10月29日~11月2日 原油マーケットレビュー

 前週のNY原油相場は続落。イラン産原油の禁輸措置を控えるなか、供給増加による需給緩和への懸念が広がり、売りが先行する展開となった。直近安値を更新したことで、ロスカット絡みの売りを巻き込み、WTI期近12月限は一時62.63ドルとおよそ半年ぶりの安値を付けた。

 需要面、供給面ともに売り圧力がかかった。イラン産原油の輸出停止により、市場への原油供給が減少することが懸念されていたが、サウジアラビア、ロシア、米国の供給量が潤沢であり、先行き安定した供給が見込まれる。一部調査機関のデータによると、この3カ国の9月の産油量は記録的な高水準となった模様で、10月に関してもロシアの産油量はソ連崩壊後最高水準へと膨らんだとみられる。同国のノバク・エネルギー相は、産油量を凍結、削減する理由はないとし、今後も高水準の生産レベルを維持する意向を示している。米国の産油量においても過去最高を更新しており、リグ稼働の状況等からはさらに増える見通し。

 また、米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間石油統計では、原油在庫が6週連続の積み増しとなったことが明らかとなり、足元の供給が潤沢であることが示された。製油所の稼働率は年末に向けて上がる傾向はあるが、現行の稼働水準と余力、さらに生産動向を勘案すると、在庫は取り崩しよりも積み増しとなりやすいだろう。しかも、この週は輸入が減り、輸出が増えたにもかかわらず在庫は増加していることからも、在庫増加傾向は継続する可能性が高いとみる。戦略石油備蓄(SPR)の市場放出も重なり、商業用の原油在庫はもう一段積み上がる可能性がある。米国のみならず世界的に在庫に余剰感が出始めており、石油輸出国機構(OPEC)加盟国および非加盟国からなる共同閣僚監視委員会(JMMC)は、これに対して生産削減を再検討する可能性があると警告している。

 一方、需要面においても不安要素が多い。トランプ米大統領が対中通商に関して素晴らしい合意に至るとの見解を示したことで、市場心理が幾分か改善に向かったが、依然として米中貿易摩擦への懸念は根強くあり、景気減速、ひいては原油需要の減退につながるとの見方がある。また、国際エネルギー機関(IEA)事務局長は、先行きの原油需要に対する懸念を示している。米株式市場の戻りはプラス要因ではあるが、外為市場はややドル高寄りであるため、原油市場への影響は打ち消されている。

 概ね供給面の弱さを露呈しており、市場のセンチメントは急速に弱気へとシフトしている。値を崩すことで節目を割り込み、さらに投資間心理が冷えるといった下げの循環を繰り返した。6月および8月の下げ局面の安値を割り込んだことでさらなる投げが誘われており、目先は3月から4月に揉み合った62ドル水準が視野に入る。それをさらに下抜くようだと、節目の60ドルまでの下げは速い。米国の対イラン制裁再発動を控えるなか、週末には強硬姿勢にあった米国が、イラン産原油の禁輸措置の適用除外を認める方針を明らかにしており、需給緩和感が一段と強まりやすい。60ドル割れともなれば、売りが売りを呼ぶ展開から大幅下落も想定される。

 

今週の予想

  • WTI    やや弱め 60.00-65.00ドル
  • BRENT    やや弱め 70.00-75.00ドル