本人の希望にそった形では働けていない可能性が

 女性就業率は増加していますが、望んで就業しているかどうかは、議論の余地があるように思います。男女ともに共通しますが、たとえば、本当は学業に専念したいのに、学費の捻出や家計の補助、あるいは仕送りでは足りない生活費を補うためにアルバイトをする学生は、非労働力人口ではなく就業者に含まれます。就職活動では、セミナーや会社説明会、無給のインターン、就職協定に参加していない企業も増えているため、事実上、大学3年生の夏休み頃から始まるという長期化傾向にあり、その分、交通費などの費用が多くかかります。

 また、世帯主の手取り給与が思いの外、増えていないという事情もあります。高齢化を背景に医療費・介護費が増加しているため、保険料率は増加傾向にあり、その分だけ手取り給与が減ります。人口動態からみても、今後もこの傾向は続くと思われます。企業の業績改善に比べると給与は抑制傾向にありますし、給与の増加率が物価上昇率を下回っている家計では、実質的に給与が目減りしていることになります。家計の足しにするため、仕方なくアルバイトを始めたという方も多いでしょう。

 労働力調査の詳細集計では「現職の雇用形態についた主な理由別 非正規の職員・従業員数」が公表されています。男女ともに「自分の都合のよい時間帯に働きたいから」が1位ですが、女性の2位、3位は、「家計の補助・学費などを得たいから」「家事・育児・介護等と両立しやすいから」が続いており、自己実現というよりは、家庭の事情で仕事を選ばざるを得ない状況が統計に表れています。

現職の雇用形態についた主な理由とは

データ出所:総務省統計局「労働力調査(詳細)」をもとに筆者にて作成