2.スマホゲームの動き

 国内のスマホゲームは、市場が成熟化し大きな伸びが期待できなくなっています。スマホゲーム大手のミクシィ(主力ソフトは、「モンスターストライク」)、ガンホー・オンライン・エンターテイメント(同「パズル&ドラゴンズ」)は両社とも減収減益が止まりません。

 ただし、この中で堅調に伸びているスマホゲームがあります。バンダイナムコホールディングスアカツキの協業による「ドラゴンボールZドッカンバトル」(配信はバンダイナムコホールディングス、開発、運営はアカツキ)です。国内版は2015年1~2月に、海外版は2015年7月に配信開始されました。全世界で2億5,000万ダウンロードの実績を持つスマホゲームであり、ドラゴンボールの熱心なファンがプレイしているゲームです。また、日本のスマホゲームとしては珍しく、課金売上高の海外比率が高いゲームです。ドラゴンボールが世界的なキャラクターであることから、海外にもゲームプレイヤーを多く抱えるゲームなのです。

 2019年は2月に配信開始4周年イベントがあります(毎年2月に国内配信の周年イベントが、7月に海外配信の周年イベントがあります)。来年2月のイベントは、アニメ「ドラゴンボール超 ブロリー」が2018年12月14日から劇場公開されたため(製作は東映アニメーション)、従来よりも盛り上がる可能性があります。

 また、バンダイナムコホールディングス、アカツキともに、多角化を志向している会社です。バンダイナムコホールディングスは、スマホゲーム、家庭用ゲーム、業務用ゲーム、アミューズメント施設、アニメ制作、アニメ音楽に展開しています。最近流行りの2.5次元にも積極的な会社で、アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の登場人物の声優さん達のユニット「Aqours(アクア)」が11月に行った東京ドーム2Daysのライブは大成功しました。

 アカツキは、横浜中央郵便局別館の再開発に参加しているほか、スペインのeスポーツリーグ運営会社に出資し、eスポーツに参入しました。

 バンダイナムコホールディングス、アカツキともに中長期で有望銘柄と思われます。

 

3.音楽市場の動き-ライブブームが続く-

 音楽市場では世界的にライブブームが続いており、日本も例外ではありません。首都圏で会場不足問題が続いており、2019年も9月から日本武道館が改修のために1年以上の休館に入る予定ですが、会場不足の問題を、公演数の増加(平日公演、地方公演の増加)、動員数の増加、チケット代の上昇とグッズ販売の増加によってクリアし、ライブ売上高は増加傾向にあります(グラフ5、6、7)。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックが終わった後は、会場不足問題がある程度緩和されるため、ライブブームは長期化すると予想されます。

 ライブブームの恩恵を受けている上場企業は、ソニー、エイベックスのような所属アーティストのライブ興業権を持っているレコード会社、アミューズのような音楽に強い芸能プロダクションです。

 ソニーは、「乃木坂46」「欅坂46」「西野カナ」など大型ライブに強いアーティストが所属していることが強みです(「乃木坂46」「欅坂46」のアーティスト・マネジメントは、ソニー・ミュージックと「乃木坂46」「欅坂46」の総合プロデューサーである秋元康氏の事務所との共同マネジメント)。

 エイベックスも「東方神起」「BIGBANG」(現在は兵役中。全員が兵役明けするのは推定で2020年夏以降)、「AAA」など動員力の大きいアーティストを抱えています。

 アミューズは、「福山雅治」「サザンオールスターズ」「Perfume」「ONE OK ROCK」などを抱えています。「サザンオールスターズ」は2019年春に結成40周年ツアーを行う予定です。

 エイベックス、アミューズは多角化にも取り組んでいます。エイベックスは単発の取り組みですが、演劇(ミュージカル)の製作とプロデュースを行っています。宮本亜門氏演出で2019年3月に公演予定(再演)のミュージカル「プリシラ」で、東宝とともにエイベックスが製作に参加しています。ドラァグクイーンをテーマにしたミュージカルで、山崎育三郎、陣内孝則のほか、マルチタレントのオナン・スペルマーメイドが出演します。

 またアミューズは、世界最大規模のeスポーツチーム「チームリキッド」と戦略的パートナーシップ契約を結びました。まず、同チーム所属の日本人選手2名の日本におけるマネジメント業務を行います。

 ライブブームでは、もう一社重要な会社があります。ヒビノです。コンサートホールへの音響、映像機器の販売で国内トップ(推定シェア約30%)の会社です。また、ライブ開催時に使う大型LEDパネル、各種音響機器、映像機器の貸し出しと運営を行っており、この事業が収益源になっています(大型ライブではアーティストが良く見えないため、会場に大型LEDパネルを複数台設置して、アーティストの映像を映す。あるいは演出に使う)。

 ヒビノの主要顧客を見ると、音響・映像機器の販売では国内の主要なコンサートホール、テレビ、ラジオの放送局などが顧客になります。音響機器の貸し出しと運営(コンサート音響部門)は、「B'z」「関ジャニ∞」「ONE OK ROCK」など、映像機器の貸し出しと運営(イベント映像部門)は、「乃木坂46」「Kis-My-Ft2」など、大物アーティストのプロモーターが顧客になります。音響、映像ともに演出にかかわる重要分野であり質が重視されるため、継続取引になる顧客が多くなります。

 今後を展望すると、ライブブームに加えて東京オリンピック・パラリンピックを控えてスポーツイベントが増加すると予想されます。2020年になると、オリンピック関連の音響・映像機器の販売と、音響・映像機器の貸し出し、運営の増加が予想されます。

 ヒビノ、エイベックス、アミューズには、中長期的な投資妙味があると思われます。

グラフ5 日本の音楽産業:1

注:音楽ソフト生産高、音楽配信売上高、コンサート・ライブ売上高の合計、暦年
単位:百万円

グラフ6 日本の音楽産業:2

単位:百万円、暦年
出所:音楽ソフト生産高、音楽配信売上高は日本レコード協会、コンサート・ライブ売上高はコンサートプロモーターズ協会

グラフ7 ライブの年間公演数と動員数

出所:コンサートプロモーターズ協会より楽天証券作成