8月13日~17日原油マーケットレビュー

  前週のNY原油相場は続落。ドル高の流れや米国の原油在庫の増加を背景に売りが先行した。WTI期近9月限は一時64.43ドルまで下落し、期近ベースとしては6月下旬以来の安値を付けた。

 トルコショックの影響からの下方圧力が増した。対米強硬姿勢を崩さない意向を示していること、通貨安回避のための利上げを拒否していることで、トルコリラが急落した。世界的な不安が波及し、新興国通貨への売りが膨らむと同時に、逃避先としてのドル買い需要が高まった。トルコ向け債権を抱える欧州大手金融機関に対するエクスポージャーへの懸念もあり、ドルは対ユーロで上昇した。この影響から、ドル建てで取引される原油に対する投資妙味が低下、原油売りが誘われた。週後半、中国商務省が通商協議に向けて訪米する方針を明らかにしたことで、米中貿易摩擦への懸念が和らぎリスク回避姿勢が後退、逃避目的で買われていたドルが下げに転じたが、米中協議が問題解決につながるか不透明感があるため、積極的なドル売りにはつながっていない点には注意が必要。

 需給ファンダメンタルズ面においては、米国の原油在庫が予想外の大幅増となったことが売り材料視された。米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間石油統計で、原油在庫は前週比680万バレル増と、事前予想の250万バレル減に反して大きく積み上がった。また、WTIの受渡拠点であるオクラホマ州クッシングの原油在庫も13週ぶりに増加に転じた。ガソリンやディスティレートなど石油製品供給にもタイト感が見られず、総じて弱気な内容が示されたことで、原油相場の売り圧力が強まった。在庫増の主たる要因は輸入量が急増したことにある。直近の上限下限からすると、次週統計では輸入量が減少する可能性があるが、リファイナリーもほぼフル稼働状態にあるため需要がさらに増える可能性は低く、輸入量の減少幅次第では在庫積み増しとなる可能性が残る。リファイナリーの稼働率は98.09%と、1999年1月初旬以来の高水準となっている。高い需要が示されてはいるが、能力に限界があるため、さらなる需要伸長は見込み難いと判断せざるを得ない。

 これらドル高や米原油在庫増を背景に売りが先行、直近レンジの67-70ドル下限を明確に下放れたことで、市場のセンチメントは弱気へと傾倒して失望売りも出ている。心理的な節目である65ドルをも下抜いたことにより、ストップオーダーの売りをも巻き込んだ。ベアなムードがより強まると、アジアや欧州でのリファイナリーのトラブルによる原油需要の減退も弱材料として捉えられる可能性もある。日足ベースでは、徐々に上値、下値ともに切り下げる下降フラッグを形成しており、フラッグ内の上限を上抜くまでは下向きのバイアスが強まりやすく、下値指向の流れとなる公算が大きい。基本的には下降トレンドと判断するが、ここ最近では地政学的リスクや産油国関連のニュースに乏しいこともあり、これらの新たな材料が出てくると強く買い反応しやすい点には注意が必要である。

 

今週の予想

  • WTI    やや弱め 63.00-67.00ドル
  • BRENT    やや弱め 69.00-73.00ドル