7月6日に米中貿易戦争が始まる不安を、株式市場が織り込み

 2日の日経平均株価は、前週末比492円安の2万1,811円まで急落しました。朝8時50分に発表された6月の日銀短観で大企業・製造業DIが2期連続で低下したことが嫌気されました。

 米中貿易戦争が日本の企業業績にも影響すると見た外国人投資家が、後場に日経平均先物を売ったと考えられます。

日経平均株価 日足:2018年1月22日~7月2日

 

 7月6日に米国が340億ドル(約3.7兆円)の対中制裁関税を発動すると予告していること、中国が同額の対米報復関税を発動すると宣言している不安がある中で、日銀短観がやや弱めに出たため、外国人の売りが誘発されました。

 中国株(上海総合株価指数)が2日、大きく(2.5%)下がり、年初来安値を更新したこともムードを悪化させました。上海総合株価指数は、すでに年初来16%も下がっています。貿易戦争の影響で、中国景気が減速し始めていることが嫌気されています。それが、中国と地理的にも経済的にもつながりが大きい日本株の売りを誘発したとも考えられます。

 2日に日銀による日本株ETF(上場投資信託)の大口買いがなかったことも、下げが大きくなる要因でした。日銀は、6月中旬から連日のように、約700億円の大口買いを出して、日経平均を支えていました。6月14日以降の営業日で、日銀の大口買いがなかったのは、6月14日、6月21日、7月2日だけです。

 チャートで見ると、日経平均の週足では、5月、6月に二番天井をつけて下がってきたところで7月2日に急落し、5月30日の安値2万1,931円を一気に下回っています。テクニカル的には弱い形となりました。

 7月6日に予定されている米国による対中制裁関税、および、中国による対米報復関税の発動が回避されるというサプライズ(驚き)が出ない限り、さらに下がる懸念もあります。

6月の日銀短観:二期連続の低下となった大企業・製造業DI

 貿易戦争は、世界景気に悪影響を及ぼすところまでエスカレートするのでしょうか? 日本の景況をよく表す大企業・製造業DIは+21で、前回の+24から3ポイント低下。二期連続の低下に、反応した外国人投資家が日経平均先物を売ったと推定されます。

日銀短観、大企業製造業・非製造業DIの推移:2012年3月~2018年6月

出所:日本銀行

 ただ、冷静に考えてみると「+21」という水準は、弱い水準ではありません。大企業・製造業DIが二期連続で低下したとは言っても、そんなに悲観すべき水準ではありません。逆に、大企業・非製造業DIは、+23から+24へ小幅改善しています。日経平均が500円近く下がらなければいけないほど悪い数字とは言えません。

 米中貿易戦争の懸念が高まっている中で発表されたため、海外ファンドに、利益確定売りの口実となったと思われます。

 6月の日銀短観の内容を詳しく見ると、ポジティブな部分とネガティブな部分があります。ポジティブだったのは、2018年度の大企業の設備投資計画が強気であった点。前期比13.6%増と、高い伸びが見込まれています。内訳は大企業製造業が前期比17.9%増、非製造業が同11.2%増でした。

 ネガティブだったのは、2018年度の大企業・製造業の経常利益計画が下方修正された点。前年比▲5.1%と、3月調査の▲3.6%よりも、経常減益率が大きくなりました。資源など原料高が利益を圧迫しています。

 設備投資意欲の高さを見ると、日本企業は先行きをさほど悲観的に見ていないと考えられますが、収益的には目先、踊り場となる可能性があります。

6月の米ISM製造業景況指数は改善

 米製造業の景況感も足元はまだ良好です。貿易戦争の影響がどう出るか注目されましたが、日本時間の2日23時に発表された6月のISM製造業景況指数は改善しました。

米ISM製造業景況指数の推移:2014年1月~2018年6月

出所:米ISM供給公社

 貿易戦争の影響で、先行き、米企業の景況感が悪化するリスクはありますが、少なくとも足元は、悪くないことがわかりました。

日本株は下がる過程で買っていって良いと判断

 7月6日から米中貿易戦争が激化し、世界景気が悪化するリスクには注意が必要です。ただし、日本株は割安と判断していますので、下がる過程で長期投資で少しずつ買っていって良いと判断しています。

 

 

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