所得控除ってどんなもの?

 所得控除という言葉は聞いたことがありますでしょうか。これは、所得税の計算上、所得から差し引くことができる金額のことで、いくつかの種類があります。

 会社員の方になじみのあるものとしては、次のようなものがあります。

・基礎控除
 誰でも38万円の所得控除が受けられる
・配偶者控除
 所得が一定額以内の配偶者がいる場合38万円の所得控除が受けられる
・扶養控除
 所得が一定以内の扶養親族(子、親、孫など)がいる場合1人につき38万~63万円の所得控除が受けられる
・社会保険料控除
 給料から天引きされる健康保険料、厚生年金保険料などの社会保険料につき、支払った全額が所得控除となる
・生命保険料控除
 支払った保険料のうち一定額が所得控除となる
・地震保険料控除
 支払った保険料のうち一定額が所得控除となる
・医療費控除
 支払った医療費のうち一定額が所得控除となる

 また、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)の掛け金は、小規模企業共済等掛金控除として、全額、所得控除の対象となります。ふるさと納税は寄付金控除の対象です。

 所得控除の金額が大きければ大きいほど、税金のかかる所得の金額を小さくすることができますから、所得税の金額も抑えることができます。

 

税額控除にはどういう意味があるの?

 所得控除と紛らわしいものに、「税額控除」があります。税額控除は、所得に応じて計算された所得税から、直接差し引くことができるものを指します。

 いろいろな種類があるのですが、私たちにとってなじみが深いものといえば、「配当控除」と「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」の2つです。

 配当控除は、総合課税により配当金収入を確定申告した場合、配当所得の10%もしくは5%を所得税の額から控除するものです。

 住宅ローン控除は、年によって控除割合が異なりますが、住宅ローンの年末残高に対して一定の割合(例えば1%)を所得税の額から控除できるものです。住宅ローンの金額が大きいため、数十万円レベルで税額控除が受けられることもあり、インパクトも大きくなります。

 

所得控除と税額控除の違いはどこにある?

 所得控除は、所得税の額を計算する前提となる「所得」から差し引くのに対し、税額控除はすでに計算が終わった所得税の「税額」から差し引くという違いがあります。

 そしてこの違いから、所得水準の違いによる有利・不利の差の有無が生じてきます。所得控除の場合、所得水準が高い人の方がより多くの恩恵を受けることができます。

 例えば所得が5,000万円の人が100万円の社会保険料控除を受けると、所得税率が45.945%ですから約46万円の所得税額軽減効果があります。一方、所得が500万円の人が100万円の社会保険料を受ける場合、所得税率は20.42%なので所得税額軽減効果はおよそ20万円にとどまります。

 一方、税額控除の場合は、所得税が多い人も少ない人も、一律所得税額が減額されるので、所得水準の違いによる有利・不利は生じません。

 例えば10万円の配当控除であれば、所得の水準にかかわらず10万円の税額が減額されます。
ただし住宅ローン控除をはじめ、本来引けるはずの税額より実際の税額の方が少ないので税額控除を使いきれず、メリットを最大限享受できないケースもあります。

 

控除できるものを知っておかないと損!

 所得税の所得控除や税額控除は、年末調整や確定申告の際、該当するものについてご自身で自主的に申告する必要があります。税務署の方で、自動的に控除してくれるわけではありませんので注意してください。

 例えば多額の医療費が発生した場合でも、ご自身で確定申告して医療費控除を申告しなければ、所得税の還付や減額を受けることができないのです。

 一方、配当控除のように、
(1)配当金を総合課税で申告して配当控除を受けた方が有利なケース
(2)配当金を申告せず源泉徴収のみで完了させた方が有利なケース
(3)総合課税ではなく申告分離課税で申告した方が有利なケース

と人によって異なるため、かなり複雑になってしまうものもあります。これは事前にシミュレーションをして最も有利なものを選択するほかありません。

「知らなかった」が丸々損をするのが税金の世界。年末調整や確定申告の際、所得控除や税額控除ができるものがあれば、見落とすことのないよう、十分注意してくださいね。