■回答と解説■綿 関連国☆コモディティクイズ

回答1:綿の生産国の正解は…

出所:米農務省(USDA)のデータをもとに筆者作成(2017年)

[解説]

1位インド(23.2%)、2位中国(22.4%)、3位米国(17.0%)でした。

 紀元前より、現在の南米やインド周辺で綿が採取できるアオイ科の植物が生育していたとされています。歴史的に関わりが深い地域にあるインド、ブラジル、パキスタンがランキングの上位に入っています。

 また、米国は先述のとおり、産業革命後のイギリスおよびヨーロッパにおける綿(めん)製品の需要増加に対応するための生産地であった歴史があり、現在も大規模な生産が行われています。インドと中国については自国の綿(めん)製品の需要拡大、および綿(めん)製品の輸出拡大に対応するために、広大な国土を利用して生産が行われています。
 

回答2:綿の輸出国の正解は…

出所:米農務省(USDA)のデータをもとに筆者作成(2017年)

[解説]

1位米国(39.9%)、2位インド(11.8%)、3位ブラジル(10.5%)でした。

 米国は世界の輸出量のおよそ4割を占めています。

 また、輸出率(輸出量÷生産量)に着目すると、ギリシャ88.7%、マリ81.5%、ブルキナファソ80.8%、オーストラリア79.6%、米国76.5%、ブラジル47.2%、インド16.7%でした。

 輸出率が80%を超える高い値の場合、生産する目的が自国での消費ではなく、ほぼ輸出(外貨獲得)目的だと考えられます。その意味では特に発展段階にあるマリやブルキナファソ(ともに西アフリカ諸国)においては、国の財政上、綿が非常に重要な役割を担っていると言えます。両国は、アフリカ全土における綿の輸出量および生産量の最上位国です。この背景には、「フェアトレード」が浸透しつつあることが考えられます。

「フェアトレード」とは、先進国の大量消費に対応するために、発展段階にある国が作物を生産する場合、生産国が不当に不利になることを防ぐ考え方です。コーヒーにおいては、フェアトレードが浸透してきていることを、わたしたちの普段の生活の中でも少しずつ実感できるようになってきています。フェアトレードを推進する国際的な組織である「フェアトレードインターナショナル」が定めた基準(品物の品質が一定以上であるなど)を満たすことで、発展段階にある国で生産されたコーヒーや綿はフェアトレード認証を受けることができます。認証を受けた製品を購入することは、一定以上の品質基準を満たした品物を手に入れることができること、そして発展段階にある国の生産者と正当な価格で取引したと対外的に認められることを意味します。

 綿の購入を考えている国や企業にとって、「フェアトレード」がマリやブルキナファソから購入するきっかけとなると言えます。マリやブルキナファソを含む西アフリカにはフェアトレードに取り組む小規模団体の拠点があり、「フェアトレード」の浸透が両国の輸出量を拡大させているといえます。
 

回答3:綿の輸入国の正解は…

出所:米農務省(USDA)のデータをもとに筆者作成

[解説]

1位バングラディシュ(18.7%)、2位ベトナム(17.4%)、3位中国(13.4%)でした。

 綿は、そのまま食べるなど、直接消費する機会はほとんどないとみられます。このため、綿の輸入は、輸入した国でその綿を綿(めん)繊維にする、あるいは、その綿(めん)繊維を用いて衣類を作るなど、加工することが前提になっていると考えられます。つまり輸入国は、綿という原材料を繊維や衣類に加工し、それらを輸出する「加工貿易」を行っていると言えます。

 人口の多さを背景に、比較的自国での繊維や衣類の消費量が多いとみられる中国とインドよりも、バングラディシュやベトナムの輸入量が多いことは特筆すべき点だと思います。

その背景には、“賃金の低さ”があります。
 

図:アジア諸国の首都における一般工職の賃金 (月額) 単位:USドル

実務経験3年程度の正規雇用の作業員(基本給、諸手当、社会保障、残業代、賞与など含)

出所:ジェトロ「2017年度 アジア・オセアニア投資関連コスト比較調査(2018年3月)」をもとに筆者作成

 上図は国名を記していますが、その国の首都における月額の賃金を示しています。日本は東京、韓国はソウルという具合です。

 綿を輸入して綿(めん)繊維や衣類を輸出する加工貿易が世界的に盛んな国は、比較的賃金が低い傾向があると言えます。

 アジア諸国の中では中国とインドの賃金は比較的高めに見えますが、自国の経済発展により賃金がもともと上昇傾向にあること、参照した賃金のデータが首都の賃金であり比較的高めに見えているなど、実際には、綿を綿(めん)繊維や衣類に加工する労働者の賃金はもっと低い可能性があります。

 日本や欧米の大手アパレルメーカーがこぞってバングラディシュをはじめとしたアジア諸国に進出していますが、アパレルメーカーが収益を上げるためには、賃金が低いこと、つまり、安い人件費が必要なのだと言えます。

現在のバングラディシュを「世界の繊維工場」と例える声もあります。

 

回答4:綿の消費国の正解は…

出所:米農務省(USDA)のデータをもとに筆者作成

[解説]

1位中国(33.1%)、2位インド(20.0%)、3位パキスタン(8.6%)でした。

 中国とインドで世界の綿消費の半分以上を消費しています。自国の人口の多さが、綿の消費(綿繊維やそれを用いた衣類の需要)が多いことの根拠の一つと考えられます。

 3位のパキスタンは、インドと同じく、歴史的に綿の主要な生産地であり、旧英国領であったため繊維の加工についてノウハウが蓄積されていたと考えられます。もともと綿が身近にあり、加工するノウハウもあり、インドという大きな市場に隣接していることが、パキスタンが消費の上位にランクインした理由だと考えられます。

 4位以下は輸入国のランキングで上位に入った国々です。バングラディシュとベトナムとインドネシアの綿の生産量の合計は、世界のおよそ0.1%です。それでも消費量が上位に入るのは、先述の“賃金の安さ”を背景に加工貿易が盛んであるためだと言えます。


 いかがでしたでしょうか。綿に関連する国を見てきました。

綿のことを知る上で、関連国を知ることは非常に重要かつ有効であると思います。