原油マーケットレビュー

 前週のNY原油相場は続落。需給緩和観測が強まり、売り優勢の地合いを継続した。節目の60ドルを割り込み、連日下値を切り下げる展開となり、過去最長の12営業日続落。WTI期近12月限は一時54.75ドルまで下落し、期近ベースとしては約1年ぶりの安値を示現した。

 イラン産原油の禁輸措置に備え、イラン以外の主要産油国が増産態勢に入るなか、米国は8カ国に対して禁輸の適用除外を認めた。これを受け、供給量がこれまで以上に増えることが見込まれる。これに対し、石油輸出国機構(OPEC)らは減産の可能性を示唆した。OPEC加盟国および非加盟国からなる共同閣僚監視委員会(JMMC)が開かれ石油市場について協議、世界的な景気減速に伴い供給が需要を上回るとの見通しのもと、来年は減産が必要との認識で一致した。減産緩和から増産へシフトしつつあるなか、再度減産に動くのではとの見方が広がった。

 しかし、これに対してトランプ米大統領は、サウジとOPECは減産しないことを願うとツイート、原油価格は供給量に基づいてもっと引き下げられるべきと言及した。原油価格上昇を招く可能性のある減産方針に対して牽制する発言をしたことで、市場は売りムードを継続する格好となった。前々週の米エネルギー情報局(EIA)の月報に続き、この週はOPEC、国際エネルギー機関(IEA)から月報が発表されたが、ともに需給が緩むとの見通しが示されたことも圧迫要因に。米国を筆頭にOPEC非加盟国の産油量は増える見通しで、一方需要面においては、景気減速に伴う中国需要の低下などが懸念され、供給が需要を大きく上回るとの見通し。

 これら弱気な要因を背景に売りが続き、断続的に下値を切り下げた。下げの道中、米株式市場が大きく下落したことで投資家心理が悪化したことや、節目を割り込んだことによる投げも誘われた。売りが売りを呼びパニック売りの相場展開となり、一時55ドルを割り込むに至った。

 下値指向の流れが続くかに思われたが、週後半は戻す場面も見られた。OPECらが来年に減産を検討しているとの報が期待感につながった。下げ圧力が強い局面では、トランプ米大統領の牽制発言により打ち消されたこの材料が、週後半に改めて買い材料視された。

 次回12月に開催されるOPEC総会では、JMMCの見解が議題に上がり、再度協調減産を決める可能性がある。足元の高水準な在庫、潤沢な供給を踏まえると、日量100万バレル以上の減産合意となる可能性もあり、このことについて検討しているとの報も入った。一部では最大で日量140万バレルの減産検討となるのではとの声も聞かれた。およそ1年ぶりの安値を付けた後ということもあり、短期的な戻りを見込んだ買戻しや押し目買いもあったとみられ、連続安は12営業日で止まった。

 ただし、底打ちしたとの判断は早計だろう。市場では次回総会の減産を買い材料視したが、足元の供給に余剰感があるため、急速に需給が引き締まることは見込み難い。特に米国の原油在庫が8週連続で増加、さらにこの週は1000万バレルを超える増加となったが、売り警戒が強まったため、さほど弱材料視されなかった。これが改めて弱気を促す材料として取り上げられることは十分あり得るだろう。

 また、売られ過ぎからの調整の戻りに対し、後付けの理由で減産観測が買い材料視された可能性も拭い切れない。売りが続いたことで下げ過ぎ感は否めず、相応の調整高も想定されるが、投げが出尽くしたとは判断し難い。需給要因を勘案すると、もう一段の下落の可能性もある。

 

 

 

今週の予想

  • WTI    やや弱め 54.00-58.00ドル
  • BRENT    やや弱め 64.00-68.00ドル