」など大型ライブに強いアーティストが所属していることが強みです(「乃木坂46」「欅坂46」のアーティスト・マネジメントは、ソニー・ミュージックと「乃木坂46」「欅坂46」の総合プロデューサーである秋元康氏の事務所との共同マネジメント)。

 エイベックスも「東方神起」「BIGBANG」(現在は兵役中。全員が兵役明けするのは推定で2020年夏以降)、「AAA」など動員力の大きいアーティストを抱えています。

 アミューズは、「福山雅治」「サザンオールスターズ」「Perfume」「ONE OK ROCK」などを抱えています。「サザンオールスターズ」は2019年春に結成40周年ツアーを行う予定です。

 エイベックス、アミューズは多角化にも取り組んでいます。エイベックスは単発の取り組みですが、演劇(ミュージカル)の製作とプロデュースを行っています。宮本亜門氏演出で2019年3月に公演予定(再演)のミュージカル「プリシラ」で、東宝とともにエイベックスが製作に参加しています。ドラァグクイーンをテーマにしたミュージカルで、山崎育三郎、陣内孝則のほか、マルチタレントのオナン・スペルマーメイドが出演します。

 またアミューズは、世界最大規模のeスポーツチーム「チームリキッド」と戦略的パートナーシップ契約を結びました。まず、同チーム所属の日本人選手2名の日本におけるマネジメント業務を行います。

 ライブブームでは、もう一社重要な会社があります。ヒビノです。コンサートホールへの音響、映像機器の販売で国内トップ(推定シェア約30%)の会社です。また、ライブ開催時に使う大型LEDパネル、各種音響機器、映像機器の貸し出しと運営を行っており、この事業が収益源になっています(大型ライブではアーティストが良く見えないため、会場に大型LEDパネルを複数台設置して、アーティストの映像を映す。あるいは演出に使う)。

 ヒビノの主要顧客を見ると、音響・映像機器の販売では国内の主要なコンサートホール、テレビ、ラジオの放送局などが顧客になります。音響機器の貸し出しと運営(コンサート音響部門)は、「B'z」「関ジャニ∞」「ONE OK ROCK」など、映像機器の貸し出しと運営(イベント映像部門)は、「乃木坂46」「Kis-My-Ft2」など、大物アーティストのプロモーターが顧客になります。音響、映像ともに演出にかかわる重要分野であり質が重視されるため、継続取引になる顧客が多くなります。

 今後を展望すると、ライブブームに加えて東京オリンピック・パラリンピックを控えてスポーツイベントが増加すると予想されます。2020年になると、オリンピック関連の音響・映像機器の販売と、音響・映像機器の貸し出し、運営の増加が予想されます。

 ヒビノ、エイベックス、アミューズには、中長期的な投資妙味があると思われます。

グラフ5 日本の音楽産業:1

注:音楽ソフト生産高、音楽配信売上高、コンサート・ライブ売上高の合計、暦年
単位:百万円

グラフ6 日本の音楽産業:2

単位:百万円、暦年
出所:音楽ソフト生産高、音楽配信売上高は日本レコード協会、コンサート・ライブ売上高はコンサートプロモーターズ協会

グラフ7 ライブの年間公演数と動員数

出所:コンサートプロモーターズ協会より楽天証券作成

4.アニメ市場の動き

 日本のアニメ市場も好調です。国内市場は2014年をピークに一服していますが、海外のアニメ配信業者(北米は、ネットフリックス、フールー、ファニメーション、クランチロールなど、中国はアイチーイーなど)向けの配信権販売が2015年から急増しています(グラフ8、9)。業界大手の東映アニメーションはこの流れに乗って成長しています。

 日本のアニメ市場の内訳を見ると、海外についで規模が大きい商品化の分野はピークからは減少しているものの、年間5,000億円以上の規模があります(表1)。この分野でも、東映アニメーションの「ドラゴンボール」関連ゲームの版権販売など、ゲーム化権の販売が順調です(「ドラゴンボール」の権利使用は東映アニメーションが窓口になっている)。

 ドラゴンボールでは、12月14日公開の「ドラゴンボール超 ブロリー」(製作は東映アニメーション)の出足が順調です。興行収入は、公開後11日でシリーズ最速の20億円を超えました。前作の「ドラゴンボールZ復活の「F」」(2015年公開)の興行収入は37億円だったため、今回作はこれを超える可能性があります。

 また、まだ小規模ですが、アニメ市場の中でライブエンタテインメントが急速に伸びています(表1)。声優さん単独あるいはユニットを組んでのライブで、熱心なファンに人気があります。この分野はバンダイナムコホールディングス傘下のサンライズ、バンダイナムコアーツ(旧ランティス)が注力しています。

 東映アニメーションにも中長期の投資妙味があると思われます。

グラフ8 日本のアニメ市場:ユーザーが支払った金額を推定した広義の市場

単位:億円、暦年
出所:日本動画協会より楽天証券作成

グラフ9 日本のアニメ市場(広義)の国内、海外内訳

単位:億円
出所:日本動画協会より楽天証券作成

表1 日本のアニメ市場(広義)の内訳

単位:億円、暦年
出所:日本動画協会より楽天証券作成

 

5.出版市場の動き

 日本の出版市場は低迷が続いています。出版科学研究所によれば、2018年の紙の出版販売額は前年比6.4%減の1兆2,800億円台になりそうです。ピークだった1996年の2兆6,563億円の半分以下の規模です。

 ところが、本を読む人が減っている、出版社にとって困難な時代に業績を伸ばしている出版社があります。アルファポリスです。2018年3月期は売上高42億1,300万円(前年比32.3%増)、営業利益7億5,700万円(同4.4倍)、2019年3月期上期は、売上高22億4,900万円(同21.9%増)、営業利益6億900万円(同3.0倍)の好業績を上げました。赤字のゲーム事業を非連結化したことも業績を押し上げました。

 アルファポリスのビジネスモデルは、自社直営の小説・漫画投稿サイト「アルファポリス」で人気のあった投稿作品を出版するものです。投稿された小説、漫画は出版されるまで無料で読むことができます。そして、読者が多い作品を出版するビジネスモデルです。

 同種のウェブサイトで最大手は「小説家になろう」ですが、出版は外部の出版社からになります。アルファポリスもかつては「小説家になろう」の人気作品の出版を手掛けていましたが、出版競争が激しくなったため、2年前から自社サイトへの投稿作品からのみ出版することにしました。

 今2Qの人気作品は、ライトノベル、漫画では「とあるおっさんのVRMM活動記」など、文庫では「居酒屋ぼったくり」などです。このうち「居酒屋ぼったくり」はドラマ化され、BS12で2018年4月から12話が放送されました。

 また、まだ出版はしていませんが、絵本投稿サイト「絵本ひろば」を開設しており、エントリー数が増えています。アルファポリスではこれが重要なサイトになると予想しています。

 このようなビジネスでは、マルチメディア展開も重要になります。有力作品については、ライトノベル→漫画→アニメへの展開も行うもくろみです(過去には、「ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」をアニメ化し一定の成果が出た)。現在2作品のアニメ化が進んでいます。

 アルファポリスにも中長期の投資妙味があると思われます。

 

本レポートに掲載した銘柄:任天堂(7974)ソニー(6758)バンダイナムコホールディングス(7832)アカツキ(3932)ヒビノ(2469)エイベックス(7860)アミューズ(4301)東映アニメーション(4816)アルファポリス(9467)