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米国よりも高い日本の女性就業率は7割に。今後、求められるスキルとは?
鈴木 卓実
数字でわかる。経済ことはじめ
元日銀マンが、世間で話題の数字や金融の分析データなどを織り交ぜながら、数字でわかる「経済ことはじめ」を教えます。 マクロな視点から日本人の経済・金融のリテラシー向上を目指して、初…

米国よりも高い日本の女性就業率は7割に。今後、求められるスキルとは?

NEW 2018/11/7
米国よりも高い日本の女性就業率7割。今後、求められるスキルとは?
就業率の定義から見えてくるもの
本人の希望にそった形では働けていない可能性が
現職の雇用形態についた主な理由とは 
女性が不利な現状を打開するには?
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米国よりも高い日本の女性就業率7割。今後、求められるスキルとは?

 11月23日は勤労感謝の日。かつては一家の大黒柱として男性が働き、女性が専業主婦として家事を担うという家庭が多くありました。最近ではこうした家庭は減ってきており、2018年8月の労働力調査において、15~64歳の女性就業率が70.0%と初めて7割台に達しました。日本経済新聞やNHKなどの報道で目にした方もいらっしゃるかと思います。10月30日に公表された最新のデータ(9月調査)でも、女性就業率は70.3と緩やかに上昇しています。

女性就業率の定義から見えてくるもの

 労働統計の構造は少し複雑です。総務省統計局が公表している労働力調査の解説を参考に、用語の定義を確認してみましょう。就業率とは15歳以上の人口に占める就業者の割合です。15~64歳の女性就業率の場合は、15~64歳の女性人口に占める就業者の割合になります。完全失業者や非労働力人口(通学、家事、その他(高齢者など))を除いた割合が7割なので、かなり高い割合と言って良いと思います。

 日本の15~64歳の女性就業率を米国(16~64歳)と比較すると、最新の2018年9月調査では、日本70.3%(総務省統計局調べ)、米国68.7%(アメリカ合衆国労働統計局調べ)と、実は日本の女性就業率は米国よりも高くなっています。かつては米国の女性就業率の方が高かったのですが、2013年頃から日本が逆転しており、その傾向が続いています。少し意外ですよね。

 日本の女性就業率が向上した背景には、複数の要因が絡み合っています。

 労働力調査の「就業状態」とは、月末1週間に仕事をしたかどうかで判断されます。フルタイム労働者だけではなく、1時間でもアルバイトをすれば、学生や主婦でも就業者に該当するので、少子高齢化による労働需要の増加と相まって、就業者の増加に寄与しています。

 2016年のデータになりますが、国際比較を見ると、失業対策でワークシェアの制度が整備されているヨーロッパ諸国と並んで、日本人女性の短時間労働者(労働時間が週30時間未満の者)の割合は高く、米国の2倍以上の割合となっています。過去のデータを見ても、短時間労働者の割合が増加傾向にあります。

 休業者が就業者に含まれることも女性就業率の向上に寄与している可能性があります。産休・育休期間中でも、職場からの給料・賃金や雇用保険に基づく給付金が支払われている場合は休業者になります。少しずつではありますが、保育園数も増加していますし、社内規定の改定で育休期間を延長している企業も見受けられます。

 こうした慶事での休業であれば良いのですが、病気や怪我による望まない形での休業者も就業者に含まれます。長時間労働やパワハラ、セクハラといった劣悪な労働環境に起因する心身の疾病患者数は高い水準にありますが、日本の解雇法制は労働者の雇用を守ることに重きを置いているため、他国では解雇されかねない状態でも、休業者、あるいは社内失業でも従業者や就業者として計上されることがあります。

 人手不足対応という企業側の都合や制度の影響もありますが、労働力を供給する女性側にも働くための理由があり、就業率の上昇に繋がっていそうです。
 

本人の希望にそった形では働けていない可能性が

 女性就業率は増加していますが、望んで就業しているかどうかは、議論の余地があるように思います。男女ともに共通しますが、たとえば、本当は学業に専念したいのに、学費の捻出や家計の補助、あるいは仕送りでは足りない生活費を補うためにアルバイトをする学生は、非労働力人口ではなく就業者に含まれます。就職活動では、セミナーや会社説明会、無給のインターン、就職協定に参加していない企業も増えているため、事実上、大学3年生の夏休み頃から始まるという長期化傾向にあり、その分、交通費などの費用が多くかかります。

 また、世帯主の手取り給与が思いの外、増えていないという事情もあります。高齢化を背景に医療費・介護費が増加しているため、保険料率は増加傾向にあり、その分だけ手取り給与が減ります。人口動態からみても、今後もこの傾向は続くと思われます。企業の業績改善に比べると給与は抑制傾向にありますし、給与の増加率が物価上昇率を下回っている家計では、実質的に給与が目減りしていることになります。家計の足しにするため、仕方なくアルバイトを始めたという方も多いでしょう。

 労働力調査の詳細集計では「現職の雇用形態についた主な理由別 非正規の職員・従業員数」が公表されています。男女ともに「自分の都合のよい時間帯に働きたいから」が1位ですが、女性の2位、3位は、「家計の補助・学費などを得たいから」「家事・育児・介護等と両立しやすいから」が続いており、自己実現というよりは、家庭の事情で仕事を選ばざるを得ない状況が統計に表れています。

現職の雇用形態についた主な理由とは

データ出所:総務省統計局「労働力調査(詳細)」をもとに筆者にて作成


女性が不利な現状を打開するには?

​データ出所:労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2018」をもとに筆者にて作成

 

 日本の場合、女性の管理職が少ないことも特徴的です。欧米諸国では30%弱~40%台前半の国が多いですが、日本では10%台前半です。経済発展の状況や女性就業率から見て、女性管理職の割合が少ないと言えるでしょう。

 日本の雇用制度は独特だという指摘があります。大卒総合職で採用された場合、卒業時点(採用段階)でのスキルを評価されるというよりも、部署をまたいだ人事異動を数年サイクルでこなしつつ、「自分の畑(専門分野)」を作りながら出世の階段を上るというポテンシャル採用の性格が強く、国内外の転勤を含む無限定の雇用契約になります。

 部署や勤務地の希望を言う機会はあるかもしれませんが、会社の人事発令を拒むことは極めて難しいので、総合職の夫婦が共働きする場合、転勤により同一世帯で暮らすことができないというケースが往々にして生じます。このような状況で育児や介護が生じると、どちらかがキャリアを断念せざるを得なくなることが多々あります。

 古い大企業ほど、日本のビジネス慣行が残っているようです。仕事を進めるにはキーパーソンに根回しをすることが重要になりますが、誰にどのように話を持っていくかといった知識はマニュアル化されておらず、同じ会社に長年勤める中で、自然と身につく類のものです。転職してしまうと利用できなくなる知識・情報も多いため、管理職として活躍するためには転職は不利な面があります。

 女性の大学進学率は高くなっても、理工系を専攻する割合が低い状況が続いています。求められる教育に、STEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics、科学・技術・工学・数学)と言われて久しいですが、リケジョ(理系女子)という言葉がなくならないように、まだまだ少数派です。生涯、正社員として働くのであれば、大学(理系の多くの場合、修士課程)を卒業するまでの学費や苦労も元が取れますが、現状では、割に合わない、と考える方も多いと思います。

 もっとも、明るい兆しも見え始めています。たとえば、学び直しやスキル獲得の需要を反映して、社会人大学院入学者数(修士課程)の男女比は、ほぼ拮抗しています(文部科学省「学校基本調査」より)。また、家事代行やベビーシッターのニーズが急速に増えており、家事・育児負担を減らすようなサービスの供給増加が期待されます。

 テクノロジーの面では、IT技術の進展で新しい働き方を選びやすくなっているという動きがあります。ITにはコミュニケーションを進展させる効果があり、一般的に言ってコミュニケーションは男性よりも女性が得意です。

 最近では、学生時代の成績や知識といった認知的スキルだけではなく、社会的に成功する条件として「性格スキル」という非認知的スキルに注目が集まっています。ビッグ・ファイブと言われる5つの能力があり、人事を重視する企業では

1.開放性(好奇心、審美眼など)
2.真面目さ
3.外向性(積極性、社交性など)
4.協調性
5.精神的安定性


を評価し、高めていくような社員教育が行われています。こうした能力の多くの点で、女性に強みがありそうです。

『性格スキル』(鶴光太郎著/2018年祥伝社刊)

 ビッグ・ファイブについては、『性格スキル』(鶴光太郎著/2018年祥伝社刊)に分かりやすい解説があります。性格スキルは幼児期の体験だけではなく、大人になってからも伸ばせることが分かっています。
 元々は2000年にノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のヘックマン教授の理論ですが、経済学にありがちな難解さはなく、地に足の着いた身近な話題が豊富にあり、キャリアを考える上でとても参考になります。

  ビッグ・ファイブという概念があり、それに基づく評価軸があるということを意識するだけでも、性格スキルを伸ばす役に立つと思います。

 変化の激しい時代、これまでの価値観や慣習に固執するとビジネスチャンスを逃してしまいます。個人だけではなく、企業側にも意識改革が必要でしょう。労働観やキャリアパスの多様性が生産性の向上に繋がるのではないでしょうか。そこに少子高齢化による経済縮小を打開するヒントがあるように思えてなりません。

◎データ元

日本の女性就業率 3ページ上部に掲載

米国の女性就業率 17ページ、Table A-6 Women,16 to 64 years の Employment-population ratioに掲載

現職の雇用形態についた主な理由別非正規の職員・従業員数 2017年の割合

短時間労働の割合 118ページに掲載

女性管理職の割合 89ページに掲載

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