公正発展党の歴史

 公正発展党は2001年に発足した中道右派の政党でイスラム主義を打ち出しています。2000年代初頭トルコは深刻な経済危機に瀕していました。公正発展党は経済を立て直すことを公約して支持を集め、2002年の選挙に勝利しました。つまり「経済のことなら公正発展党にまかせておけ」というイメージを、それ以来、ずっと堅持しているのです。

 エルドアンは慣習にとらわれず、その時々の世論の流れを冷静に観察し、勝つためには誰とでも組む実利追求型の政治を行ってきました。

 一例として2014年の選挙ではトルコの有権者の20%を占めるクルド人の票を味方につけました。しかしその後クルド独立運動が高まり、クルド票が期待できなくなりました。

 そこでエルドアンは国家安全保障問題を前面に打ち出し、実質的にクルドを敵に回しました。折からのクルド過激派による一連のテロで反クルド機運が高まり、エルドアンは選挙戦を有利に展開しました。

 エルドアンはかつてギュレン派と手を結んでいました。ギュレン派は公正発展党同様、イスラム主義の政党です。しかし2016年のクーデター未遂事件を契機にギュレン派とは決別しています。

 このクーデター未遂事件はトルコ国民を不安に陥れました。エルドアンは国民の動揺をうまく活用し、国民投票を呼びかけ、かねてからトルコ政治に隠然たる影響力を行使してきた軍隊を封じ込めることに成功しました。

 今回の繰り上げ選挙は、その国民投票で得られたエルドアン政権にとって有利なルール改正を速やかに実行に移すために行われると考えることができます。