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『ハゲタカ』著者・真山仁氏インタビュー(後編)情報は発信源を疑え!陳腐化しない情報と仕事の作り方
トウシル編集チーム
特集記事

『ハゲタカ』著者・真山仁氏インタビュー(後編)情報は発信源を疑え!陳腐化しない情報と仕事の作り方

2018/8/30
全3回インタビューのラストは、真山仁さんが、執筆の着想を得るヒントや、音楽を使って複数のタスクをこなす方法など、仕事に役立つヒントをトウシル読者へ語っていただきました。
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『ハゲタカ』著者・真山仁氏インタビュー(全3回):前編中編後編

 

リサーチから作品まで3年かかる!ヒット作のヒントの捕まえ方

2018年7月下旬、真山仁氏の事務所にてお話を伺いました

 作品の着想は、新聞の大きな記事やポータルサイトのトップニュースよりは、小さな平記事から得ることが多々あります。小さな兆しでも、これからの社会に影響する印象がある記事に注目しています。

 短編集の『プライド』(2010年発行、新潮文庫)の「絹の道」という短編。着想は、ある日の新聞の社説で読んだ、養蚕農家の減少という記事です。1930年代には、日本は世界一の絹の輸出国でした。養蚕農家は、何万軒もあったことでしょう。ところが、今では国内の養蚕農家は3百数十軒となり、養蚕事業従事者の平均年齢は80歳近いとか。「日本から養蚕農家がなくなっていくのでは?」という驚きを感じ、そこから調べ始めました。

 たとえば、和服で使用する絹は日本製のイメージがありますが、調べを進めると、日本原産の絹の生産量は、1年間に着物10着できるかどうか。ほとんどが輸入した生糸(絹の糸)で作っているのです。

新聞の社説記事からもテーマのヒントが

 養蚕農家が減っているのに、成人式の振り袖や、和服が高騰しているイメージがないのは、中国やベトナムなどの安価な生糸を輸入して日本で加工しているからです。JIS規格のルールでは、最後の工程が日本であれば、日本製となりますので、生糸の原産国は問われないことになります。

 日本人に身近な“着物”の産業構造の変化は、目に見えないところで大きく動いていた、とわかりました。

 このように、気になった新聞記事のネット検索から、専門書の要約などを読んで、現実的に何が問題で、未来はどうなっていくのかを調べていきます。調べた事実から物語へつなげる確信を得ると、本格的に調査と取材を始めます。

 “これでやれる”という判断ポイントは、「取り扱うテーマが3年経っても新鮮に感じられるかどうか」ということ。というのも、本格的な調査や取材に1年以上かかり、執筆にも1年ほどかかります。校正作業などを経て、3年後に本になった時にも、世間にとって斬新で興味深いテーマであるかどうかを基準に、取り組むべきか判断しています。


今や金融業界入門者必読の就活本、ハゲタカシリーズ

シリーズ1作目を出版した当時は、「賞味期限は1年だね」と、少々辛口なご意見をいただきました

『ハゲタカ』シリーズの場合は、他の小説より少し短いスパンで書くことができます。中心となる登場人物が、おおむね固定できていますから。また、『ハゲタカ』シリーズでは章ごとに日付を入れています。そのタイミングだったからこの取引が成立したという時事要因も大きな意味があるわけです。

 ところが、シリーズ1作目を出版した当時、編集者の方々からは「日付を入れると、内容がすぐ古くなる」とか、「賞味期限は1年だね」と、少々辛口なご意見をいただきましたが、おかげさまで生き残ってくれました。結果的に、一種の現代歴史小説のような存在になっているようです。

 バブル崩壊と言われても、今となっては何が起きたかもわからない。けど、小説を読むことで背景がつかめます。また、残念ですが『ハゲタカ』で描いているような企業の問題は、今現在でも引き続き起きています。

 歴史小説は古い時代を描いていますが、普遍的な法則が書かれていれば、それはそれで現代社会でも違和感なく受け入れられます。『ハゲタカ』は4月になると就活の本として売れています。とくに金融業界で新人のための必読書といわれているそうです(笑)。

 

真山流仕事術とは?音楽で脳内を切り替えることで、複数タスクが可能に!

映画のDVDは1,000枚以上に

 現在、複数の連載執筆を同時進行で抱えています。私の場合、このような複数タスクを切り替えるために、音楽の力を活用しています。主に聴いているのは映画のサントラ盤です。映画がものすごく好きで、映画のDVDを1,000枚以上持っています。新しく小説を書き始める前には小説の世界観に合った映画のサントラ盤を買い込み、BGMとして資料を読み込む段階から聴き続けます。

 ハゲタカシリーズの『グリード』『シンドローム』を書く際は、バットマンの『ダークナイト・ライジング』のサントラ盤を聴いていました。作曲はハンス・ジマーで、曲のもつ高揚感がハゲタカの世界観にすごくマッチするのです。

 今日はハゲタカを書くぞという日は、仕事場に入ると『ダークナイト・ライジング』を流します。

 また、夕方から夜に散歩をするのですが、その時もその日執筆中の小説用の曲を聴きながらウォーキングします。歩いているうちに、課題だった箇所のアイデアが浮かぶことも。このように散歩で得たアイデアは山のようにあります。音楽のおかげで、頭の中が各作品の世界に入り込み、執筆がはかどるのです。

 執筆作業から、一日の途中で別の小説の校正作業へ切り替えるときも音楽の力が有効です。執筆が終わったら、曲を変えます。すると、頭の中で音楽と共に場面が入れ替わり、次の小説の世界へすんなり移行できるのです。

 具体的には小説の世界観に合った音楽が流れ始めると、自分の頭の中に3Dのスクリーンが立ち上がり、小説の場面が映画を観るかのように映し出されるイメージです。その頭の中の場面を小説として書き出していきます。

 アスリートの中にも、試合前に音楽を活用して気分を高揚させて試合に臨む人がいます。気分を平時から戦闘モードに切り替えるためです。複数タスクを行う際に次のタスクへすんなり入るために、音楽の効用は工夫次第で無限大だと思います。 

 職場で音楽を聴く環境にない場合も、昼休みや通勤時間などに活用することができるので、気持ちの切り替えに試してみてください。

 

トウシル読者へメッセージをいただきました

「情報は、発信元を疑え!」

 投資は情報が全てだと考えています。情報をどう読むかが、とても大切です。その際、ひとつだけ心に留めておかなければならないのが「情報には発信源がある」ということです。発信源には、常に利害が絡んでいます。情報を受け取る時に一番重要なのは、その情報を“誰が”言ったかということです。

 政府が発表した情報は、全て正しいのか? と、一度考えてみる。政府の話は景気を良くしたい思惑が入っていて、割引いて受け止めなければいけないかもしれない。その情報を読む際に、「これを誰が言っているのか」を知る努力は必要だと思います。

 発信者が誰かわかると、美味しい話にも疑問が湧いてきますし、たとえ渋い話でも「この情報は、この先、好転するかもしれない」と冷静に判断できるようになります。

“情”に“報いている”のが情報です。しょせん情報とは、人の感情から伝わったものでしかない。一番大事なのは発信源です。多くの情報を読む際に、表層的なデータとして読むのではなく、根源的な情報を探るように努めると、ネットで情報提供しているサイトの読み方が変わるかもしれません。情報の根源には発言者の持つ色があります。その色を探せるようになるには、さまざまな情報を読む力を養うことが必要です。

 一方、発信する側の賢いやり方は、ダメな時に真摯にダメだと発信することです。反対に、耳に優しい情報は疑われます。企業が「失敗しました」と発信できると、逆に信用度は大きく上がります。

 何故かというと、“隠そうとした事実”それ自体で、すでに信用ならないと発信していることになるからです。特に日本人は謝り下手でプライドが高いので、それを超えてトラブルをちゃんと説明できて、失敗を公開できる企業に「本物の強さ」を感じます。

 また、ピンチはチャンスと言うのも嘘ではなく、ピンチの時にこそ、その企業の素顔が見えます。一度頭を下げると決めたら、とにかく全部さらけ出す。知られていないであろうことも含めて、全部出す。そうすると、投資家から見て「この会社は正直だな」と信用できるでしょう。残念なことに、最近起きている大企業の問題は、多くがこの点で失敗しています。

 トウシル読者の皆さまが、情報を味方につけ、投資に役立てていただけますと幸いです。


 

<編集後記>取材を終えて…

壁を埋め尽くす書棚に囲まれた書斎から、数々の名作が生まれる!
インタビュー後に拝見した真山仁さんの書斎には、小説家らしい「壁を埋め尽くす書棚」と執筆机の正面に2.5メートル×1.5メートルの大スクリーンがありました。ハゲタカシリーズをはじめとする小説は、映画ファン垂涎の環境で生まれていました。そんな真山さんの映画ランキングナンバーワンは、「ゴッドファーザー」だそうです。次なる新作を、ファンとして心待ちにしたいと思います!(編集部)


◎新刊紹介

ハゲタカシリーズ第5弾! 鷲津が挑むのは、電力事業買収!?

シンドローム(上)』・『シンドローム(下)楽天ブックスへ

官邸は迷走し、首都電が責任回避に奔走するばかり。原発メルトダウンの危機は確実に進行する。表向き救世主として振る舞う鷲津は、けっして本当の狙いを明かさない。原発事故の危機のカウントダウンと、ハゲタカ鷲津の巨大買収劇が、同時並行で進む、リアル金融サスペンス。驚愕と感動の結末へ向かう!

 

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真山氏がハゲタカを書くときに、BGMとしていつも聴いている映画バットマンのサントラ盤

 

 

 


【著者情報】
真山仁(マヤマジン)
1962年、大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業。読売新聞記者を経て、フリーランスとして独立。2004年、熾烈な企業買収の世界を赤裸々に描いた『ハゲタカ』(講談社文庫)で小説家デビュー

 

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「ハゲタカ著者・真山仁氏インタビュー

8/23公開 (前編)人のせいにする日本人。経済危機Xデーを想像せよ

8/28公開 (中編)モノ言う株主にならず、人間が学ばない動物であることを学べ

8/30公開 (後編)情報は発信源を疑え!陳腐化しない情報と仕事の作り方

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​テレビ朝日系・木曜ドラマ「ハゲタカ」(毎週木曜よる9時~/主演・綾野剛)を、楽天証券経済研究所・窪田真之が解説!ファンドマネージャとして金融第一線にいたからこそ語れるリアルな金融事件簿。来週の「ハゲタカ」がもっと面白くなります! 

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