長短金利逆転はリセッション入りの前触れか

 12月4日の市場では、ダウ平均株価は約800ドルの急落となりました。米国債3年物の利回りが高く、5年物の利回りが低くなるという、長短金利の逆転が11年ぶりに発生。これが将来のリセッション(景気後退)入りのシグナルととらえられ、ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領追悼で翌日の市場が休場だったこともダウ急落を後押ししました。リセッションによって貸し出しがこげ付いたり、長短金利差の縮小、逆転で金利収入が確保できなくなるとの懸念から、特に銀行株セクターは軒並み5%近く下落しました。

 しかし、そもそもこの長短金利逆転、本当にリセッション入りを占うにあたって正しいシグナルなのでしょうか。

 

米国長短金利逆転と景気後退のメカニズムとは?

 確かに過去50年を振り返ると、米国債2年物と10年物の利回りの逆転が起きると、しばらくしてリセッションが訪れるというパターンが繰り返されています。ただ私はこういうパターンが観測できるとき、単に「長短金利逆転=リセッション」と決め付けるのではなく、なぜ長短金利が逆転するとリセッションが訪れるのか、きちんと理解することの方が重要だと考えています。

 それでは長短金利が逆転するとなぜリセッションが訪れるのか? それはズバリ「銀行が貸し出しをできなくなる=経済に血液が回らなくなる」からです。

 ご存じの通り銀行というのは基本的に、短期の資金を調達して長期で貸し出すビジネスをしています。通常、短期金利が長期金利よりも低いので、これが銀行の利益につながります。しかし、短期金利が上昇し長期金利との差が縮小すると、銀行は貸しても利益が出ないので、貸し出しを控えるようになります。

 前段に長短の利回りが逆転すると「しばらくして」リセッションが訪れると申し上げましたが、こうして銀行全体に貸し出しを控える動きが広がり、それが経済に影響を与えるようになるのに時間がかかるので、リセッションは「しばらくして」訪れるようになるというわけです。

 これを理解した上で、米国債3年物と5年物国債の利回りや2年物国債と10年物国債の利回りが本当にリセッション入りのシグナルとなるかを考えてみたいと思います。