先週の国内株市場ですが、日経平均は週末の6月8日(金)に2万2,694円で終値を迎えました。前週末比で523円高、週足ベースでは3週ぶりのプラスに転じました。不透明感や警戒感が漂っていたムードにしては、意外(?)に堅調だったと言えます。

 今週もこの「イイ感じ」の流れが続くのかが最大の焦点になるわけですが、そうは言っても今週は日・米・欧の金融政策決定会合をはじめ、米朝首脳会談などのイベントが盛りだくさんで、経済指標の発表なども合わせると、まさにイベント祭り状態になります。また、米国の保護主義的な経済政策スタンスによる周辺国との通商摩擦への警戒も未だに燻っていることもあり、引き続き、相場の地合いがガラリと変わってしまう「ちゃぶ台返し注意報」は発令中のままです。

 そのため、のるかそるかの勝負に出るのか、または割り切って短期的な値動きについて行くのか、もしくは様子見を決め込むのか、投資タイミングを判断するのに非常に迷うところですが、どんな状況であれ、基本となる足元の相場環境の確認は欠かせません。早速、下の図1で見てみます。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2018年6月8日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成

 

 まずは値動きです。先週の日経平均は4日間の上昇が続いた後、週末に下げる展開でした。

 もう少し詳しく見て行きますと、週初6月4日(月)の取引は一段高の2万2,365円でスタートしました。米雇用統計の結果を受けた米国株市場が反発した流れを引き継いだ反応なのですが、先週末の終値が2万2,171円でしたので株価水準を切り上げたわけです。実は、この動きが先週の値動きの方向性を決めることになりました。

 と言うのも、先週末8日(金)は、先物・オプション取引のSQ(精算日)だったことが影響していると思われます。多くの場合、SQが近くなると「日経平均をいくらでSQを迎えさせるのか?」が意識されて、オプション取引で比較的売買が活発な権利行使価格帯である250円刻みが注目されやすくなります。具体的には、2万2,000円、2万2,250円、2万2,500円、2万2,750円、2万3,000円などです。

 日経平均は週初の取引開始時にいきなり2万2,250円をクリアしたため、さらにその後の米国株上昇の動きに合わせて2万2,500円や2万2,750円をトライすることになりました。ただ、2万2,500円を超えた辺りには25日移動平均線が横たわっていたために、その水準でのもみ合いを経て、7日(木)に2万2,750円をクリアすることになりました。そして、SQを通過した週末8日(金)に見せた下落は、手仕舞いや利益確定売りと考えるのが自然です。

 週を通じて上昇基調だったことや、上値の抵抗とされる2万2,500円や25日移動平均線をクリアしたこと、さらに5日移動平均線が25日移動平均線を上抜けるゴールデンクロスを見せたことは明るい材料になります。もっとも、週末の終値が昨年の大納会終値(2万2,764円)を下回り、昨年末比でプラス圏を維持できなかったことは残念ですが、イベント祭り直前のタイミングでは仕方がないのかもしれません。

 従って、前回のレポートでも述べた通り、まずは昨年大納会の2万2,764円をクリアして昨年末比でプラスに戻しきること、そして直近高値である5月21日の2万3,050円を上抜けして上昇トレンドに復帰できるかが重要で、途中で失速してしまうと、「保ち合い」相場がしばらく続く可能性が高まってしまうという見通しについては今のところ変更はありません。

 明るい材料と言えば、ローソク足の組み合わせも決して悪くはありません。週末にかけての6日(水)と7日(木)、そして8日(金)のローソク足の組み合わせは、6日から7日にかけて、窓を空けて陽線が出現し、翌8日は前日の陽線に食い込む陰線となっています。これは「上放れタスキ」と呼ばれ、一般的に天井圏で出現すると上昇が継続するサインとされています。

 ただし、今回の上放れタスキは、天井圏というよりも、戻り局面で出現していることと、空けた窓があまり大きくないため、強気と判断するには微妙なところではありますが、それでも慎重さの中に上方向への意識が隠れている印象があります。

 その一方で、注意点についてもいくつか見て行きます。

■(図2)日経平均とNT倍率の推移(2018年6月8日取引終了時点)

出所:証券取引所公表データを元に筆者作成

 

 上の図2はNT倍率(日経平均÷TOPIX)の推移です。先程も述べた通り、先週の日経平均の上昇は先物取引の影響が大きかったのですが、実際に足元のNT倍率を見ると、拡大傾向となっています。これは日経平均がTOPIXよりも先行して上昇している状況と考えられます。

 そのため、SQを通過した今週は、(1)TOPIXが日経平均にキャッチアップしていくのか、反対に、(2)先行している日経平均の方が調整していくのか、それとも、(3)引き続き日経平均が先行し続けるのかなどを見極めていくことになります。特に(3)の展開になると、その後の調整が深くなる可能性があるため要注意です。ちなみに、今回のSQ値は2万2,825円でした。

 また、カギとなるTOPIXの動きですが、下の図3のチャートで確認してみますと、確かに日経平均と比べて出遅れ感があります。TOPIXが力強い動きを見せることができるかも今週のチェックポイントになります。

■(図3)TOPIX(日足)の動き(2018年6月8日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成

 

 最後に少し長めのトレンドも確認します。

■(図4)日経平均(日足)の動き その2(2018年6月8日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成

 

 やや長めの日経平均をトレンドで捉えると、N字型の上昇パターンを描けるかが焦点になっています。とりわけ、上昇幅の「3分の1押し」や「38.2%押し」で反発して、直近高値も上抜けて上昇トレンドが継続するというのは多く見られる形なのですが、上の図4にもある通り、直近の反発のきっかけとなったのは、まさに「3分の1押し」と「38.2%押し」になります。

 実は、このN字型の上昇パターンを描けるかは、さらに期間を長くした週足でも当てはまります(下の図5)。

■(図5)日経平均(週足)の動き その2(2018年6月8日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成

 

 足元の株価はどちらに転ぶかはハッキリしませんが、仮に良くない方向であったとしても、短期・中期を問わず、このN字型パターンから大きく外れない株価の軌道である限り、過度に悲観的になる必要はないと考えられます。