近年、政治が為替を動かす重要な要因となりつつある

 ドル円は、日米金利差だけで動いているわけではありません。アベノミクス開始以来、政治圧力に振り回されています。

 米国が円安を容認している間は、円安が進みやすい一方、米国から円安批判が出ると、円高が進みやすくなります。為替に影響を与えた政治圧力を含めて、2012年以降のドル円の動きを再度、解説します。

(再掲)ドル円為替レートと、日米2年債利回りの差:2008年1月~2018年10月16日

注:楽天証券経済研究所が作成

 

【1】2008~2011年

 日米金利差の縮小にしたがって、円高(ドル安)が進みました。

【2】2012~2014年

 米国が円安を容認していたので、日米金利差では説明できないほど、大幅な円安が進みました。

【3】2015~2016年

 2016年には、米大統領選キャンペーンで共和党候補だったドナルド・トランプ氏(現大統領)と、民主党候補だったヒラリー・クリントン氏が、ともに円安を批判したことをきっかけに、円高が進みました。トランプ大統領が、日本の対米黒字を問題視していることも、潜在的な円高圧力となりました。朝鮮半島有事リスクの高まりも、円高要因となりました。

【4】2017~2018年

 ドル円はレンジ相場となりました。米FRBが利上げを続けたことが円安要因ですが、貿易戦争の不安が高まったことが、円高要因となりました。

 

為替は今後、円高・円安どちらへ進むか

 現時点で、米FRBが12月に再度利上げするのは、ほぼ確実と考えられています。来年以降も、利上げを続ける方針です。米利上げが続き、日米金利差がさらに拡大するならば、円安が進むと考えられます。

 ただし、世界的な株安が長引き、トランプ大統領がFRB批判を先鋭化することによって、12月の米利上げが無いとの見方が広がると、円高圧力が強まります。

 結論のない話で恐縮ですが、円安材料と円高材料が両方ある状況ですから、今すぐ、円高または円安どちらかのトレンドが出る可能性は低いと考えています。

 

 

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