8月の雇用統計も、中身を見ていくと気になる点があります。特に、これまで順調に増え続けていた製造業部門の雇用者数が▲0.3万人に落ち込んでいることは心配です。貿易戦争の影響が表れたという指摘もあります。雇用減が一過性なのか、それともさらに広がるのか、今回の雇用統計では特にチェックする必要があるでしょう。

 また平均労働賃金の伸び率が2011年以来の大きさになったことについては、(低賃金の労働者が一時的に多く離職したために、平均賃金が上昇したように見える)特殊要因によるもので、構造的変化ではないという冷めた分析も出ています。

 

 FRBは12月に今年4回目の利上げを実施するとみられています。FOMC後のパウエルFRB議長の発言を聞いて、マーケットはさらに確信を強めたようです。そしてドルが買われ、ドル/円は年初来高値を更新しました。

 しかし、利上げは雇用市場と米国経済がしっかりしていることが前提。それが崩れるサインが見つかったなら、ドル高相場見直しの大型調整が入るリスクもあります。

 雇用統計で予想を下回る結果になれば、利上げに不満なトランプ大統領にとっては、FRBに政策を見直させる格好の機会になります。FRBとしても減速の責任を押し付けられ、米国民の批判を浴びることだけは避けたいと思っていることでしょう。12月の利上げは思っているほど確実ではないかもしれません。