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特集:5G関連の注目銘柄(村田製作所、アンリツ)
今中 能夫
楽天証券投資weekly セクター・投資テーマ編
毎週金曜日夕方掲載。楽天証券経済研究所チーフアナリスト 今中能夫の、今週1週間の国内株式市場の情報がつまった週刊レポートです。注目セクターと投資テーマに重点を置いて、相場と銘柄を…

特集:5G関連の注目銘柄(村田製作所、アンリツ)

2018/7/6
・5G関連の重要銘柄である村田製作所とアンリツを取り上げる。
・村田製作所は、チップ積層セラミックコンデンサの需要好調とコストアップに対応して、全顧客と値上げ交渉に入った。今4Qから5~10%の値上げが浸透し始める可能性がある。また、5G用として開発した樹脂多層基板「メトロサーク」は、今期収支均衡、来期は黒字転換か。5Gは村田製作所にとって重要なテーマである。
・アンリツは、世界有数の通信用計測機器メーカーであり、幅広い顧客層を持つ。前4Qから5G用計測機器を受注しており、今後は5Gビジネスが業績を牽引しよう。
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毎週金曜日夕方掲載

本レポートに掲載した銘柄

村田製作所(6981)、アンリツ(6754)

 

村田製作所

1.電子部品の世界的大手

 5G(第5世代移動体通信)は株式市場で重要なテーマになっています。そして、その関連銘柄には、通信、建設、電機、電子部品、ソフトウェアなど様々な分野の銘柄が含まれます。今回は5G関連銘柄として、村田製作所とアンリツを取り上げます。まず、村田製作所からです。

(5Gの概要については、楽天証券投資WEEKLY2018年6月15日号「特集:5G(第5世代移動体通信)と関連銘柄」をご覧ください。)

 村田製作所は、日本の電子部品メーカーとしては売上高で京セラに次ぐ2位、営業利益と営業利益率ではトップです。世界シェアトップの電子部品が多いことが特徴で、各種電子機器に数多く使われるチップ積層セラミックコンデンサは世界シェア40~45%、複数の電波から特定の電波を選別するSAWフィルタでは世界シェアの50%以上を占めています。この他、デュプレクサ、トリプレクサ(送信電波と受信電波を同時にやり取りする。LTE以降のスマートフォンでは必須の部品)、セラミック発振子、EMI除去フィルタなど、特に通信系の重要電子部品で世界シェアトップを維持しています。

表1 主なスマートフォン用電子部品の市場シェアと概要

出所:会社資料とヒアリングより楽天証券作成
注:Samsung Electro-Mechanicsは韓国サムスン電子系の電子部品会社

 

2.チップ積層セラミックコンデンサの値上げ交渉に入った

 村田製作所が世界シェア40~45%(高級品では50%以上)のシェアを持つチップ積層セラミックコンデンサ(MLCC、表2、3のコンデンサの約95%がチップ積層セラミックコンデンサ)はあらゆる電子機器に多用されている重要部品です。パソコン、スマートフォン、AV機器、家電、自動車などの各分野で需要が多く、品不足気味で、村田製作所でも設備増強と増産が続いています。

 また、自動車の電動化に伴い自動車向けが増えてきたことから、検査項目が増え、コストが増加してきました。そこで、今1Qから全顧客向けに全品種について値上げを要請しています。値上げ率は不明ですが、楽天証券の予想では今4Qから5~10%の値上げが浸透し始める可能性があります。

 チップ積層セラミックコンデンサの実需は好調で、年率約20%の伸びが予想されます。このため、値上げがなくても今期会社予想は上方修正の余地があると思われます。また、来期になると、値上げがフル寄与すると予想されます。今回の楽天証券予想では、来1Qから5~10%の値上げが浸透すると想定して業績予想を行いました。そして、コストアップ分を差し引いて値上げによる利益増加分を約5%、約300億円としました。これが来期業績に寄与すると予想しました。

 なお、チップ積層セラミックコンデンサ首位の村田製作所が値上げ交渉に入り値上げが実現できれば、3位の太陽誘電、4位のTDKも値上げすると思われます。この2社の来期業績にも値上げ効果が期待できると思われます。

表2 村田製作所:製品別売上高(通期)

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券
注:製品以外の売上高は少ないため無視した

表3 村田製作所の用途別・製品別売上高と前年比(四半期)

単位:百万円、%
出所:会社資料より楽天証券作成

 

3.メトロサークは来期黒字転換か

 村田製作所では数年前から樹脂多層基板「メトロサーク」の生産、販売を行っています(表2、3の「通信モジュール」に含まれる)。売上高は推定で2017年3月期200~300億円、2018年3月期650~700億円で、営業赤字は2017年3月期推定数10億円、2018年3月期は約200億円だった模様です。前期の赤字はメトロサークの急速な増産に対して生産性が悪化したために発生したものであり、最悪期はすでに脱したと思われます。

 メトロサークは、極薄で曲げやすい基板で、高級スマホ向け(会社側は顧客名、機種名を言わないがおそらくiPhone向けと思われる)の製品です。この基板の上に各種電子部品や半導体を装着します。メトロサークはもともと5G対応に開発されたものであり、高周波特性に優れた基板です。今期は約50%増収と営業損益の収支均衡が予想されます。

 また来期になると、スマホ内の使用箇所が増え、顧客数も増える可能性があります。年率30~40%増収が予想され、来期2020年3月期から黒字転換すると思われます。2021年3月期からは5G需要が本格化することが予想されるため、2021年3月期売上高は楽天証券予想1,700~1,900億円、営業利益率10%以上の大型製品になる可能性があります。

 

4.5G関連の電子部品需要の増加が予想される

 チップ積層セラミックコンデンサなどの重要電子部品は、スマートフォンが高性能化するにつれて搭載個数が増加しています(表4)。5G対応スマートフォンも基本的にはこれら重要部品の搭載個数が現在の4G対応機種よりも増えると思われます(ちなみに、自動車も電動化が進むにつれてコンデンサの搭載個数が増えます)。

 ただし、SAWフィルタについては、5Gの候補になっている周波数のうち、700MHz~2.5GHz(今のLTE帯域)では従来のSAWフィルタや新しいI.H.P.SAWなどで対応可能ですが、3.7GHz帯、4.5GHz帯の周波数ではI.H.P.SAWの高性能版(開発中)やLCフィルタなどで対応することになります。また、より高い周波数である28GHz帯などでは、水晶導波管フィルタ(開発中)やICとアレイアンテナを組み合わせたモジュール(開発中)が必要になると思われます。これら開発中の新製品が投入されれば、村田製作所の5G対応ビジネスは一層充実すると思われます。

 このように、5Gは村田製作所にとって大きなビジネスチャンスです。

 中長期的には、2017年9月にソニーから譲り受けたリチウムイオン電池事業の今後が注目点です。電池事業の業績は2018年3月期(7カ月間)売上高912億円、営業赤字142億円であり、今期も赤字が続く見通しです(表2、3の「その他コンポーネント」に含まれる)。当面は業務用蓄電池や工具用、家電用電池に注力する方針ですが、5Gではスマホの電力消費量が大きくなるため、電池が重要になります。今は電池部門のスマホ向け売上高は大きくありませんが、将来どうなるか注目されます。

表4 スマートフォンに搭載される電子部品の個数

出所:村田製作所資料より楽天証券作成
注:ハイエンドは、マルチキャリア、LTE-Advances(キャリアアグリゲーション)、ミッドレンジはマルチキャリア、LTE、ローエンドはシングルキャリア、LTE

表5 (参考)チップ積層セラミックコンデンサの自動車搭載個数

単位:個
出所:村田製作所資料より楽天証券作成
注:マイクロハイブリッドは、モーターで減速時のエネルギーを回収し、蓄電池に貯め、車両内で使うもの(例:スズキのエネチャージ)

 

5.好業績持続へ

 今期は、チップ積層セラミックコンデンサの好調により、会社予想の上方修正が期待できます。会社予想営業利益は2,400億円ですが、楽天証券では2,500億円を予想しています。なお、会社予想営業利益は前年比48.0%増、779億円増加することになりますが、増加分のうち675億円が減価償却方法を定率法から定額法へ変更することによるものです。

 また2020年3月期は、チップ積層セラミックコンデンサの値上げ効果、メトロサークの利益寄与、各電子部品の増収効果が期待できます。2021年3月期楽天証券予想では値上げ効果はなくなる前提ですが、5G対応スマホの生産、販売が本格的に始まると思われるため、二桁増収が期待できます。この結果、営業利益は2020年3月期3,200億円、2021年3月期3,900億円と年率20%以上伸びると予想されます。

 なお、米中貿易摩擦については、アメリカが中国から輸入する携帯電話、テレビ、パソコンに追加関税がかけられない模様なので、現時点で村田製作所の業績に大きな影響はないと思われます。

 目標株価は、楽天証券の来期2020年3月期予想EPS 1,111.4円に対して、5G効果を加味して想定PERを20~25倍とし、6~12カ月の期間で2万5,000円としました。中長期で投資妙味を感じます。

表6 村田製作所の業績

株価 17,990円(2018/7/5)
発行済み株数 213,251千株
時価総額 3,836,385百万円(2018/7/5)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:当期純利益は当社株主に帰属する当期純利益
注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの

グラフ1 セラミックコンデンサ生産金額

単位:百万円
出所:経済産業省生産動態統計より楽天証券作成

グラフ2 セラミックコンデンサ生産金額:前年比

単位:%
出所:経済産業省生産動態統計より楽天証券作成

 

アンリツ

1.通信用計測機器の世界的大手

 アンリツは通信用計測機器の世界的大手です。事業部門は、T&M事業(計測機器事業)、PQA事業(プロダクツ・クオリティ・アシュアランス、食品関連の計測機器)、その他(IPネットワーク機器、光デバイス)の3つに分かれています。主力事業はT&M事業で、3G→4G→5Gという携帯電話の世代の変遷に沿って、循環的な成長トレンドを描いています。

 これまで主力だった4G対応スマートフォン向け計測機器では、アンリツの顧客は、クアルコム、インテル、メディアテック、ブロードコムなどのスマホ用チップセットメーカー、アップル、サムスン、レノボ、ファーウェイなどのスマホ端末メーカー、エリクソン、富士通などの基地局メーカー、NTTドコモ、AT&Tなどの各国の通信会社などであり、幅広い顧客層を持っています。競合相手は、米キーサイト・テクノロジーズ、独ローデ・シュワルツで、この2社と世界市場を3分しています。

表7 アンリツ:セグメント別業績

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券

 

2.2018年3月期は業績回復

 4Gへの投資が2014年3月期にピークアウトしたあと、T&M事業は下降局面入りし、その結果、全社業績も2017年3月期まで減収減益が続きました。

 2018年3月期は、4G向けの減少が続きましたが、4Qに5G向けの最初の受注があり、5Gビジネスが始まりました。ただし、通期で見ると4Gと5Gの端境期になったため、T&M事業は8.3%減収、14.3%営業減益となりました。

 一方でPQA事業は、国内、海外の食品業界における検査工程自動化の流れを受けて、X線自動検査機の需要が拡大しました。その結果、PQA事業は15.1%増収、51.2%営業増益と大幅増益となりました。

 またその他の事業も、光デバイスやIPネットワーク機器が好調で、3.1%増収、31.3%営業増益になりました。

 この結果、2018年3月期の全社業績は、1.9%減収、16.0%営業増益と増益転換しました。

グラフ3 アンリツ:T&M(計測)事業の業績

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券

グラフ4 アンリツ:T&M(計測)事業の受注高と受注残高

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成

表8 日本における携帯電話ネットワークの変遷

出所:日経NETWORK2018年3月号より楽天証券作成
注:bpsはビット/秒

 

3.2019年3月期から5G向けを軸にした成長が期待できる

 2019年からの5Gサービス開始に伴い、5G用計測機器需要が増加すると予想されます。前述のように、2018年3月期4Qに5G用計測機器の最初の受注がありましたが、今後は5G関連受注が増加トレンドに入っていくと予想されます。

 過去のトレンドを振り返ると、2010年に4Gサービスが開始された時には、2010年から2011年までにT&M事業の受注が急増し、その後波を描きながら2013~2014年に受注がピークを付けました(グラフ4)。

 今回の5Gは大容量高速伝送、受信だけでなく送信の高速化、同時多接続、低遅延という重要な特徴を持っています。また、用途もスマートフォン、タブレットに止まらず、自動車、機械・ロボット、医療など広義のIoTに拡大する可能性があります。加えて、5Gネットワークは既存の通信ネットワーク全体を増強する引き金になるため、計測機器需要が増加する分野も無線通信だけでなく、通常の通信ネットワークにも拡大すると思われます(ちなみに、2018年3月期のT&M事業の内訳は、モバイル45%、ネットワーク・インフラ32%、エレクトロニクス(電子部品等)23%となっています)。そのため、計測機器需要の天井も過去のものより高くなり、上昇サイクルも長くなる可能性があります。

 5Gビジネスが始まったことに伴い、アンリツの業績も再成長に向かうと思われます。会社予想では、2019年3月期は売上高920億円(前年比7.0%増)、営業利益66億円(同34.4%増)となる見込みであり、中期計画では2021年3月期を売上高1,050億円、営業利益145億円としています。

 これに対して楽天証券では、会社計画の2021年3月期営業利益145億円は不透明要因もあるため、業績予想を2019年3月期売上高920億円、営業利益66億円、2020年3月期売上高1,000億円、営業利益88億円、2021年3月期売上高1,100億円、営業利益130億円としました。今後アンリツの成長がどのようなものになるか注目したいと思います。

 なお、米中貿易摩擦については、現時点でアンリツの業績に大きな影響はないと思われます。

 今期会社予想PERは35~40倍と、株式市場では5G関連の重要銘柄として高く評価されています。5Gが重要テーマであることを考慮し、楽天証券の来期予想EPS 48.8円に35~40倍を当てはめ、今後1年間の目標株価を1,900円としました。中長期での投資妙味を感じます。

表9 アンリツの業績

株価 1,367円(2018/7/5)
発行済み株数 137,357千株
時価総額 187,767百万円(2018/7/5)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:当期利益は親会社の所有者に帰属する当期利益
注2:発行済み株数は自己株式を除いたもの

 

本レポートに掲載した銘柄:村田製作所(6981)、アンリツ(6754)

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