米国よりも高い日本の女性就業率7割。今後、求められるスキルとは?

 11月23日は勤労感謝の日。かつては一家の大黒柱として男性が働き、女性が専業主婦として家事を担うという家庭が多くありました。最近ではこうした家庭は減ってきており、2018年8月の労働力調査において、15~64歳の女性就業率が70.0%と初めて7割台に達しました。日本経済新聞やNHKなどの報道で目にした方もいらっしゃるかと思います。10月30日に公表された最新のデータ(9月調査)でも、女性就業率は70.3と緩やかに上昇しています。

女性就業率の定義から見えてくるもの

 労働統計の構造は少し複雑です。総務省統計局が公表している労働力調査の解説を参考に、用語の定義を確認してみましょう。就業率とは15歳以上の人口に占める就業者の割合です。15~64歳の女性就業率の場合は、15~64歳の女性人口に占める就業者の割合になります。完全失業者や非労働力人口(通学、家事、その他(高齢者など))を除いた割合が7割なので、かなり高い割合と言って良いと思います。

 日本の15~64歳の女性就業率を米国(16~64歳)と比較すると、最新の2018年9月調査では、日本70.3%(総務省統計局調べ)、米国68.7%(アメリカ合衆国労働統計局調べ)と、実は日本の女性就業率は米国よりも高くなっています。かつては米国の女性就業率の方が高かったのですが、2013年頃から日本が逆転しており、その傾向が続いています。少し意外ですよね。

 日本の女性就業率が向上した背景には、複数の要因が絡み合っています。

 労働力調査の「就業状態」とは、月末1週間に仕事をしたかどうかで判断されます。フルタイム労働者だけではなく、1時間でもアルバイトをすれば、学生や主婦でも就業者に該当するので、少子高齢化による労働需要の増加と相まって、就業者の増加に寄与しています。

 2016年のデータになりますが、国際比較を見ると、失業対策でワークシェアの制度が整備されているヨーロッパ諸国と並んで、日本人女性の短時間労働者(労働時間が週30時間未満の者)の割合は高く、米国の2倍以上の割合となっています。過去のデータを見ても、短時間労働者の割合が増加傾向にあります。

 休業者が就業者に含まれることも女性就業率の向上に寄与している可能性があります。産休・育休期間中でも、職場からの給料・賃金や雇用保険に基づく給付金が支払われている場合は休業者になります。少しずつではありますが、保育園数も増加していますし、社内規定の改定で育休期間を延長している企業も見受けられます。

 こうした慶事での休業であれば良いのですが、病気や怪我による望まない形での休業者も就業者に含まれます。長時間労働やパワハラ、セクハラといった劣悪な労働環境に起因する心身の疾病患者数は高い水準にありますが、日本の解雇法制は労働者の雇用を守ることに重きを置いているため、他国では解雇されかねない状態でも、休業者、あるいは社内失業でも従業者や就業者として計上されることがあります。

 人手不足対応という企業側の都合や制度の影響もありますが、労働力を供給する女性側にも働くための理由があり、就業率の上昇に繋がっていそうです。