為替DI:円高見通しが減る、12月は円安を期待? 

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスのときは「円の先安」見通し、マイナスのときは「円の先高」見通しを意味します。プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強まっていることを示しています。[図-1]

 

「12月のドル/円は円安、円高のどちらへ動くと思いますか?」という質問に対して、10月末の水準(113.55円)によりも、12月は「円安になる」と答えた投資家は全体の約33%を占めました。反対に「円高になる」は最も少ない約27%、残りの約40%は「動かない(わからない)」という回答でした。10月末に比べると円高派が9.9ポイントも減ったのが今回の特徴です。[図-2]

 

 円安見通しから円高見通しを引いたDIは5.92で、1カ月で15ポイント以上プラスに振れました(前回▲9.50)。個人投資家の円高見通しが和らいだことが明らかです。

 FRBのパウエル議長は、10月の講演では、「米経済の見通しは極めてポジティブ」と発言。金融政策に関しては「まだ中立的な金利水準には遠い(したがって利上げ余地はまだ十分にある)」との見解を示しました。そしてドル/円は、1年ぶり以上の高値となる114.55円まで上昇しました。

 ところが今月になってドル高への安心感が揺らぎはじめたのです。そしてパウエル議長が11月に行った講演では、FRBの現在の政策金利は、中立水準よりかなり下、から「わずかに下回るレベル」と10月の見解を修正したことで、これは利上げ休止のサインではないかと皆が浮足立ちました。

 パウエル議長の発言は、意図せずマーケットに過剰な期待感を抱かせてしまったことの反省であって、米経済の成長見通しを後退させたわけではない、という解釈に落ち着きました。しかし、クラリダFRB副議長は「米国の金融政策は世界経済の動きを考慮していく必要がある」とも指摘しています。グローバルで景気が減速する中で、米国だけが利上げを続けることはないのです。

 FRBは、来年も四半期に1回、計4回利上げするというのが現在のメインシナリオになっています。ただし、強い米景気に見合った金利を当てはめるというより、すでに過熱状態となっている経済がはじけてしまわないように利上げする、というのがFRBの見解。その辺のニュアンスにマーケットとの間で微妙な温度差があるように感じます。

 いずれにしても、米国が永遠に利上げを続けるわけではありません。サイクルとしてはすでに終了に近付いているのではないでしょうか。パウエル議長は、今後の利上げは「経済データ次第」と述べています。