成長の主要因3つ

 業績が顕著に拡大した主要因は以下3点です。

  1. 新業態を中心にした積極出店
  2. 既存店売上高の増加
  3. テナント事業の拡大

 

1.「MEGA/New MEGAドン・キホーテ」を中心に積極出店

 当社の店舗数は着実に増加しています。2018年6月期の店舗数は418店舗となり、2014年6月期の283店舗と比べると48%増加しました。店舗数の増加には、「MEGA/New MEGAドン・キホーテ」が主に寄与しました。

<New MEGAドン・キホーテを中心に積極出店>

業態別店舗数の推移
期間:2014年6月期~2018年6月期

出所:会社資料より楽天証券作成

 

「MEGAドン・キホーテ」は、総合スーパー長崎屋の連結子会社化を経て、2008年に生まれた業態です。「ドン・キホーテ」とは異なる客層である、ファミリー層の需要を開拓するためです。売場面積が平均9,000平方メートルと広く、生鮮食品の販売が充実している点に特徴があります。「New MEGAドン・キホーテ」は「MEGAドン・キホーテ」よりも売り場面積が4,000平方メートルと小さめのモデルになります。

「MEGA/New MEGAドン・キホーテ」の販売は軌道に乗りつつあります。MEGAドン・キホーテの既存店売上高は2017年6月期が前期比2.8%増、2018年6月期が4.1%増と好調に推移しました。「ドン・キホーテ」の強みであった「豊富な品揃え&価格訴求力&エンターテイメント性」をファミリー層向けのフォーマットで再現でき、顧客のリピート化が進んでいる状況です。これまで「ドン・キホーテ」のメインターゲットは独身層でしたが、MEGAの発展によって、同社はターゲット層を広げています。

 なお、2018年6月期については、買収したハワイのスーパーマーケット「QSI Times」の店舗数も寄与しました。

 

2.基盤である「ドン・キホーテ」既存店売上高の増加

 柱となる「ドン・キホーテ」の既存店売上高は堅調に推移しています。インバウンド消費の恩恵を受けた免税の部分だけではなく、日本人向けの販売も伸びています。

<既存店売上高は、インバウンド消費、日本人消費、どちらも拡大>

「(株)ドン・キホーテ」の既存店売上高推移

出所:会社資料より楽天証券作成
※(株)ドン・キホーテは、ドン・キホーテ業態のほか、New MEGAドン・キホーテなどを含む

 

「ドン・キホーテ」はインバウンド消費を着実に取り込んでいます。2018年6月期の免税店売上高は前期比56.1%増の568億円に拡大。日本を訪れる訪日外国人数の増加を背景に、客数が好調に推移しました。道頓堀御堂筋店や道頓堀店は、売上高に占める免税売上構成比が65%以上となる盛況ぶりです。

 外国人観光客にとって、「ドン・キホーテ」の魅力は夜中でも買い物できる点にあります。同社の免税売上高のピークは22時頃と、他の小売店が閉まっている時間帯です。「昼間は身軽に観光して、ホテルに戻る前や、復路のフライトに向かう直前にお土産を物色したい」というニーズを掴んでいると考えられます。

 また、アジアの国のなかには、屋台街を散策して、そこで夕飯を済ませるという文化があります。「ドン・キホーテ」の品揃えの多さと賑やかさが、昔ながらの夜の屋台街のようなエンターテイメント性を提供しているとみられます。

 日本人向けの販売も伸び続けています。先ほど述べた、「豊富な品揃え&価格訴求力&エンターテイメント性」を徹底している点が消費者を惹きつけています。「ドン・キホーテ」のアイテム数は約4~6万点に上り、消費者の間では「他の店に置いていないようなものでも、『ドンキ』に行けばなんとかなる」という認識が定着しているとみられます。他の小売店が効率化を進めるために、店舗の閉鎖や開店時間の調整、アイテム数の見直しを行っていることが、「ドン・キホーテ」にとって顧客獲得のチャンスになっています。

 また、オンラインショッピングの体験が広がるなか、「目的買いはオンラインで迅速に済ませるが、たまには様々な商品を手にとって見てみたい」というニーズが高まっている可能性があります。オンラインショッピングは「検索」によって欲しい商品を絞りこめる点が魅力的ですが、画面上の制約があります。この点、「ドン・キホーテ」の店舗を訪れた時に網羅できる情報量と個性的な店内の演出が、楽しく買い物ができる場所として改めて評価されているのかもしれません。

 同社の強みである「豊富な品揃え&価格訴求力&エンターテイメント性」は、現場への徹底的な権限委譲により成り立っています。店舗スタッフが、アイテムの仕入れ、構成、価格設定、陳列まで判断し、その実力が人事評価制度に反映されます。このスタイルが現場スタッフのモチベーションとなり、店舗の鮮度を維持する原動力となっています。

 

3.テナント賃貸事業の拡大

 同社の展開するテナント賃貸事業は収益に大きく貢献しています。営業利益に占めるテナント賃貸事業の構成比は、2014年6月期の19.0%から、2018年6月期には33.4%に拡大しました。同事業は、社内向けの不動産賃貸などを担っているほか、これまで「ドン・キホーテ」などで培ってきたノウハウやネットワークを活かし、商業施設の開発やリノベーションなどを行っています。例えば商業施設の開発では、旧ファッションビルに「ドン・キホーテ」のほか約15の専門店を配置した「ドン・キホーテ国際通り店」(沖縄県那覇市)、リノベーションでは「長崎屋」を中心としたモール「ラパークいわき」(福島県いわき市)のリニューアルが挙げられます。