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『ハゲタカ』著者・真山仁氏インタビュー(前編)人のせいにする日本人。経済危機Xデーを想像せよ
トウシル編集チーム
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『ハゲタカ』著者・真山仁氏インタビュー(前編)人のせいにする日本人。経済危機Xデーを想像せよ

2018/8/23
1997年から2004年にかけて日本経済と外資ファンドを描いた『ハゲタカ』にて、鮮烈な経済小説家デビューを飾られた真山仁さん。ドラマや映画化もされ、大きな話題になりました。じつは投資はしていないと言う真山仁さんに、距離を置いているからこそわかる投資の本質行動、そして“理想の投資”や日本経済の未来についてお話を伺いました。全3回インタビュー前編は、真山仁さんが平成の30年間を振り返り、今日本が直面している危機について警鐘を鳴らしました。
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『ハゲタカ』著者・真山仁氏インタビュー(全3回):前編中編後編

 

安倍政権三選?平成の30年間で日本は豊かになったのか?

2018年7月下旬、真山仁氏の事務所にてお話を伺いました

 平成の30年間は、年号の名前とは正反対の激動の30年でした。おそらく、こんなにも政治的な色合いが少なく、経済的な事件がニュースとなる時代は今までなかったと思います。金融恐慌が20世紀初頭にありましたが、その裏でファシズムが進むなど、あくまで国際社会の中での政治が中心でした。

 ちょうどバブルがはじけた後、平成が始まったわけです。その意味では、国際社会の主役が政治から経済に移って、ニュースはすべて経済から始まるようにフォーマットが変化したと言えるでしょう。

 非常にシニカルに言ってしまえば、世の中が金に溺れて、金に振り回されて、結果的には何度痛い目にあっても変わらない状態でした。象徴的な事例と言えば、日本のバブルがはじけた時。実質的には不動産バブルが大きかったわけですが、20年経ってリーマンショックが起きた時も、リーマンショックという名の下に、完全なる不動産バブルの崩壊が起きました。

 全然予測しなかった不可抗力で経済がすごく乱れたとか、政治的な要素が入って経済が混乱したのではないのです。完全に自分たちの欲望だけで何かを引き起こし、誰かが大変な目にあい、学習もしないで同じことを繰り返しています。そもそも経済の根源は人の欲望なので、その欲望のタガが外れてしまう構造は、これからも変わらないと思います。

 安倍総理は三選するかもしれないですが、いずれ辞める人です。彼がいる間は、安倍政権はキラキラして明るく見えるかもしれないけれど、そのツケを次の世代の人たちが20~30年かけて払っていくのです。もし、払う前につまずいたら、日本は終わりですね。そういう意味では、今は本当に大変な時代だといえるでしょう。


ハゲタカは歌舞伎だ!キャラ立ちしたキャストにお金の本質を学ぶ

『ハゲタカ』を書こうと思ったきっかけは…

  その頃、生命保険会社のOBの方が「うちが潰れたのは、ハゲタカ(ファンド)のせいだ」と言い出しました。そこで、人のせいにする日本の愚かしさを『ハゲタカ』というタイトルの小説で書こうと思ったわけです。ハゲタカは悪い人たちのようだけれど、もっと悪いのはあなたたちだよ、と。日本人は「人のせい」にするのが得意ですから(笑)、失敗しても誰かのせいにして、水に流してリセットしていくスタイルですね。ところが、20世紀の終わりごろから、証券会社、銀行が潰れ始めて、誰かのせいにできなくなってきました。生命保険会社まで潰れ、衝撃が走りました。本業だけやっていれば儲かる仕組みにもかかわらず、です。

『ハゲタカ』には、悪い人しか登場しません。今回放映中のドラマは、原作にかなり忠実に作っていただいています。ホテルの再生に奮闘する松平貴子の役を沢尻エリカさんが演じていますが、貴子は実力もあり真面目な性格ではありますが、実の父親を経営から切ってしまうので、日本では悪い人ですね。銀行員の芝野氏もいい人に見えますけが、決断できない人ですから、やはり悪い人です。

 主人公の鷲津もいいことを言いますが、それはすべて金儲けのためです。悪い人ばっかりの中で、20世紀から21世紀の初めに起こった日本の壮絶な経済クラッシュを見せることで、「怖いけれど、面白いね」と、あの時代を振り返ってもらいたい。そういう意味で『ハゲタカ』は、現代の歌舞伎をイメージしています。

 歌舞伎は、それぞれの役柄が派手な隈取りをしてキャラを際立たせます。化け物、妖怪まで出ます。「こんな奴いないよ」というところまで徹底してやるから楽しめるのです。さらにストーリーの原点は、庶民の怒りにあるのも見る者が共感するポイントです。

 江戸時代には、一部の商人だけが儲けているとか、侍が何もしてないのに良い目を見ているとか、好いた者同士がうまくいかないなど、さまざまな不平不満がありました。人の強い情念みたいなものをそのまま上演するとあまりにリアルすぎるので、デフォルメしたエンタメ、歌舞伎にしたのです。

 バブル後の悲惨さは、エンタメの手法を使わないと読者には息苦しいだけだと感じました。小説の最大のポイントは面白いことなので、最初からできるだけ、いそうでいない、かと思えばいなさそうでいる、というギリギリのキャラクターを作り出しました。

実感ないアベノミクスの恩恵。いま日本経済は危機にある

「株価が上がって、日本は豊かになった」と言うが、本当だろうか  

「アベノミクスで日本は良くなった」と言いますが、実感として良くなったという印象はないですね。理由は簡単で、給料が上がらないからです。未来の保障もないので、お金を使わない。年金の問題もあるし、いつクビになるかわからないという不安もあります。

「株価が上がって、日本は豊かになった」と安倍総理は言っています。しかし、総理になって丸6年。6年前に首相に当選した際に「デフレ脱却」と言って、今年の正月もまた「デフレ脱却」と言い続けている。普通の経営者ならクビです。結局、努力しているというポーズが上手なのと、株価が上がっているということだけがアピールポイントなのでしょう。

 株価が上がっている大きな要因に、日銀のETF買い入れ(※)があります。日銀が政府の予算でETF買い入れを行うことは、経済の流れの外側から無理矢理資金を入れて、表面上良くなったように見せかけているだけです。

 株価が上がっても、その企業の業績や評価が上がったわけではなく、政府が無理にゲタを履かせただけ。ゲタに使った資金は税金なので、その負担は、未来に持ち越していることになります。

 今「これは禁じ手では?」と批判しても耳を傾ける人はいないでしょうし、「あんた何言ってるの?」と、批判に耳を傾ける人もいないでしょうし、株価が上がったから前よりマシと言われてしまいます。そのためにどれだけのお金を投入しているのか? 費用対効果からしたら、本当に前よりマシなのかも検証する必要があります。結局、タコが自分の足を食べているようなものです。

 民主党は確かに残念な政権でしたが、民主党政権時代より、今の日本経済は遙かにダメです。自分の足で立っていませんからね。企業なら倒産だし、普通の家庭なら自己破産です。それを、結果だけ見てより良い社会だと言ってしまっていて、正しい批判が見当たりません。

この先の15年を考えると、予想したよりひどくなるのでは、と危惧しています。

※日銀は2016年8月からETFの年間買い入れ額を6兆円にまで拡大しました。それ以降、現在まで、日銀が日本株の最大の買い主体となっています。

 

日本国債デフォルトの迫りくるXデー。その時日本に何が起こる?

確固たる論調と鋭いまなざしで、熱をもって語る真山氏

 前作の『オペレーションZ』では、歳出半減をテーマに取り上げました。このままでは、日本は国家破綻してしまうと危惧しているからです。

 今年も災害がありました。川が氾濫したり、土砂災害があれば命を取られます。あるいは、津波が来たら、場所自体が消えてしまいます。これは目に見え、肌で実感できる危機です。一方で、国家が破綻しても最初のうちは何も変わりません。そこが、日本が危機意識を持てない理由かもしれません。

せっかくの一周年特別インタビューなのに、なんだか暗い話になってしまいました、と照れ笑いする一面も

 国家破綻すると、通貨の信用がなくなるので、輸出と輸入が難しくなります。輸入に頼っているガソリンは、1リットル1万円になるかもしれません。これでは交通に支障が出ます。

 車だけでなく、石油を使って作る電気も供給が難しくなるでしょう。国家破綻してから気づいても、もう遅いのです。ところが、今「日本の財政危機はすぐそこに!」と言う人はいませんし、表向きは問題にもしていません。

 日本人の想像力が乏しくなってしまっているので、せめて小説の中で疑似体験してもらいたいと思っています。小説を通じて「本当にこんな国でいいのか?」と多くの人たちに思ってもらいたくて、一生懸命、書いています。

 国家破綻に瀕した日本にこれから起きると予想されるのは、若手のエリートと金持ちはこの国を捨てていくのではないか、ということ。残るのは介護が必要な大勢のお年寄りと、外に出ていくことができない若者と、会社にしがみついている人たちだけではないかと思います。

※次回予告(中編公開中

日本経済の現状を俯瞰して見せてくださった真山仁さん。次回の中編では、ど真ん中の“投資”について語ってくださいます。経済小説家が考える、理想の投資とは? はたまたモノ言う株主にもの申す!にも、こうご期待!


◎書籍紹介

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不良債権を抱え瀕死状態にある企業の株や債券を買い叩き、手中に収めた企業を再生し莫大な利益をあげる、それがバルチャー(ハゲタカ)・ビジネスだ。ニューヨークの投資ファンド運営会社社長・鷲津政彦は、不景気に苦しむ日本に舞い戻り、強烈な妨害や反発を受けながらも、次々と企業買収の成果を上げていった。

 

◎新刊紹介

シンドローム(上)』・『シンドローム(下)楽天ブックスへ

 

官邸は迷走し、首都電が責任回避に奔走するばかり。原発メルトダウンの危機は確実に進行する。表向き救世主として振る舞う鷲津は、けっして本当の狙いを明かさない。原発事故の危機のカウントダウンと、ハゲタカ鷲津の巨大買収劇が、同時並行で進む、リアル金融サスペンス。驚愕と感動の結末へ向かう!

 


【著者情報】
真山仁(マヤマジン)
1962年、大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業。読売新聞記者を経て、フリーランスとして独立。2004年、熾烈な企業買収の世界を赤裸々に描いた『ハゲタカ』(講談社文庫)で小説家デビュー

 

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「ハゲタカ著者・真山仁氏インタビュー

8/23公開   (前編)人のせいにする日本人。経済危機Xデーを想像せよ

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8/30公開   (後編)情報は発信源を疑え!陳腐化しない情報と仕事の作り方

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​テレビ朝日系・木曜ドラマ「ハゲタカ」(毎週木曜よる9時~/主演・綾野剛)を、楽天証券経済研究所・窪田真之が解説!ファンドマネージャとして金融第一線にいたからこそ語れるリアルな金融事件簿。来週の「ハゲタカ」がもっと面白くなります!  

 
 

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