成長は継続へ

 同社の業績は今後も拡大する見通しです。ポイントは以下3つです。

  1. 出店の継続
  2. 顧客数の増加策
  3. リテールテックによる店舗活性化

 

1.2020年に500店舗体制へ

 出店について、会社側は2020年の店舗数500店舗を目指しています。2018年6月期と比べると20%の増加です。

 

2.食品を活用した客数獲得策

 消費者の来店動機になりやすい食品を活用して、来店客数を増やす戦略です。食品は粗利益率が低いものの、毎日必要なものであり、価格訴求力があれば来店への動機付けとなります。一度来店してもらえば、強みである「豊富な品揃え&価格訴求力&エンターテイメント性」を活かして、ついで買いを誘導することができます。同社は、「利益率」よりも「利益額」を狙う戦略に出ています。

<粗利益率の低い食品の構成比が上昇>

「ドン・キホーテ」ディスカウントストア事業の商品別粗利益率と売上高構成比

出所:会社資料より楽天証券作成

 

 なお、粗利益率が高い時計・ファッション用品の売上高構成比が低下傾向にある点は懸念材料です。過剰在庫を調整する必要があったため、積極的な販売が抑制されたと考えられます。同社はブランド時計などの高級品仕入れについては全社共通にするなどの対策を打っており、今後は同カテゴリーの販売動向と在庫水準が注目材料になります。

 

3.スマートフォンを利用した店舗の活性化

 同社が公表した次世代店舗の構想は、スマートフォンを店内エンターテイメントの新しい「遊び道具」のように扱っています。この戦略はとても的を射たものだと思います。若者を中心に、多くの人がスマートフォンを常に携帯し、時間があれば見ていることが普通になってきています。スマートフォンがいわば代表的な娯楽ツールになっている状況です。そのスマートフォンを「ドン・キホーテ」で楽しく使うことができるのであれば、来店動機や、店に長く滞在してもらうきっかけになる可能性が高いです。

 次世代店舗構想では、店舗内を500歩歩くとスマートフォンにポイントが落ちる仕組みや、ある商品の前に来るとスマートフォン上でスロットが回る仕組みなどが試案されています。もちろん楽しさだけではなく、「ドン・キホーテ」の駐車場のシャッターが顔認証の技術を利用して上がる仕組みや、音声チャットで商品を検索するツールなども考案されています。

 

小売りのリーディングカンパニーへ変貌か

 同社は、日本の小売のリーディングカンパニーとなり得る戦略を打ち出しています。それは以下2点です。

  1. アジア展開
  2. ユニー・ファミリーマート店舗の業態転換&プロデュース

 

1.シンガポール店が盛況

 同社は2017年12月にシンガポール1号店をオープン、2号店を6月14日にオープンし、その販売が好調です。直近の2018年7月の一坪あたりの売上高は、1号店が同社店舗全体のうち11位、2号店が22位となりました。この2店舗が今後もしっかりと集客できれば、海外出店が継続され、同社は日本だけではなく海外にも成長余地がある企業として認識されるでしょう。

 なお、シンガポールの業態名は「DON DON DONKI」です。ほぼすべての商品を日本製もしくは日本市場向けの商品でラインナップする“ジャパンブランド・スペシャリティストア”をコンセプトにしており、価格訴求力もあって消費者から支持されています。同社ならではの商品提案力も活きており、焼き芋を「ジャパンモバイルフーズ」として売り出したところ、連日行列ができるほどの大ヒットとなっています。

 

2.業態転換&プロデュース店が盛況

 ユニー・ファミリーマートHDの総合スーパー「ピアゴ」「アピタ」6店舗が「MEGAドン・キホーテ」型となりました。その結果が好調で、2018年3月~7月の売上高は転換前比190%、粗利益は160%となりました。ファミリーマート3店舗のプロデュースについても、会社側は手ごたえ十分と話しています。今後も成功事例を増やすことができれば、ポストGMS、NEXTコンビニを創造できる企業として認識されることになるでしょう。